電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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半導体市場予測を上方修正


~DC市場の変化が搭載金額押し上げ~

2020/7/17

 当社はこのほど、2020年の半導体世界市場予測をアップデートし、成長率見通しを当初の2.5%増から4.9%増へ上方修正した。テレワークの普及や堅調なPCの販売などでデータセンター(DC)への投資が伸び、DRAM、NANDを中心としたメモリーの需要が当初の見通しを上回る。

 また、アップルが年内に5G対応の新型iPhoneを発売する見通しであるほか、中国の安価な5Gスマートフォン(スマホ)の投入加速などで、スマホ市場も当初見通しを上回りそうだ。

 加えて、新型コロナウイルスの第2波到来や、それに伴うサプライチェーンの分断に備えるため、エレクトロニクスメーカー各社が在庫を従来よりも積み増す傾向にあることもデバイス需要を押し上げている。

 コロナの今後の動向に左右される側面はあるし、その影響で21年上期に反動減に陥る懸念はあるものの、20年いっぱいは半導体への旺盛な需要が継続するとみている。

 なかでも、DC向けの需要の伸びが最大の牽引役になる。企業活動の停滞でエンタープライズ向けの需要はネガティブだが、クラウドサービスプロバイダーの投資意欲は旺盛で、マイナス要素をカバーして余りある。従来はダウンロード中心の片方向通信だったが、ストリーミングの増加で双方向通信の環境を整備する必要性が高まっており、クラウドサーバーだけでなく、リジョナル向けやエッジ用のキャッシュサーバーを増設せねばならなくなっているためだ。ローカル5Gの敷設増加もエッジサーバー需要を後押しする材料となっている。

 当社の最新の調査結果によると、DC市場におけるサーバー出荷は19年下期から前年同期比でプラス成長を維持している。19年7~9月期は前年同期比4%増だったが、19年10~12月期は同27%増に跳ね上がり、20年1~3月期は同31%増、20年4~6月期は同16%増となった。投資を前がかりに実施してきたことで、増加ペースは20年下期に少し落ち着くとみているが、それでも当初の見通しを上回る。

 これに伴い、サーバー市場の成長予測も上方修正した。当初は18~24年の出荷台数の年平均成長率(CAGR)を8%とみていたが、これを9%に引き上げた。20年のサーバー売上規模は当初743億ドルと想定していたが、785億ドルに修正した。

 20年のサーバー市場を785億ドルに上方修正した背景には、高性能化がある。具体的には、従来の2CPU構成から4CPU構成への切り替えが進み、半導体の搭載金額が増えそうなのだ。たとえば、フェイスブックが発表した最新プラットフォーム「Yosemite V3」がこれに該当するが、Yosemite V3にはインテルのXeonスケーラブルプロセッサー(Cooper Lake)が新たに採用され、アーキテクチャーが変わってきているのだ。

 サーバー市場では近年、HPやデルといった大手メーカーに加えて、GAFAやBATといったクラウドサービスプロバイダーが自前で製造する「ホワイトボックス」のシェアが高まっている。当社の調べでは、サーバー市場におけるホワイトボックスのシェアは19年1~3月期の19%に対し、20年1~3月期には26%に上昇した。

 この流れと相まって、アマゾンらがCPUを自社設計するケースも増加しており、「脱インテル」の動きも徐々に強まっている。クラウドサービスプロバイダーが自前でCPUを設計する場合に活用するのはArmであり、これによってArmベースプロセッサーのシェアが今後高まっていくと考えている。

 そして、今後注目すべきは、ホワイトボックス化の流れがSSDにも波及しそうな点だ。アマゾン、マイクロソフト、アリババの3社は、NANDとコントローラーICを購入し、これに独自のファームウエアを付加したSSDを自前で製造し始めている。アリババはコントローラーICも独自で設計しているようだ。

 DC用のNANDは現在のところ「スピードに優れるサムスン」、または「3D-Xpointメモリーを擁して書き換え回数に優れるインテル」が他を大きくリードしているが、SSDでもホワイトボックス化の動きが定着するようだと、NANDメーカーのシェア構造にも今後変化を及ぼす可能性がある。
(本稿は、杉山和弘氏へのインタビューをもとに編集長 津村明宏が構成した)



Omdia 杉山和弘、お問い合わせは(E-Mail: KAZUHIRO.SUGIYAMA@omdia.com)まで。
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