商業施設新聞
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No.914

新境地を見せるか京阪


岡田光

2023/7/18

 行きつけの美容院で20歳離れた店長と話すのが面白い。プロ野球、寺社仏閣めぐり、子ども(店長は孫)へのプレゼントなどテーマは多岐にわたるが、私とは異なる視点で物事を見るのが面白い。店長は私が通勤で京阪電車を利用していることを知っており、「岡田くんも休日にくずはモールに行くの?」とか、「京橋駅の立ち飲み屋は最高だね、岡田くんも一度行ってみたら」とか、いろいろ話してくれる。その店長が決まってしゃべる話題が、昔の京阪沿線。現在、京阪電車は三条~淀屋橋間の本線と、中之島線、交野線、宇治線、鴨東線、京津線、石山坂本線を持つが、戦前は現在の阪急京都線(天神橋駅~西院)も、京阪電鉄の子会社が所有していた。その後の結果として同線は阪急電鉄の手に渡るが、店長は「阪急京都線を持っていたら、京阪ももっと成長できていただろう」と毎度悔しがって話が終わる。

4月にリニューアルオープンした「京都タワーサンド」の地下入り口
4月にリニューアルオープンした
「京都タワーサンド」の地下入り口
 確かに、23年3月期の連結業績を見ても、京阪ホールディングスは営業収益が2600億円なのに対し、阪急阪神ホールディングスの営業収益はその3倍を超える9683億円を記録した。阪急阪神ホールディングスは阪急電鉄と阪神電気鉄道が合併したのでその影響もあるが、京阪ホールディングスは大阪と京都をつなぐ重要路線を持つ企業であることを考えると、物足りなさを感じてしまう。それは京阪ホールディングス自身も感じているようで、3月に策定した長期経営戦略・中期経営計画では、進行中の「中之島4丁目未来医療国際拠点整備事業」や「京阪御堂筋ビルおよび日土地淀屋橋ビルの共同建替」、「枚方市駅周辺地区第一種市街地再開発事業」に加え、京橋駅周辺再開発や天満橋駅周辺再開発などの新規プロジェクトを披露した。

 新規プロジェクトの中で私が注目しているのが、「京都タワー再整備」と「中之島4丁目 自社敷地開発」だ。京都タワーでは、4月に階下の商業施設「京都タワーサンド」をリニューアルオープンしたが、上層階のホテルやレストラン、ラウンジなどは手を入れていない。既存の京都タワーサンドを増床することは難しいが、ホテルは手を加える余地が十分にあると感じる。京都タワーは京都駅の象徴でもあるため、グループ傘下の(株)ホテル京阪の活躍に期待したい。同様に、中之島4丁目 自社敷地開発も、なにわ筋線の開業を見据えたプロジェクトであるため、周辺の地権者と協力してより良い施設を作ってもらいたい。これら2つのプロジェクトは、京阪の駅に近い立地ではないため、駅直結の百貨店やホテル、ショッピングセンターの開発は難しい。こうした立地で人を呼び込む施設を作り上げれば今後の成長も約束されるはず。店長や私の期待を一身に背負って、京阪にはさらなる活躍を期待したい。
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