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No.354

八王子市決議の不可解


古沢 大輔

2012/2/14

 八王子市議会が、平成23年第4回定例会で「八王子駅南口に所在する日本貨物鉄道株式会社所有地に関する決議」を可決したという。これがどうも解せない。

 いきさつはこうだ。JRグループの日本貨物鉄道(株)が、JR八王子駅南口にある社有地の活用に乗り出し、2011年に事業提案型総合評価方式の入札をした。入札の結果、選ばれたのは介護老人保健施設や療養系の病院を運営する医療法人社団葵会だった。
 これに対し、数年前から同社にフィットネスクラブやシネコン(複合映画館)の入る若年層向けの商業施設開発を要請していた市議会は反発。中心市街地活性化の観点から「計画を見直し、南口周辺の活性化に資する商業施設などを可能な限り加えるよう強く求める」決議に至ったというわけだ。

 意外な感じがしたのは、市政が街づくりとして商工業を誘導することはあっても、いち民間企業を名指しして、そのビルの使い方に圧力をかける例は珍しいためだ。影響力の大きい巨大SCならともかく、駅前とはいえ、この用地は4000m²にも満たない。
 商業施設は、それ単独では成り立たない。街の賑わいがあってこそ、である。賑わいをつくるには、役所や学校、医療施設といった安定的な集客機能があり、定住人口と交流人口のバランスがとれていることが重要で、中でも医療施設、ことに病院は、少子高齢化が進む今後の日本で街づくりの中心的な役割を担うと予想される。全国を見れば、すでに病院を核にした街づくりも各所で見られる。商業はあくまで、こうした集客力ある街を飾る綺羅のようなものとも言える。

 日本貨物鉄道が誘致する葵会は、全国で4つの病院をはじめ、介護老人保健施設(19施設)、グループホーム(1施設)や、広島県には放射線治療の専門クリニック、高精度がん放射線治療センターなども持つ、経営力のある法人だ。仮に、安定した数の処方箋が期待できるとなれば、調剤薬局やドラッグストアが近くに出店する可能性は高まる。そうしてコスメや美容商品の売り場が広がれば、街の若やぎにも十分貢献できる。
 一口に商業施設といっても、「ハコを置けば魚が入る」時代ではない。全国の商業ビルがいかにテナント誘致とその維持に苦労しているかを、市議は把握しているのだろうか。映画館も、11年のスクリーン数は1993年以来、18年ぶりとなる減少に転じている。空室だらけのテナントビルほど、街を寒々とさせるものはない。

 八王子駅では、北口の老舗百貨店・そごうが1月31日に閉店したばかり。伝え聞くところによると、百貨店各社は口々に八王子市の「計画のないまちづくり」を批判したという。
 発展する立川駅を前に、市には焦りもあるだろう。ただ、行政が企業の頭を押さえるような真似をすれば、他社も二の足を踏み、商業は冷え込むばかりである。
 06年に閣議決定された中心市街地活性化の基本方針は、コンパクトシティの思想をもって都市機能の拡散をとどめ、子どもから高齢者まで暮らしやすい街をつくることに要諦がある。八王子市には、飾りを追うのではなく、まずその根本を今一度思い起こして欲しい。
八王子駅南口に病院を計画。奥は閉店した「そごう八王子店」
八王子駅南口に病院を計画。奥は閉店した「そごう八王子店」

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