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(株)メディシンク 代表取締役社長 八村大輔氏(下)


「『予防社会』へ新事業立ち上げ準備」

2013/7/16

八村大輔氏
八村大輔氏
 (株)産業タイムズ社の医療産業情報と半導体産業新聞では、東京ビッグサイトで6月5~7日に開催された「JPCAショー2013」において、特別展示とセミナーで構成する「次世代アプリ開発支援技術展~『夢をカタチに』」を開催。初日のテーマ「医療/ヘルスケア」に沿って、(株)メディシンク 代表取締役社長の八村大輔氏が2講演を行った。今回は、2講演目の「柏の葉スマートシティで進む『ヘルスケア・ライフスタイル』~総務省ICT街づくり推進事業における“健康の見える化”」について取り上げる。
 八村氏は、「生体データをネットにつなげて管理できれば、楽しさが加わり、また、自発性が生まれ、『メディカル』と『エンターテイメント』を合成した『Meditainment(メディテイメント)』とも呼べる世界が広がる。この考え方により、超高齢社会において、テクノロジーやメディアをはじめ、あらゆる社会装置が支えるという仕組みが構築できると、技術だけじゃなくて、日本はもう1回、世界に役立てる国になれるのでは」と期待する。
 日本の1365の健保組合は9割が赤字で、その額は5000億円。団塊世代が65歳を超えはじめ、70~80歳の高齢者は半分以上が疾病にかかる。糖尿病患者は200万~250万人、強い疑いのある人を入れると1200万人、予備軍を加えると2200万人ともいわれる。日本の医療費は37兆円を超え、遠からず50兆円と予測される。
 この状況を変えるには、「治す」から「予防する」、半導体技術、ICTを用いての「予防社会」への変革が必要で、これには人々の行動を変える「行動変容」をどう喚起し、アプローチしていくかが課題となる。健康水準や寿命の3大決定要因は、(1)遺伝的要素、(2)環境的要素、(3)習慣的要素で、このうち(3)は人為的に変えられることが可能であり、ここに商品、サービスを提供していけるかが焦点。病院や医療のことは、一般に「あまり考えたくない」が避けられない事態であり、また、市場が大きい。世界初の日本の超高齢社会を、「医療」領域に限定せず、プラス要因と考える。
 「病気や年齢が進むと、例えば車の運転から離れ、ユーザーでなくなる。逆に皆さんの技術でこれをどう支えてゆくか。ユーザーでいてもらえるように、健康をサポートする企業でないと、お客は自ずと減る」と解説。
 八村氏を中心に活動するLMDP(ライフ&メディカル・デザイン・プラットフォーム)は、医療者、技術者、デザイナーといった異業種が交流し、健康・医療・福祉をよりよくする取り組みであるが、この手法を柏の葉スマートシティで取り組む「健康見える化」に活用した。
 八村氏は、「『日常的な健康増進、疾病予防をICTで実現する』ことには総論賛成だが、実際にどうやって気付いていただけるようにするか。『自分の病気のこと』を考えたくないと思って生活している人に対し、技術、メディア、コミュニケーションを使い、自然に馴染む生活スタイルに変える実証事業としてテスト」した。
 活動量計、体組成計、コンティニュア・ヘルス・アライアンスに準じたゲートウェイサーバーを通じてオムロンの血圧計などからのデータ、リストバンドからも情報を送り、蓄積し、それをPCやスマホへ送る。データが蓄積されることで消費カロリーと体重の相関や、自分の行動/生活習慣の把握が一目瞭然となる。「技術的にはすぐできるものだが、これを実現するために、生活提案とそのやる気をどう惹起するか、完成領域に皆さんの技術をどう役立てるか。スマホへの対応や、ランキング表示などのゲーム性、コミュニティ性/SMSの仕掛けも必要となる」と示唆した。
 同プロジェクトには、メディシンク、三井不動産、ヒューレットパッカード、活動量計の日立システムズなど9社が参画。テスト参加者からは、40日間の実証実験で睡眠改善などの声が聞かれ、「あなたは健康づくりができたか」の質問に「できた」「まあまあ」で計70%の回答を得るなど、大きな成果を上げた。
 八村氏は「名前は出せないが、フィットネスクラブなど様々なサービス企業と提携して、新たな事業の協議に入っている。来年以降、おそらく新会社を作ることになろうが、事業をスタートさせる。この取り組みに興味を持たれ、何か一緒にできるんじゃないかと思われ、声かけしていただけたら、望外な幸せです」と講演を締めくくった。

【メディシンク】
〒108-0074 東京都港区高輪3-13-3 シナガワグース4F、Tel.03-6459-3960
http://www.medithink.co.jp/
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