医療産業情報
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(株)メディシンク 代表取締役社長 八村大輔氏(上)


「生活提案を優先して製品デザインを」

2013/7/9

八村大輔氏
八村大輔氏
 医療産業情報と(株)産業タイムズ社の半導体産業新聞では、東京ビッグサイトで6月5~7日に開催されたJPCAショー2013において、特別展示とセミナーで構成する「次世代アプリ開発支援技術展~『夢をカタチに』」を開催、初日のテーマ「医療/ヘルスケア」に沿って、(株)メディシンク 代表取締役社長の八村大輔氏が2講演を行った。その講演の様子を2回にわたり紹介する。今回は、最初の講演「現場とユーザー視点からのヘルスケア・デザイン~製造分野におけるデザインの重要性とは~」について。
 八村氏は、TBSテレビ・ショッピングサイト編集長、エスクァイアマガジン経営企画室長という経歴、ライフスタイル提案の業務を通して培った消費者目線の発想と、十数年前に手がけた骨粗しょう症の診断装置の拡販や、柏の葉スマートシティでのヘルスケアプロジェクトを通じた医療や健康増進に関する知識と経験をベースに、映像やグラフなど多彩なプレゼン資料を活用して講演を進めた。
 骨粗しょう症だけに限定しても、それによる骨折から寝たきり化、他の疾病の誘発と医療費は膨らむことにつながるが、高齢化率の上昇、後期高齢者の増加による疾病率の上昇、予備軍が増加することで、現在の国民医療費は37兆円、2050年には50兆円と予想されることから、逆に医療、福祉、予防医療と健康増進の市場は有望であり、その市場向け製品の開発における「デザイン」の重要性、優位性を説明した。
 八村氏は「医療はあまり考えたくない世界であるが、私が進めていることは、どうやったらみんなが毎日そういうことを考えるようにできるか、『出来るだけ優しくて、面白くて楽しいという物事に変えるような』アウトプットというのを考える時、それは半導体技術だけでは解決できない。半導体技術、基板の設計を含めてどういったサービスとしてアウトプットしていくかという設計が非常に重要になる」と力説。
 「そういう訳で、出口から考えていきたい。どういう場面で、誰が、どういう風に、皆さんの技術の利便性を享受できるのかを想定して開発を進めるというふうに、今までの開発思想を変えていただきたい。生活者視点、ライフスタイル価値、生活提案というのを優先すべきである。要約すると『現場価値向上、デザイン思考で課題を発掘して、いろいろな力や道具を活用しながら、プロデュース(総合する)感覚で、デザイン思考でまとめる』ことが重要」と続けた。
 アル・ゴア米国副大統領の首席スピーチライターを務めた作家、ダニエル・ピンクの著書「ハイ・コンセプト」(大前研一訳書)を引用し、今後の時代を作る6つのセンス((1)機能だけでなくデザイン(2)議論よりも物語(3)個別よりも全体感、シンフォニー(4)理論でなく共感(5)遊び心(6)モノよりも生きがい)に沿って、「いかに、デザイン思考にまとめるか。『デザイン』とは、人とモノのインターフェースにおいて、多くの言葉ではなく、『伝わりやすく』『分かり易く』『心地良くさせるもの』である。従来の『意匠計画』、『美的造形』といった狭義の意味から、『あるコンセプトや想いを具現化するための計画・設計行動とそのディレクション(監督すること)』と再定義」し、発想することを提案した。
 05年のiPod、10年のiPhone4に占めるアップル社のデザイン料、マーケティング料の比重の高さを引き合いに、「技術だけではついてこない時代になっており、ユーザー体験をどういう風に提供するかという時代」になっていることを紹介。
 八村氏は、独・ブラウン社が毎年行うデザイン賞の応募数はメディカルデバイスが1位を占め、その国別応募者は中国125人、台湾72人、韓国65人で、日本は3人、というデータを引き合いに、「もう医療機器の世界では遅れている」と指摘。世界に誇る超高齢社会の国なのに、何故、デザイン応募が少ないのかと疑問を投げかけ、「これまで、薬事法の存在やコンプライアンスなどで、経営側が医療分野への進出に躊躇したことが背景にある」と分析した。
 そのうえで、「確かに、医療市場は言葉、常識感、価値観、経済観、優先度が異なり、また、多分野にまたがる難しい世界でもある。しかし、そこをデザイン、プロモーション、マーケティングの発想でもって埋めていっていただけたら、良い仕事につなげていけるのではないか」と提案した。
 5~6年前に著された「ハイ・コンセプト」で、すでに、経営修士号MBAの取得者の比率は減り、代わってUCLAの美術大学院の入試倍率は30倍、カーネギーメロン大はエンターテイメント・テクノロジーの修士コースを設けていると、先行するアメリカの実情を紹介。先ほどの6つのキーワードを役立てながら、達成するための3つのポイント((1)思いついたら諦めない(2)規制・制約を取り払い、自由な発想(3)現場での徹底的にチェックして、実現を目指して進めること)を挙げた。
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