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厚生労働省医政局研究開発振興課 再生医療研究推進室 ヒト幹細胞臨床研究対策専門官 原 章規氏(下)


「再生医療の産学官連携へのご提案を」

2013/11/5

セミナー終了後に活発な質疑応答が行われた
セミナー終了後に活発な質疑応答が行われた
 JPI(日本計画研究所)主催の特別セミナーで、厚生労働省医政局研究開発振興課・再生医療研究推進室・ヒト幹細胞臨床研究対策専門官の原章規氏による講演「オールジャパン体制のもと戦略的に推進する『再生医療の実用化に向けた制度面・予算面からの取組みと実施体制』~『再生医療の実現化ハイウェイ構想』をふまえて~」の内容を伝える連載の3回目となる今回は、「再生医療の予算措置」について。

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 「再生医療の実現化ハイウェイ構想」は、再生医療の迅速な実現に向けて、文部科学省、厚生労働省、経済産業省が連携して基礎から臨床段階まで切れ目なく一貫した支援を行うとともに、再生医療関連産業のための基盤整備ならびに、iPS細胞の創薬支援ツールとしての活用に向けた支援を進め、新薬開発の効率性の向上を図るもので、2012年度の補正予算を含めて10年間で総額1000億円以上の財政的な支援を目指している。
 13年度の予算額は、文部科学省が「安全なiPS細胞の提供幹細胞操作技術の開発・共有」として27億円、「再生医療のいち早い実現を目指して強力に研究を推進」55億円、厚生労働省は「再生医療の臨床試験推進」16億円、経済産業省は「再生医療の実現化を支える産業基盤を構築」25億円、「幹細胞による創薬支援の実現化を支える産業基盤を構築」5億円、文科省と厚労省の「iPS細胞等を用いた創薬等研究の支援」13億円の計141億円。14年度概算要求では164億円に設定した。
 12年度では、9.8億円の予備費第1弾として、大阪大学、京都大学、熊本大学、国立成育医療研究センター、先端医療振興財団、東京女子医科大学の6機関を対象に「iPS細胞等の臨床研究の安全基盤整備支援」を行った。これは、移植に用いたヒト幹細胞の一部を「ヒト幹細胞アーカイブ」に保管しておき、移植から時間が経過した後に、移植に用いたヒト幹細胞について溯って調べることを可能にしておくことで、ヒト幹細胞移植の安全性・有効性を長期的にフォローアップでき、安全かつ有効な再生医療を実現する。また、各研究機関において、移植に用いたヒト幹細胞を長期間保管しておくコストも軽減できるため、臨床研究が促進されることにつながる。
 12年度では、厚労省が予備費第2弾(19.9億円)の「iPS細胞を利用した創薬研究支援」を、医薬基盤研究所、大阪大学、九州大学、京都大学、熊本大学、慶應義塾大学、国立成育医療研究センター、自治医科大学、東京大学の9機関を対象に実施した。これは、難病などの患者由来のヒトiPS細胞などを用いて、当該疾患に対する創薬シーズの探索を行う事業および各種薬剤候補物質の安全性(肝細胞で薬剤の代謝能、心筋細胞で不整脈誘発がないかチェックすることなど)の評価系を確立するための事業を実施することで、画期的な新薬の開発を推進することが可能となる。
 さらに、12年度の補正予算22.2億円を「再生医療臨床応用実用化推進事業」に活用した。これは、iPS細胞などの再生医療実用化促進のためには、安全性を確保し、臨床応用を行うことができる人材の養成が必須であり、研究者・医師がiPS細胞などの樹立・調製や人体への移植・投与を適切に実施する技術を習得するため、細胞培養加工などの機能を備えたトレーニングセンターを東西2カ所の研究拠点に設置するもので、大阪大学と東京女子医科大学を選定した。
 トレーニング内容は、iPS幹細胞などの樹立・調製に必要な清潔操作・手順の習得、移植・投与技術の動物・人体モデルでの実践などで構成、それにより、iPS細胞などを扱う技術の習得が可能となり、再生医療の安全性が確保されると同時に、実用化が促進されるといった成果が期待される。
 厚労省医政局の13年度予算(再生医療分野)では、22.5億円のうち、1.2億円をヒト幹細胞情報化推進事業(国内外のヒト幹細胞に関するデータベースの整備)に活用し、国内外の研究者などに対しての情報提供を図る。
 残り21.3億円は再生医療の実用化に向けた研究の支援に活用、ヒト幹細胞を用いた再生医療の臨床実用化のための基盤構築に関する研究(ヒト幹細胞の臨床応用のための標準的な方法、基準値などを確立するための研究)、ヒト幹細胞の保管(アーカイブ)のための研究、安全性の確保のための研究(安全性を確保するため、実用化の課題となっている分野(がん化など)に対する研究)、治療方法の探索のための研究(実用化に近い臨床研究を目的とした治療方法を探索するための研究)に対する支援を行い、さらに、創薬応用に向けた研究(ヒトiPS細胞から種々のヒト細胞に分化・誘導を行い、病因分析、創薬などに用いる細胞の開発のための研究)に対する支援も行っている。
 原氏は、「再生医療は新しい医療分野であり、各種基準や評価方法はまだ確立していない。14年度では、法整備による民間資金の誘導と共同研究の推進、科研費を用いた産学連携による臨床プロジェクトの推進を図る」といった展望を述べ、「これ以外にも、産官学で推進するための提案、意見をお寄せ下さい」と呼びかけて、講演を締めくくった。
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