電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第364回

エッジデバイスの到来でセンサーに強い日本企業に追い風


~1ゼタバイト処理にデータセンターが1000カ所必要では話にならない

2019/12/20

 世の中には尊敬に値する人物は数多い。しかして、誰からも親しまれ、なおかつ鋭い分析をする人はそれほど多くない。要するに「まずもって、その人の悪口を聞いたことがない」という人で優れものであれば、それは賞賛に値する。

齋藤昇三氏はニッポン半導体の宝物かもしれない
齋藤昇三氏は
ニッポン半導体の宝物かもしれない
 筆者は40年に及ぶ半導体記者生活の中で、そうした人物をかなり知っている。物故者まで入れれば数十人はいるだろう。ただ現役であってナイスガイであり、かつ大きなことを成し遂げた人であり、そのうえでみんなに親しまれる人は、そんなにいない。

 そのうちの一人が齋藤昇三氏である。齋藤氏は東芝で副社長の重職を務め、同社の半導体事業を発展させた人物として知られている。とりわけすごかったのは、DRAMにこだわる人たちが多いなかにあって「東芝の将来はNANDフラッシュメモリーにあり」として、その橋頭堡を築いていった手腕である。この人なくして東芝のメモリー事業は残存できなかったと言ってよいだろう。

 齋藤氏は現在、日本電子デバイス産業協会の代表理事・会長を務める一方、㈱デバイス・システムプラットフォーム開発センターの代表取締役会長の任にもある。彼が最近になってひたすら強調するのが、エッジデバイス時代の到来と、これからの展開をよく読まなければ先が見えないということだ。

 「1ゼタバイト処理するのに、データセンターは1000カ所もいる。将来には生成データが現在の9ゼタバイト程度から一気に拡大する。さらには2025年以降には163ゼタバイトまで膨れ上がるという。こんなことになったら、データセンターはいくらあっても足りない」

 このように強調する齋藤氏は、これまでのような集中制御のコンピューティングではもはや限界であり、自律分散制御が必要になってくるという。つまり、クラウドで処理するものとエッジデバイスで処理するものを分けるべきであるというのだ。

 エッジデバイスとは何か。センサーデバイス、通信デバイス、コントローラー、メモリー、AIチップ、発電デバイス、電源コントロール、アクチュエーターなどを兼ね備えたものであり、ネットのクラウドにつながることがなく、自律的にフィジカル空間でコンピューティングを処理していくのだ。現場に近い処理で、より高度でリアルタイムなサービス・価値を創造していく。まさにIoT時代における主役と言っても良い存在なのである。

 「エッジデバイスを実現するには、何といっても革新的センサー技術を開発する必要がある。世の中に存在する物理現象を検出するセンサーと、人間の五感に対応する革新的センサーが必要なのだ。現状より数桁以上高感度であり、非接触化しなくてはならない。磁界センサー、匂いセンサーなどはなかなか難しい世界であるが、これも克服しなければならない」(齋藤氏)

 よく言われているとおり、センサーマーケットは現状において日本企業が50%以上の世界シェアを占有している。人間の眼にあたるセンサーであるCMOSイメージセンサーでは、ソニーがぶっちぎり圧勝していることはつとに知られるようになった。ソニーはこの画像センサーの急伸のおかげで、2019年第3四半期の世界半導体売上高ランキングにおいて、今回初めて9位にランクされるという偉業を成し遂げた。

 「外食産業やお弁当屋さんの世界でロボットを活用しようと思ってもなかなかできない。弁当の様々なおかずをロボットはつかめない。同じ種類の部品などであればつかめる。人間のような5本指のセンシングやコントロールはまだロボットにはできないのだ。これを何としても実現するためには、やはり画期的なセンサーを開発しなければならないが、五感に優れる日本人は必ずやり遂げるだろう。すなわち、エッジデバイスで日本企業の出番がきたともいえるだろう」(斎藤氏)

 300社に近い日本の電子デバイス関連企業を束ねる日本電子デバイス産業協会のリーダーとして活躍する齋藤会長の激は、どれだけ多くの人を慰めていることだろう。しかして、齋藤会長も決して朴念仁ではない。お美しい方々がいれば、きちんと対応しておられる。京都では舞妓さんに囲まれる日々も続く。

 お忙しい毎日であるので、たまには息抜きも必要なのではないかと、ふと思っているこの頃である。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』、(以上、東洋経済新報社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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