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(社医)財団 大和会、公開医学講座200回記念の講演会を開催


在宅センター長の森清氏が講演「ぬくもりのあるまちづくり~いのちから学ぶ~」

2015/7/21

手話をまじえ講演する森清氏
手話をまじえ講演する森清氏
 (社医)財団 大和会(東京都東大和市南街2-2-1、Tel.042-567-8307)は、医学知識の普及・啓蒙を目的とした専門医による公開医学講座を1998(平成10)年から毎月開催し、2015年6月に200回を達成した。6月20日に、200回の記念講演「ぬくもりのあるまちづくり~いのちから学ぶ~」を開催した。
 東大和市長の尾崎保夫氏、武蔵村山市長の藤野勝氏、東大和市医師会会長の有村章氏、武蔵村山医師会会長の押切勝氏の来賓あいさつに続き、第1部の大和会在宅サポートセンターセンター長の森清氏による基調講演「地域包括ケアの未来」が行われた。
 森氏のプロフィールは、北海道大学医学部卒業、沖縄県立中部病院、ハワイ大学卒後研修課程修了、北海道大学医学部大学院卒業(医学博士)、ハーバード大学医学部ダナファーバー癌研究所フェロー、順天堂大学附属順天堂医院 血液内科、日本血液学会認定 血液学専門医、日本在宅医学会認定 在宅医療専門医、日本緩和医療学会認定 暫定指導医。

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◆「まちぐるみでグリーフケアを」
 森清氏は、生きることの意味、病むことの意味の問いかけから講演を開始した。病むことや病む家族を介護することに対して、嘆くこと、「なぜ」と原因を探ろうとすること、立ち向かおうとすることなどが、その人とその人を取り囲む人たちの「ものがたり」となる。
 例えば、「『父親は嫌いだが、看病する母が心配』という娘さんが、そのお父さんを介護するようになり、その娘さんは『父親をいとおしいと思えるようになった』」というエピソードを交え、生活者の癒しへとつながることを紹介し、まちぐるみでグリーフケアを行う大切さを説いた。

◆「市民みんなでささえあうまちづくりを」
 森氏によると、東大和市の高齢者人口(2012年推計)は、15年の85歳以上2279人/80~84歳3086人/75~79歳5026人が、20年に各3358人/3754人/5026人、25年に各4424人/4278人/5342人、計1万4000人となり、75歳以上人口がほぼピークとなる。30年には総数はほぼ同じ計1万4000人強ながら、各5420人/4604人/4110人と構成比が変わり、35年になると各6333人/3545人/3805人となり、計1万4000人を下回る。85歳以上人口は05年の1203人が35年に5倍以上となる。
 東大和市の要介護者数は、10年が2000人弱で、15年2600人超、20年3500人、25年4300人、30年4700人、35年4900人で推移すると見ている。
 また、認知症罹患者数は、05年の700人が、10年1000人、15年1400人、20年1700人、25年2200人、30年2450人、35年2500人と推移することを説明した。
 こうした高齢化の推移を示したうえで、「ものがたり」と互助について、「スピリチュアルケアは、ホスピスで受けるもの?」と問いかけ、現実は医師や看護師が対応しているとした。この「ものがたり」、ケアの気持ちを共有し、「お寺、教会、町内会、街の長老、おまわりさん、市民みんなでささえあうまちづくりをしましょう。ぬくもりのあるまちづくりを」と呼びかけた。
 森氏は、「98歳の末期肝臓がんの患者が、死を待つ状態で、もう食事も水分も受け付けず、排尿もできなくなった状態であるが、なかなか最期を迎えられない。その患者を看病する娘さんに『耳は聞こえるから、軽率なことを話さないように』と諭したところ、患者の娘さんは『耳は聞こえるのですか』と確認したうえで、患者の耳元で『お父さん、もうがんばって生きなくていいよ。おかあさんのところへ行ってもいいからね』って伝えた。事情を聞くと、患者が20代の頃、患者の奥さんが亡くなって、それ以来、男手一つで娘さんを育て上げた。その娘さんにはもう大きな子どももいるが、何歳になってもその娘さんが気がかりで生きようとしていたのかもしれない」とのエピソードを紹介して涙を誘った。
 森清氏は、近著『自分らしい最期を生きる セルフ・スピリチュアルケア入門』(教文館、税込み価格1404円)の中で、スピリチュアルケア・在宅医療の前提となる自助と互助について解説しつつ、在宅医療への導入の紹介をしている。

