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第1回

北九州市経済産業局、企業誘致は5年で200件実績、「環境・経済両立の世界4大都市」に選出


2012/7/2

 北九州市は西日本エリアで屈指の工業都市として知られている。かつては八幡製鐵で鉄の時代を担い、石炭産業で一世を風靡したこともある。工業出荷高は2兆3000億円もあり、人口は97万人を誇る。
  その北九州市が、ここにきて企業誘致活動に力を入れている。なんといっても売りになるのは、門司港という大型港湾を持ち、釜山、上海などアジアと直結する工業出荷ルートを確立していることにある。また、よく知られているように、国内随一ともいわれる環境都市形成に向けて努力を続けており、このグリーンのイメージが国内外に浸透し始めていることだ。同市にあって産業経済局長の要職にある石松秀喜氏は、環境都市・北九州をコアに企業誘致を前進させたいとして次のようにコメントする。
北九州市産業経済局長 石松秀喜氏
北九州市産業経済局長 石松秀喜氏
  「北九州市民のエコ意識、リサイクルの認識は非常に強い。OECDが環境と経済が両立している世界4大都市を認定しているが、パリ、シカゴ、ストックホルムと並び、北九州が選ばれた。実に名誉なことであると考えている。水ビジネスにおいてはカンボジアとの契約にこぎ着け、道筋が見えてきた。また、エコタウンのビジネスモデルを学習するべく、毎年多大な人が北九州市を訪れてきている。重要なことはこれを企業誘致に直結させることだと考えている」。
  ところで、北九州市の有効求人倍率は現状で0.85であり、全国平均の0.7を大きく上回っている。鉄に代表される伝統的な素材産業に加え自動車、機械、エレクトロニクス、化学など産業の裾野が広いことが足腰を強くしているのだ。かつては、八幡製鐵、つまりは現在の新日本製鐵の景気に大きく左右された街であったが、現在は1業種に左右されず不況に強い体質を兼ね備えている。
  「安川電機などを中心に医療介護ロボットなどの新産業も育ってきつつある。また、自動車産業においては、トヨタ自動車、ブリヂストン、東邦チタニウムなど多くの企業立地が進んできており、今後も自動車関連の誘致に力を入れていく」(石松局長)。
 
廉屋則夫理事
廉屋則夫理事

同市の企業誘致活動に長く関わってきた廉屋則夫理事は、自動車産業の集積をベースとしたパワーエレクトロニス技術こそ今後の北九州発展の一要因になるとして次のようにコメントする。
    「北部九州の自動車産業の集積は驚異的な勢いで進んでいる。現状でトヨタ、日産、ダイハツなど150万台の生産能力を備えており、山口エリアのマツダまで入れれば200万台にも達する。九州北部は愛知に次ぐ次世代自動車の拠点になる可能性が強いのだ。それゆえに、次世代自動車の核技術となるパワーエレクトロニクスセンターを、北九州学術研究都市などに形成していきたい。また、東芝出身の九州工業大学大村教授のパワーデバイス研究は世界的に注目を集めている。企業進出では、先ごろ自動車の高効率スイッチング電源を扱うTDKラムダが九州R&Dセンターを開設した。CO2削減の方法はいくつもあるが、次世代パワー半導体、次世代電源などのパワーエレクトロニクスこそ重要と考えており、この方面の企業誘致にも注力していく」。
  さて、同市産業経済局は東日本大震災以後の企業誘致戦略として支援デスクを設置し、北九州への受け入れを進めている。特に自動車関連の引き合いが強く、数十件の問い合わせが来ている。なにしろ、天下の八幡製鐵は110年間にわたり、地震で止まったことが1回もないのだ。安全・安心というキーワードも最近の企業誘致では重要な要素を占めている。

企業立地支援・農林水産担当理事 西田幸生氏
企業立地支援・農林水産担当理事
西田幸生氏
  企業立地支援・農林水産担当理事の西田幸生氏は、11年12月に北九州市がグリーンアジア国際戦略総合特区に選ばれたことを踏まえ、次のようにコメントする。
  「地政学的に見ても、東京からも中国上海からも約1000kmに位置し、成長するアジアに近い地理的有利さを持つ北九州は、ここに来て注目を集めている。地震、津波などの災害リスクは低く、地震はここ100年間で震度5以上の観測がたった1回だけだ。さらに、環境都市としてのグリーンなイメージが有利に働くと思う」。
  北九州市における過去5年間の企業誘致実績は誘致件数で200件、新規雇用4126人、投資額4476億円という成果を生んできた。モノづくりの街北九州は、即戦力人材の安定的確保という点でも強い。福岡県エリアは、国立理工系大学入学定員数が2224人で全国第2位であり、高等専門学校学生数が3436人で全国第3位、工業科高校生卒業者数は4018人で全国第4位となっている。こうした条件に恵まれたエリアはなかなかないと言っていいだろう。
「工業都市として知られる北九州は、実のところ映画王国でもあるのだ。昭和の懐かしい風景から、近未来的空間まで、北九州の街角はまさに映画の名シーンがいっぱいだ。『ALWAYS 続・三丁目の夕日』『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』『交渉人 THE MOVIE タイムリミット高度10000mの頭脳戦』などの映画は、すべて北九州ロケを使っている。そして、8月には北九州市出身のビッグスター、高倉健主演の『あなたへ』が公開されるのだ。最近では“画になる街、北九州に企業進出してください”と、各企業に呼びかけている」(西田理事)という。
(編集長 泉谷 渉)

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