商業施設新聞
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No.842

金融の街が劇的な変化


若山智令

2022/2/1

 日本国内では様々な場所で、その土地に応じた街づくりが行われている。なかには既存の街に新たな機能を導入することで大きく生まれ変わるケースもあり、その一つに、金融・証券の街として知られ、2021年の大河ドラマや、新紙幣の1万円札で知られる渋沢栄一の邸宅跡(日証館)がある日本橋兜町が挙げられる。お堅いイメージのあるこの街が今、面白い発展を遂げている。

 日本橋兜町は東京都中央区にあり、茅場町駅や日本橋駅から徒歩圏内に位置する。東京証券取引所を中心に多数の証券会社が集積している、日本を代表する金融街だ。建物も重厚な造りをしたものが多く、物々しい雰囲気さえ感じるほどである。

 この街が今、再開発によって大きく変わろうとしている。これを手がけるのは「兜町の大家」とも呼ばれる平和不動産。同社は日本橋兜町・茅場町再活性化プロジェクトを掲げ、同エリアを国際金融都市・東京の一翼を担う場所にしようと、様々な取り組みを行っている。2021年8月には茅場町駅直結の大規模複合ビル「KABUTO ONE」が竣工するなど、着実に事業は進んでいる。

21年11月にオープンした「teal」
21年11月にオープンした「teal」
 だが、ここで取り上げたいのはこうした大型ビルではなく、飲食店を中心に、特色を持った個店の集積が行われていることだ。こうした店のオープンは20年前半から始まった。20年2月に飲食・ホテルの複合施設「K5」が東京証券取引所の裏通りに開業し先陣を切った。同施設は築約100年の重厚な歴史的建物を改修したもので、カフェやレストラン、ビアホール・バーなどの飲食に加え、宿泊機能も導入した。前述したとおり、施設自体は重厚で歴史を感じる佇まいながら、施設内は現代的な非日常空間が特徴的であり、そのギャップも興味深い点だ。また、このK5の周辺にはスイーツ店の「パティスリーイーズ」、ビストロの「Neki」、ナチュラルワインなどを提供する「Human Nature」、カフェの「SR」、スウェーデン・ストックホルムのクラフトビールが楽しめる「Omnipollos Tokyo」など魅力的な店が続々と出店。金融街に新しい風を吹き込み、これまで兜町ではあまり見られなかった層の人たちの取り込みにも成功している。


 そして21年もこの勢いは止まらず、21年11月にはパティスリーイーズの大山恵介氏と、元パスカル・ル・ガックの眞砂翔平氏がタッグを組み、日証館の一部をリノベーションしてチョコレート&アイスクリームショップの「teal」を開業。さらなる街の回遊性向上に寄与している。加えて、21年12月にはKABUTO ONEの1階に、オールデイ・ダイニングの「KABEAT」、コミュニティカフェの「KNAG」、モダンスリランカレストランの「HOPPERS」の3店がオープン。新進気鋭のオーナーなどが指揮を執り、面白い店をつくることで兜町を盛り上げていく。

 新しい機能を集め、充実させることで賑わいの創出や人々の交流などで特徴ある街づくりを進めている日本橋兜町。既存の街並みや風景を活かしながら最先端のショップを展開する同エリアの今後に注目したい。
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