電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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17年「パネル各社の収益は過去最高に」


~「第33回IHSディスプレイ産業フォーラム」開催(1)~

2017/6/2

シニアディレクターの謝勤益氏
シニアディレクターの謝勤益氏
 大手調査会社のIHSマークイットは、7月27~28日に国内最多の受講者数を誇るFPD市場総合セミナー「第33回 IHSディスプレイ産業フォーラム」を東京コンファレンスセンター・品川(東京都港区)にて開催する。本稿では、その注目の講演内容を登壇アナリストに6回にわたって聞く。第1回は「FPD市場総論」を担当するシニアディレクターの謝勤益(デビッド・シェー)氏に話を伺った。

 ―― 液晶パネル価格が高止まりしていますね。
 謝 価格の高止まりでテレビメーカーが購買に慎重になっているため、足元で価格に下落の圧力がかかっているが、大きくは下がらないとみている。当社では、2017年の面積ベースの需要増加率を7%とみているが、パネルメーカーの生産能力は2~3%しか増えないため、全体的にタイト感が継続すると予測している。パネル各社は過去最大の利益を上げる年になるだろう。

 ―― 旺盛な増産投資も継続しています。
 謝 中国を中心に第6世代(6G)の有機EL、液晶の10.5Gなど新設計画が目白押しで、2~3年は製造装置、材料メーカーの好調が続く。
 なかでも、17年はアップルiPhoneのフレキシブル有機EL搭載が注目を集めている。17年モデルはサムスンディスプレー(SDC)からの1社購買になるが、LGディスプレー(LGD)が18年モデルをターゲットに量産化を目指している。SDCは生産能力を現状から3倍近くに拡大する投資を進めており、LGDがこれにどこまで迫れるかがカギだ。

 ―― 中国企業も有機ELの量産に積極的です。
 謝 フレキシブルは韓国勢にまだ2~3年遅れているため、リジッドタイプの量産をローカルのスマートフォン(スマホ)メーカー向けに拡大する。当社の調べでは、中国企業のスマホ用リジッド有機ELの出荷台数は16年7~9月期に100万台を超え、直近では200万台を突破した。想定以上に量産化が早いため、有機ELがLTPSを搭載比率で追い抜くのは20年よりも前倒しで達成されるだろう。

 ―― 大型液晶テレビの拡大や有機ELテレビへの参入増加など、大型パネルも話題が豊富です。
 謝 有機ELテレビにはソニー、パナソニック、東芝が本格参入し、平均単価2500ドル以上のハイエンドテレビ市場を活性化している。なかでも米国や中国市場で強いソニーが75インチ液晶テレビを積極的にプロモーション中で、パネル各社も50インチ以上の生産比率アップに努めている。
 例えば、中国のBOEは32インチの生産を減らし、8.5Gで10面取りが可能な43インチにシフトした。歩留まりも高く、中国企業の技術力が着実に上がっていることを示している。

 ―― LGDはテレビ用有機ELでも大型投資を検討中ですね。
 謝 韓国・坡州の新工場「P10」への投資を具体化させる時期に来ているが、現時点では中国で10.5G液晶工場を整備する可能性が高い。10.5Gへの投資はLGDにとってもリスクが高いため、補助金を活用できる環境が理想的ではないか。一方、P10は65インチが4面取りできる10.5Gハーフで有機ELを量産する計画とみている。

 ―― フォックスコンとシャープには米国で投資計画が浮上しています。
 謝 まだ検討中だが、テレビ用の10.5G工場ではなく、IGZOやLTPSを量産する6G工場になるのではないか。VRや車載向けのハイエンドパネルの量産が視野にある。

 ―― 次世代ディスプレーとしてマイクロLEDが注目され始めました。
 謝 省エネ性能などの点からポテンシャルは高いが、どうやって量産しコストダウンできるかが課題だ。現状でスマートウオッチ、サイネージなどのパブリックディスプレー、フレキシブル化が実現しやすい車載などの用途に使えるとみているが、浸透率は緩やかだろう。生産能力やコストを液晶および有機ELと比較すると、スマホやテレビを置き換えるのはかなり難しいと考えている。

(聞き手・編集長 津村明宏)



「第33回 IHSディスプレイ産業フォーラム」の詳細情報はセミナー事務局(E-mail : technology.events@ihs.com、Tel.03-6262-1824)まで。
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