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厚生労働省 保険局 医療課 包括化推進専門官 松本晴樹氏


「先進医療ハイウェイ構想の推進」を講演

2013/11/12

松本晴樹氏
松本晴樹氏
 (株)JPI(日本計画研究所)は、JPI特別セミナー「厚生労働省・保険局 『日本再興戦略』における最先端医療迅速評価制度(仮称)(=先進医療ハイウェイ構想)の推進と取り組みの重点」を開催した。保険外併用療養費、混合診療との違い、先進医療制度の見直し、先進医療の現状などについて厚生労働省 保険局 医療課 包括化推進専門官の松本晴樹氏が講演した。
◆先進医療制度の見直しの経緯
 同氏はまず「日本の医療保険制度は、国民皆保険の理念に基づき、『必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する』ことを原則としているが、先進医療や治験については保険外併用を認めている。先進医療制度は、2004年12月の基本的合意以降、必要に応じて見直されてきたが、日本再興戦略(13年6月14日閣議決定)によって『(前略)新たに外部機関などによる専門評価体制を創設し、評価の迅速化・効率化を図る最先端医療迅速評価制度(仮称)(=先進医療ハイウェイ構想)を推進する(以下略)。〈本年秋をめどに抗がん剤から開始〉』とされ、さらなる制度の見直しが行われることになった」と、先進医療見直しの経緯を説明した。
◆先進医療制度の歩み
 「先進医療とは、まだ保険診療として認められていない先進的な医療技術について、安全性、有効性などを個別に確認したものについては保険診療と保険外診療の併用を認め、将来的な保険導入に向けて評価するもの。先進医療部分を除く一般の診療と共通する部分には保険が適用され、先進医療部分は全額自己負担となる。個別の医療技術が先進医療として認められるためには、先進医療会議で安全性、有効性などの審査を受ける必要があり、実施する医療機関は厚生労働大臣への届け出または承認が必要になる。先進医療制度は、05年に創設され、12年12月現在で95技術が対象となり、1039医療機関が実施医療機関となった。その間63技術が保険導入された」と先進医療制度について同氏は述べた。
◆先進医療と混合診療の違い
 有効性・安全性などが認められていない治療法および保険で認められている治療法を組み合わせて行ういわゆる混合診療と、先進医療(保険外併用療養費・評価療養)との違いは、先進医療が安全を確保できる体制の下で有効性を確認しながら実施し、そのデータを活用して保険適用につなげることから広く国民に行き渡る(先進医療から63技術がすでに保険適用)のに対し、いわゆる混合診療は安全性・有効性などが確認されないまま実施される恐れがあり、保険適用につながらない。先進医療は、入院費・検査費が保険適用されるが、いわゆる混合診療は適用されない。
◆先進医療制度の手続きの見直し
 新成長戦略(10年6月18日閣議決定)及び規制・制度改革に係る対処方針(10年6月18日閣議決定)を踏まえた先進医療制度の手続きの見直しは、中央社会保険医療協議会で10年から11年まで議論され、取り組み内容について次の1~3の結論を導いた。
1.「医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議」で、医療上の必要性が高いとされた医薬品について、新たな海外実績などから一定の安全性などが確認されている抗がん剤については、開発企業の公募中など長期間治験が見込まれない場合に、これに係る技術を先進医療の対象とする。
2.先進医療の対象技術の申請で、日本での数例の実績がない場合であっても、申請された個々の技術や、医療機関の特性に応じて、先進医療の実施を認める。
3.現行の先進医療専門家会議と高度医療評価会議での審査の効率化、重点化を図ることなどを目的として、両会議での審査を1つの会議で行う。
◆未承認薬・適応外薬解消に向けた対応
 上の1~3の結論に対して12年10月以降には、それぞれAからCの対応をとることになった。
A.欧米では使用が認められているが、日本国内では承認されていない医療上必要な医薬品や適応外薬(未承認薬など)を解消するため、医療上の必要性が高いとされた抗がん剤については、海外における標準的使用状況の情報を活用し、先進医療としての適格性等を先進医療会議において確認し、先進医療の対象として適格なものについては高度の知見を持つ外部機関で、新技術の技術的妥当性や試験実施計画などを審査できることにする予定で、外部機関での評価の具体的な実施方法や、体制などについて検討している。
B.早期・探索的臨床試験拠点、臨床研究中核病院などの高度な臨床研究が実施できる医療機関では、日本での「数例の実績」がない場合でも申請が可能とした。
C.「先進医療専門会議」「高度医療評価会議」を一本化した「先進医療会議」で審査することとした。
◆最先端医療迅速評価制度(仮称)
 先進医療制度を見直して迅速化のために実施される最先端医療迅速評価制度(仮称)(=先進医療ハイウェイ構想)について、松本氏は「抗がん剤、再生医療、医療機器などについて、患者が安全かつできるだけ早期に、最先端の医療を受けられるように新たに専門的な評価体制を創設するもの。現行の先進医療は、医療機関が厚生労働省に申請した後に、先進医療会議で個別技術の適否、実施医療機関の適否、実施計画の適否についておおむね6~7カ月をかけて協議した後、先進医療としての保険併用開始となる。これに対して最先端医療迅速評価制度(仮称)(=先進医療ハイウェイ構想)で新たに構築する専門的な評価体制は、医療機関が厚生労働省に申請した後に、外部評価機関などの専門評価体制で実施計画の適否を判断し(おおむね3カ月を目指す)、先進医療として保険併用を開始する。その際に先進医療会議は、学会などの要望を踏まえてあらかじめ、対象技術の選定、実施医療機関群の設定を済ませる。抗がん剤については11月末をめどに体制を構築し、その後に再生医療、医療機器を14年度以降から開始する予定である」と詳説した。
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