商業施設新聞
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No.707

都心の王、浜松町


高橋 直也

2019/5/28

 「都心」の話である。先日、電車の中でマンションの広告が目についた。「都心まで乗り換えなし△分!」という、よくある謳い文句だった。この手の広告を見るたびに確認してしまうのが「都心」とは、どこを指しているかだ。その広告では大手町のことだった。ある人は新宿こそが都心と言うかもしれない。渋谷だって都心である。しかし筆者にとって、東京・浜松町こそ都心である。

世界貿易センタービルディング(写真左)も建て替える
世界貿易センタービルディング
(写真左)も建て替える
 浜松町といえば羽田空港へと続くモノレールの発着駅だ。羽田空港からは京急電鉄で品川に出るという方法もあるが、大学受験のために上京したとき、故郷にはないモノレールとやらに乗ってみたい一心で、浜松町を訪れた。そして駅から大門方面に出て、東京タワーを見て東京に来たことを実感し、ふと左手にビルの先が見えないほどの高層ビル「世界貿易センタービルディング」を見つけて都会に来たと気分が高揚した。新宿の高層ビル群を初めて見たときも驚いたが、浜松町ほどの衝撃はなかった。筆者の中では浜松町こそが永遠の都心である。

 そんな地方出身者にとっての永遠の大都会、浜松町ではさらに開発が進んでいる。代表的な案件は東芝ビルディングの再開発にあたる「(仮称)芝浦一丁目計画」だ。延べ約55万m²という超大型案件であり、東京を代表する施設になりそうだ。世界貿易センタービルディングの建て替えを含む「浜松町二丁目4地区A街区」も進んでいる。同ビルは浜松町のシンボルであり、建て替えは少し悲しいが、延べ30万m²近い大型案件となる。また、四季劇場[春][秋]があった場所でJR東日本が「ウォーターズ竹芝」の開発を進めている。劇場のほか、商業施設、オフィス、ホテルを導入する。さらに「(仮称)竹芝地区開発計画」として、東急不動産などが2街区で構成する複合施設を整備している。

 開発が活況な浜松町だが、街づくりには課題が残されている。各事業の開発概要をみると、オフィスが相当増える。再開発ビルにおいてオフィスが増えるのはよくあることだが、浜松町の周辺の品川、虎ノ門などではオフィスを含む大型再開発が集積している。つまり、浜松町はこれらエリアとオフィスリーシングで競争することになるのだ。先日、浜松町の大型再開発に参画する企業の幹部と話す機会があった。周辺の再開発とオフィスリーシングでどう戦っていくか聞くと、いかに街のカラーをつくっていくかが大きなキーになるとのことだった。

 例えば渋谷ならIT系企業のように、オフィスが集積するエリアには何らかの業種が集まることがある。ただ、今の時点では「浜松町といえば△△」と思い浮かばない人が多いのではないか。以前、不動産関連のサービスをしている企業に聞いたのだが、銀座はオフィスビルが一定数存在するが、オフィスリーシングにおいては難しい面もあるという。というのも、銀座は商業地としては確固たる地位を築いているが、オフィスにおいては「IT系なら渋谷」のように、銀座を選ぶ動機が少ないからだという。浜松町も、街のカラーとなるオフィスがないままでは、オフィスリーシングが難しくなるのかもしれない。

 では浜松町のカラーとは何か。浜松町を地盤にする企業には東芝があり、劇団四季の劇場も整備している。また、竹芝地区開発計画にはソフトバンクが移転することになっている。立地的な特徴を探るなら、羽田空港へのアクセスが良いことは大きな特徴である。東芝やソフトバンクも該当するだろうが、国内外に支店がある企業にとって、空港が近いことはメリットになる。新幹線駅である品川駅も近い。環境で言えば「水」がある。浜松町はウォーターフロントであり、野村不動産グループは、芝浦一丁目計画の近接地に小型船ターミナルも整備する。水に面した立地は、街づくりにおける特徴・強みとなるはずだ。キーワードは多い気がする。

 まだまだ再開発は途中であり、街のカラー作りはこれから進んでいくのだろう。ただ、大型開発が進めば、街の景観はがらりと変わる。今後も東京に初めてやってきた人を圧倒する街であってほしい。
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