電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第522回

ソニーはイメージセンサーの投資拡大、ジャパンセミコンも増強気運


「NEDIA Day九州おおいた」で気勢を上げた人たちがいっぱいいる!

2023/3/10

 「ソニーは生産を含めた拠点を九州にいっぱい持っている。一番最初の工場は1973年に設立された鹿児島TECである。その後、長崎TEC、熊本TEC、大分TEC、国東サテライト、福岡事業所、博多オフィスなど多岐にわたって展開してきた。まさに九州シリコンアイランドの形成に一役買ってきたのだ」

「NEDIA Day九州おおいた」で講演するソニーセミコンの石谷盛治氏
「NEDIA Day九州おおいた」で講演する
ソニーセミコンの石谷盛治氏
 はっきりとした口調でこう語ったのは、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング㈱製造センター長であり、大分テクノロジーセンターTEC長の任にもある石谷盛治氏である。これは2023年2月24日に開催された「NEDIA Day九州おおいた」における講演の中の談話である。100人を超える人たちが大分に結集し、その後の交流会においても気勢を上げており、九州人のテンションの上がり方はすごかったのである。

 石谷氏によれば、イメージセンサーの市場は、2030年まで年率9%以上で伸び続けるとしており、ソニーは2022年3月にイメージセンサーの生産累計165億本を達成したというのだ。ここ数年で言えば、年間20億個くらいは生産していることになる。また、金額シェアで言えば世界の50%くらいを占有しており、まさにソニーはこの領域でトップを爆走していると言えるだろう。

 「今後のCMOSセンサーは、チップサイズが倍になってくる。最近では、2層トランジスタ画素CMOSイメージセンサーを実現しており、2回貼り合わせのウルトラ技術で、圧倒的なダイナミックレンジを実現している」(石谷氏)

 ソニーの半導体生産部隊であるソニーセミコンダクタマニュファクチャリング㈱の国内人員は、1万8700人となっている。悩みの種は、ここに来てなかなか九州では人が採れないことであるという。

 それでもCMOSイメージセンサーの設備投資計画は拡大の一途だ。2018~2020年までは5800億円を投入。2021~2023年までは9000億円を投入していく計画だ。その先については、もっと拡大することは間違いないだろう。すなわち、メタバース革命に貢献するデバイスであるだけに、スマホ需要が鈍化しても将来は明るいのである。

 「ジャパンセミコンダクターは、大分、岩手に事業所を持っており、70%は東芝向けの半導体を作っている。しかし最近では、シリコンファンドリーに注力している。大分ではアナログ・ディスクリートが90%を占めており、一部はマイコンの前工程もある。今後も必要な増強は続けていく」

 同じくこのカンファレンスに参加した㈱ジャパンセミコンダクター取締役社長の川越洋規氏の談話である。ジャパンセミコンによれば、ノンメモリー半導体市場規模はCAGR4.4%(22~26年)と安定成長が予測され、車載・産業市場に絞ればこの同じ期間でCAGR9.7%と市場を牽引する存在となっている。すでに半導体市場は、家電から車載・産業に比率がシフトし始めているのだ。

 「大分事業所においては、2021年におけるウエハー投入量に対し、2027年には2.5~3倍に膨れ上がると見ている。2024年には8インチラインによるアナログ・パワーの製造を開始すべく準備中である。とにかく積極的にいく」(川越氏)

 「東京エレクトロンは、さらなる高集積化への技術イノベーションに全力を挙げて取り組んでいる。しかし一方で、2030年に向けた中期環境目標として、CO2排出量の削減目標を新たに決めた。ウエハー1枚あたりのCO2については、2018年比で30%削減する。各事業所全体の総排出量についても2018年比で実に70%削減を掲げている。これからの時代は、環境マネジメントのリーディングカンパニーとして立たなければならない」

 同じく「NEDIA Day九州おおいた」に参加した東京エレクトロン九州㈱執行役員の吉原孝介氏の言葉である。吉原氏以外の方も、皆口々に、SDGs革命は人類のミッションであり、これに取り組まない企業は取り残される、という発言が多かったように思う。

 ジャパンセミコンダクターの前身は、東芝大分工場である。これはニッポン半導体全盛期の頃には、世界一のDRAM工場として、国内外に知られていたのだ。そしてこの東芝大分につながる企業は、今も数多く頑張っている。大分県LSIクラスター形成推進協議会が作られ、この会員企業は皆、アクティブな投資を断行している。大分における半導体産業が今後も発展することを祈念してこの筆を置こうではないか。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 代表取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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