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No.42

鹿児島県、大阪で企業立地懇話会、アルバック/トヨタ車体研究所が講演


2017/12/5

 鹿児島県企業誘致推進協議会(鹿児島市鴨池新町10-1、Tel.099-286-2983=商工労働水産部産業立地課)は11月7日、大阪新阪急ホテル(大阪市北区芝田1-1-35)において「平成29年度鹿児島県企業立地懇話会」を開催した。

三反園 訓氏
三反園 訓氏
 冒頭、鹿児島県知事の三反園訓氏が開催挨拶。これに続く講演は、鹿児島県霧島市に工場を置く(株)アルバック(神奈川県茅ヶ崎市)代表取締役執行役員社長の岩下節生氏による「グローバル化に向けた取り組み」、同じく霧島市に本社を置く(株)トヨタ車体研究所代表取締役社長の立松哲二氏による立地企業の事例紹介「(株)トヨタ車体研究所から見た鹿児島の魅力」。さらに、立松氏、山口堅二氏(アルバック九州(株)常務取締役)、本紙を発行する(株)産業タイムズ社代表取締役社長の泉谷渉をパネリストに、三反園氏がモデレーターを務めトークセッション「『立地企業と知事とのトークセッション』~鹿児島の魅力~」が催された。

 三反園氏は、鹿児島は国土の南端というイメージがあるが、実は国際ビジネス・貿易を視野に入れると非常に有利な位置にあるという。さらに、陸海空のインフラが整備され、例えば、飛行機なら上海は東京と同じ1時間圏内、新幹線で福岡市は1時間16分、大阪市は3時間41分とアクセスに優れ、志布志港や川内港から上海へは2日、台湾、釜山は1~2日で貨物船が到着でき、インターチェンジに近い臨空団地などを紹介した。さらに、産学官の連携体制、豊富な人材、工業・工学系の教育環境、恵まれた自然環境と豊かな温泉、日本一となった鹿児島黒牛、黒豚、黒さつま鶏、日本一のウナギ、ブリ/カンパチ/カツオなどの食料品、多彩な焼酎を紹介してアピールした。

岩下節生氏
岩下節生氏
 アルバックの岩下氏は、「鹿児島県への企業立地懇話会という趣旨とは若干異なりますが」と前置きしたうえで、同社鹿児島工場と同社の最大市場である中国に近いメリットの説明も織り交ぜながら、「グローバル化に向けた取り組み」として、事業・戦略を解説した。岩下氏は、目下の事業環境について、『スマート社会』への移行が始まりつつあり、あらゆるものがつながり、また、センサー/MEMS、メモリー、次世代バッテリーなどの需要が急増する「数十年に一度のチャンス」「爆発的に成長する時代」が到来している。こうしたなかで中国企業と比べ、大幅に遅い日本企業の意思決定の加速化を鼓舞しながら、日本企業に大きなチャンスがあると強調した。

 続いて、トヨタ車体研究所の立松氏は、トヨタ車体のMIRAI(世界初の量産型燃料電池車)、レクサスLC、新興国向け戦略車IMV、小型バス「コースター」などのボディ・インパネ・シート・機能・電装・ランプ・外装・ワイヤーハーネスの設計を手がける事業を紹介。また、鹿児島県の魅力として、県民性を共助・人情で「敬天愛人」である、自然・温泉、交通インフラ、豊かな食、明治維新の基礎ともなった郷中教育の歴史・文化、鹿児島大学、鹿児島高専、第一工業大学、川内職業能力開発短大、県内工業高校・専修学校といった教育体制、産官学ネットワークを挙げた。トヨタグループにあっては、中部地区と九州、さらに東北の3極体制の中で、九州はグループ以外のメーカーを含めた「九州連合」ともいえる自動車関連産業の集積があり、アクセスの良い鹿児島の可能性も示唆した。

 トークセッションでは、アルバック九州の山口氏が、同社の半導体製造装置は大型で、以前は鹿児島からトレーラー10台を連ねて門司港を目指し、門司港から船便で中国へ出航したが、現在は、鹿児島県内の港から出荷が可能となったと利便性を強調した。

左から泉谷渉、山口堅二氏、立松哲二氏
左から泉谷渉、山口堅二氏、立松哲二氏
 弊社泉谷は、11月7日時点で日経平均が26年ぶりの高値を更新するなど、自動車に加え、IoT化で半導体が活況を呈し、『日本のものづくり』が復活しつつある。京浜、東海、大阪といったエリアは中小企業を裾野に厚い工業集積があるが、九州では福岡~熊本と鹿児島を結ぶ交通インフラの確保で相乗効果が生まれ、さらなる工業集積が進むと期待を述べた。

 立松氏は、鹿児島の良い面として、地元での就職支援の取り組みを挙げた。これに関して、女性エンジニアの育成や障害者雇用に協力を要請するとともに、支援も図りたいとした。また、愛知県刈谷市から2020年までに鹿児島本社にさらに社員を戻す計画も表明した。悪い点としては部品のサプライチェーンが一貫していないことを示したが、見方を変えれば、部品の供給拠点として、立地の可能性が残されていることを示唆した。

 三反園知事は、「県のほか、各市町村も進出に対する補助制度を用意している。ひとが地元にとどまる方策、『戻りたいという仕掛け』の構築のため、良い就業の場所の確保のためにも企業誘致に努める。皆様のご支援を賜りたい」と呼びかけて懇話会を終えた。

(大阪支局長 倉知良次)

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