◆地域包括ケアの未来
 地域包括ケアシステムのキーワードとして、ひとりぐらし、介護予防(転倒予防)、認知症、がん、誤嚥、災害を挙げた。孤独死の6割が介護保険を使っていない、また、介護に疲れて高齢者への虐待が起こり得るため、それを見張る必要も指摘した。
 厚生労働省や東京都が推進する地域包括ケア体制の構築に向け、大和会は東大和市医師会、東大和市と連携して、認知症予防・認知症カフェ、認知症コーディネーター、認知症サポーター、認知症地域支援推進員、介護予防ボランティアリーダー、認知症疾患医療センター、在宅医療介護連携支援センターといった人員の育成・確保や拠点の確保、多職種連携を進める。
 多職種連携では、医師会、歯科医師会、薬剤師会、POSTリハビリ療法士、地域包括支援センター、ケアマネット、介護福祉士・ヘルパー、MSW・社会福祉士会から在宅サポートセンターまでを含める。
 がん支援相談室「がんとともにある街」では、東大和市就労在宅地域病院リンク支援構想(家・病院・職場(会社)・地域を結ぶ)を紹介。これは、現在の東大和病院内のがん相談支援センターの機能を強化するため、社会福祉士を導入すると説明した。
 オレンジリングを着けた認知症サポーター、オレンジサポーターは東大和市内で2688人(全国600万人)、武蔵村山市で2263人だが、それぞれ1万人の達成を目指しましょうと呼びかけた。
 東大和病院は認知症コーディネーターや理学療法士、誤嚥対策チームなどへのPOST教育などを施し、また、武蔵村山病院はレスパイトベッドの確保などで連携する。また、地域包括ケア体制の整備促進と地域の医師会の要望に応えるため、東京都の「地域連携型認知症疾患医療センター」の認定を目指して、申請を行ったことを明かした。
 東大和病院ケアサポートの在宅看取り率は60%以上に達している。
 東大和市は、医師から介護マネージャーへ紹介が行き、さらに介護施設の利用という、医師会と介護施設の連携ができており、25年を乗り越えるためにも、「市民みんなで高齢者を見守ろう」という発想を強調した。

◆CGA基準に高齢者サポート
 そのためには、「高齢者総合機能評価CGA(comprehensive geriatric assessment)」の項目、(1)意欲(進んであいさつをする⇔返事がない)、(2)復唱(できる⇔できない)、(3)交通機関利用(ひとりでできる⇔付き添いが必要)、(4)再生(数分後に再度復唱ができる⇔できない)、(5)入浴(ひとりで安全に入浴⇔介助必要)、(6)排泄(失禁なし⇔自立以外)、(7)情緒「自分を無力だと思うことが多いですか」(いいえ⇔はい)を目安に、(1)返事がない⇒地域包括(支援センター)へ、(2)復唱できない⇒認知症外来・地域包括支援センターへ、(3)交通機関利用付き添い⇒ケアマネ・地域包括、(4)再度復唱困難⇒認知症外来・地域包括、(5)入浴介助必要⇒ケアマネ・地域包括、(6)排泄自立以外⇒ケアマネ・地域包括、(7)無力感はい⇒見守り・ケアマネ・地域包括⇒介護予防・体操・老健や事務での運動療法をという対応を図り、「まちぐるみで、まちづくりを」進める。

◆「病気・診断中心」から「生活中心」へ移行
 次いで、「ICD(国際疾患分類)やICIHD(国際障害分類)から、ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health、国際生活機能分類)へ」として、疾患を生活機能障害として捉え、“できない”から“やれる”へ、ポジティブな見方をして介護資源を活用することで、生活上の心身機能、生活機能を補い、それにより社会参加が促され、「生きる意味の再認識」につながる。生きることの全体を見る「統合モデル」、つまり生活者の捉え方によって、「病気・診断中心」から「生活中心」へ移行させる。

◆森氏「このまちを理想郷としたい」
 超高齢化社会へ移行するなかで、85歳の人のごみ出しを65歳がする、そういう互助をすることを勧める。ケアマネージャーやヘルパーが関わることでしっかりと元気になれる。
 森氏は、講演しながら、自ら手話も活用し、「世の中のみんなが手話ができれば、聴覚の障害者が普通に生活できる、そういうことを想像してください」、「皆さんが努力して、このまちが良くなってゆくことに期待しています。この地域の地域包括ケアシステムが構築できるか、私たちに問われています。このまちを理想郷としたい」と講演を締めくくった。

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 このあと、第2部の東大和市立第五小学校の生徒有志によるこども演劇「ユイと家族の大切な時間」、第3部のまちぐるみで高齢者を支えあうをテーマとした、「看取りを経験したご家族の話」(大月孝彦さん・恵美子さんご夫妻)、「地域を支えるプロフェッショナル」の発表が行われた。
 大和会は、東大和病院、武蔵村山病院をはじめとする13事業所を有し、東京都東大和市、武蔵村山市を中心とした医療圏で、高度急性期医療から介護まで展開する医療法人。武蔵村山病院は東京都の「地域連携型認知症疾患医療センター」の認定を目指して申請し、また、09年に東京都第1号の社会医療法人の認定を受けている。
 財団大和会の13事業所は、東大和市南街2-49-1に村山大和診療所、東大和訪問リハビリステーション、東大和訪問看護ステーション、東大和ヘルパーステーション、指定居宅介護支援事業所東大和病院ケアサポート、村山大和レンタルケアステーション、東大和市高齢者ほっと支援センターなんがい、東大和市高齢者見守りぼっくすなんがい、武蔵村山市榎1-1-5に指定居宅介護支援事業所武蔵村山病院ケアサポート、東大和訪問看護ステーション武蔵村山サテライト、武蔵村山市中央2-13-1に武蔵村山市北部地域包括支援センターを設置している。
 以前から増築計画を進めている武蔵村山病院(武蔵村山市榎1-1-5)では、敷地内で16年1~2月から増築工事の基礎工事に着手し、工期6カ月程度で竣工する目標である。また、東大和病院(東大和市南街1-13-12)では、移転新築構想を持ち、以前から移転候補地を選定している。

▼社会医療法人財団 大和会
http://www.yamatokai.or.jp/index.html?from=sangyo-times
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