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No.646

岐路に立つ宝飾品店


岡田 光

2018/3/6

 自身の「光(ひかる)」という名前は気に入っているが、正直、キラキラと“光るもの”にはあまり興味がわかない。プライベートでは、夜景やイルミネーションは戸外の寒さから敬遠しがちだし、妻が街中の宝飾品店の前で足を止めても、私は横で「きれいだね~、かわいいね~」と繰り返すが上の空だ。しかし、仕事は別である。テーマパークでイルミネーションイベントが開かれると聞けば遠方でも出張するし、担当エリアで宝飾品店の新店が開業すると聞けば内覧会や記者会見に積極的に参加する。最近は前者よりも後者の仕事が増えており、強い関心を持って宝飾品店の動向を見守っているのだが、その宝飾品店が今、岐路に立っている。

 矢野経済研究所が実施した国内宝飾品市場の調査によると、2016年の国内宝飾品小売市場規模は、前年比2.9%減の9413億円となり、15年に続きマイナス成長となった。16年は中国における関税の取り締まり強化の影響で、インバウンド需要が沈静化したほか、為替が円高に振れたこともあり、宝飾品に割高感が出てしまった。とりわけ、百貨店での販売が振るわなかった。現に、ヨンドシーホールディングスやAs-meエステールは、16年度の売上高がいずれも前年度を下回った。矢野経済研究所は、17年の国内宝飾品小売市場規模を前年比微増の9475億円と予測しているが、先日発表されたヨンドシーホールディングスの第3四半期決算が減収減益と厳しい結果に終わっていることなどから、17年もマイナス成長になる可能性が高まっている。

百貨店内から移転した「ヴァンクリーフ&アーペル心斎橋店」
百貨店内から移転した
「ヴァンクリーフ&アーペル心斎橋店」
 なぜ、プラス成長に転じないのか。それは百貨店への依存が強いためだ。宝飾品店をチェーン展開する各社は、近年、ショッピングセンター内への出店や単独の路面店展開も行っているが、まだまだ百貨店内の店舗が売り上げの中心となっている。しかし、百貨店は都心の旗艦店が売り上げを伸ばす一方で、地方の店舗は苦戦が続く。こうした地方の店舗は、MDの見直しを進めており、底堅い需要がある“食”や、インバウンドに人気の“化粧品”を重視する傾向が強く、宝飾品の出番が少なくなっている。だからと言って、百貨店を卒業してSC内に出店しても、価格競争に巻き込まれ、閉店の憂き目に遭ってしまう。単独の路面店を展開しようとしても、外資系宝飾店に主要な立地は押さえられていて、ビルの5階や商店街の路地裏など、人があまり近寄らない場所に出店することになる。

 また、見過ごせないのは、ブライダル各社が出店攻勢を強めている点だ。ノバレーゼは香川県、岐阜県、岡山県に出店を決定。エスクリは、広島エリア初出店となる「ザ・プレミアムレジデンス ラグナヴェール広島」を開業した。アイ・ケイ・ケイも愛知県や大阪府に新施設をオープンするなど、ブライダル各社は新規出店を拡大している。各社はブライダル事業を展開する中で、宝飾品の内製化も進めており、これが宝飾品店の収益拡大を阻む要因にもなっている。

 同業他社との競争は厳しく、出店場所の選定に迷ううえ、ブライダル各社との差別化も図らなければならない。課題山積の宝飾品業界ではあるが、新たな立地の開拓や商品ラインアップの見直しにより、宝飾品のように一条の“光”が差すことを願う。
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