商業施設新聞
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No.879

てきと~な鉄道展、麺匠のうどんを楽しむ秋


笹倉聖一

2022/10/25

 政府による国内観光の促進策「全国旅行支援」や、出入国管理での水際対策緩和によって、訪日外国人を含めた国内旅行が活性化し、秋商戦が一気に盛り上がりそうな気配だ。旅行に加えて、エンターテインメント産業や外食企業も、消費刺激や買い物促進に余念がなく、コロナ禍での産業界の継続した努力には頭が下がる。秋商戦に向かう「てきと~な鉄道展」と、「麺匠によるうどんづくり」を取材した。

てきと~な鉄道展のメチャコミ・スクエア駅
てきと~な鉄道展のメチャコミ・スクエア駅
 「てきと~な鉄道展」製作委員会は、横浜市にある複合型体験エンターテイメント施設「アソビル」2階の「YOKOHAMA COAST」で、“てきと~”なテーマパーク「てきと~な鉄道展」を、11月27日まで開催している。「うんこミュージアム」(累計約80万人来場の人気ミュージアム)の誕生を手がけたチーム((株)たのしいミュージアム)が企画プロデュースしたもので、駅さながらのデザインが施された券売機でチケットを受け取って改札を通り入場すると、約1000m²の敷地内に、“てきと~”を楽しめるように創られたコンテンツが詰め込まれている。来場者は、全長42.5mの「てきと~線」というぐにゃぐにゃの車両から、「てきと~中央駅」「エキベン・タウン駅」「メチャコミ・スクエア駅」「てつど~ぶつパーク駅」、そして「ゲーム・ステーション駅」という主に5つの「てきと~」で楽しい駅(エリア)を各々下車しながら、体験型テーマパークを楽しめる内容になっている。9月22日からは、「てきと~な京急線」が乗り入れている。

 同展示会のスタッフに「家族連れの親は、子供に“てきとー”な社会観を植え付けるのをためらうのではないか」と疑問をぶつけてみると、「大人よりも、子供が強いられる緊張感がコロナ禍では強かった。そのため、今回の企画により、子供の緊張感をほぐしてあげたい意図があった」と、てきと~ではなく、まじめに答えてくれた。広辞苑によると、「『適当』とは、ほどよく当てはまること、その場に合わせて要領よくやること、いい加減なこと」と解説している。まじめであることはもちろん大事だが、適度な“てきと~”さも肝要だということなのだろう。コロナ禍で緊張を強いられてきた大人たちも、「てきと~な鉄道展」を適当に楽しむのは良いことではないかと感じた。入場料金は、大人当日券が2300円。

 「てきと~な鉄道展」製作委員会 実行委員長の佐藤永武氏は「この半年間ひたすらに『適当/てきと~』という言葉に向き合い、この言葉の面白さ、奥深さに魅了されている。『てきと~な人』と聞くと、いい加減な側面もありながら、なんとなく楽しい人、幸せそうな人を想起する人もいらっしゃるのではないかなと思う。かくいう私も『あなたは、てきと~だね』と良くも悪くも言われることがある。自分にとってのほどよい『てきと~』を探すことはひょっとするとその人にとっての幸せを探す1つの道なのかもしれない。『てきと~な鉄道展』を通じて、あなたにとっての『適当なてきと~』を是非探しにきてほしい」と示唆に富んだコメントをしている。

 一方、(株)丸亀製麺(東京都渋谷区)は、讃岐うどん専門店「丸亀製麺」で、同社唯一の麺匠(めんしょう:麺職人へ技術と想いを伝承する人の称号)と、麺づくりを極めた麺職人たちが打つ、手づくり・できたてのうどんを味わえるイベントを11月中に開催する。丸亀製麺の客がTwitterで推薦・応募して開催店を決め(10月下旬に発表予定)、最大全国10カ所で開催する。イベントで提供する商品は、丸亀製麺唯一の麺匠・藤本智美氏と、厳しい試験に合格し麺に関する深い知識や技術を持つ麺職人がともにつくる打ち立てのうどんだ。同イベントの記者発表会では、麺匠の藤本智美氏によるうどん作り(打つ、切る、茹でる)から、うどん通の食べ方までが指南され、手づくり・できたてのうどんを味わった。筆者は、本連載コラムの読者から、「丸亀製麺のうどんは、『香川県民が認識する讃岐うどんの定義に合致していない』との議論が香川県民の間で起きている。そのため、同社のうどんを讃岐うどんと呼ぶのは適切ではない」との指摘を頂戴したことがある。

 この読者からの指摘について、麺匠の藤本智美氏に発表会の席で失礼ながらも尋ねてみたところ、「確かに当社のうどんそのものは香川県産ではないが、同県丸亀市さんとは地域活性化包括協定を結んでいる。地域の方々の気持ちに寄り添って産業、観光、芸術文化、離島振興などの活動に取り組み、より一層の地域活性化に挑戦することで協定している。その中で日本中に『讃岐うどん』の文化を広めたい気持ちは共通している」と真摯に返答してくれた。2022年4月に両者が協定を結んだ際に、丸亀市の松永恭二市長も「市民はうどんへの思いがあるので、色々な意見があるが、丸亀という名前を全国に広げていただき(丸亀製麺に)感謝していると思う」と話している。讃岐うどんの定義や、原則論も大事だが、おいしい日本食として「讃岐うどん」が日本に加えて、世界に広まることにも意義があると感じる。

 政府による「全国旅行支援」策や、出入国の水際対策緩和で、国内旅行は一気に活性化しそうだ。気候が良く旅行や買い物を楽しみやすいこの秋に、各企業ともコロナ禍で逸した事業機会を取り戻し、消費者、買い物客とともに“Withコロナ”下でのWin-Winの関係を築いてほしいものだ。訪日外国人観光客にも、讃岐うどん店、てきと~な鉄道展を楽しんでもらいたい。ただし、新型感染症の第8波への備えを怠ってはいけないことは言うまでもない。
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