電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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アジア最大!香港エレクトロニクス・フェア訪問記 前編


杭州市、デジタル化で渋滞緩和
中国大湾区の新進気鋭企業が多数出展

2019/6/20

 アジア最大のエレクトロニクスショー「香港エレクトロニクス・フェア(春)」と「インターナショナルICTエキスポ」が、4月13日(土)~16日(火)、香港コンベンション&エキシビションセンター(HKCEC)で開催された。主催は香港貿易発展局(HKTDC)。香港だけでなく中国本土やアジア各国、日本などから多数の企業が出展したほか、全世界から両イベント合わせて10万人を超えるバイヤーが参加したという。同イベントのトピックおよび主な出展社を紹介していく。

■中国初の都市デジタル化プラットフォーム
杭州シティ・ブレインの巨大ブース
 同イベントで大きな話題となったトピックが、中国本土を中心に盛り上がりを見せる「スマートシティ」である。なかでも、AIやICTを駆使して都市機能をデジタル化する中国・杭州市の「杭州シティ・ブレイン」が注目を集めた。
 これは、都市機能をデジタル化して市民や企業にも恩恵をもたらす「デジタル・シティ」を形成するためのオープンプラットフォーム。同市は、2016年に中国本土で初めてこのオープンプラットフォームを導入、まず渋滞緩和のための交通インフラのモニタリングに活用している。
 かつて同市は、中国国内でワースト3に入るほどの深刻な渋滞に悩まされていたが、シティ・ブレイン導入後は、中国国内の70の大規模・中規模都市中35位にまで向上したという。そして同市は18年末に、交通だけでなく都市のガバナンスと市民サービス向けのプラットフォームもリリースし、駐車場管理や医療に至るまでサービスの範囲が広がったという。
 このシティ・ブレインの構築には、アリババの一部門でクラウドコンピューティングを手がけるアリババクラウドが参加しているほか、ANT FINANCIAL SERVICES、Hikvision Digital Technologyなど、同市に拠点を構えるデジタル企業も参加しているという。
 会期中の4月15日には、アリババクラウドの創設者であるワン・ジエン氏がシティ・ブレインのコンセプトについて講演、人だかりができる大盛況であった。また、同市の発展改革委員会が会場内に巨大ブースを出展し、多くの来場者の目を引いた。この杭州シティ・ブレインが中国本土以外で紹介されるのは今回が初めてという。
 同市はこのシティ・ブレインを海外にも展開していきたい考えで、すでにサウジアラビアやUAE(アラブ首長国連邦)、マレーシア、インドネシア、シンガポールなどと交渉を進めているもよう。

■AIで被写体を着実にトラッキング
Remo TechのAI搭載カメラ
Remo TechのAI搭載カメラ
 AIを活用したソリューションでは、Remo Techが出展したビデオカメラ「OBSBOT Tail」も話題を集めた。これは世界で初めてAIを搭載し、被写体を360度追尾できるビデオカメラである。ソニー製の2・3分の1インチCMOSイメージセンサー、HOYA製の光学レンズ10枚、5TFLOPSの処理能力を持つハイシリコン製のAIチップを搭載しており、さらに360度回転できる3軸のジンバルを駆使することで、動いている被写体を自在かつ自動的に追尾し、4Kの高解像度映像を自動的に録画できる。さらに、AIを駆使することで、人込みや構造物が多い環境下でも狙った被写体を着実に探し出してトラッキングができる。

■AI顔認識を車載など多方面に展開
センスタイムによる「SenseAR」のデモ
センスタイムによる「SenseAR」のデモ
 香港を代表する世界的AI企業で、同地域で伝説的ユニコーン企業として知られるセンスタイムは、得意とする顔認識や動画解析技術を駆使した様々なシーン向けソリューションを公開した。独自のAI技術を駆使した高精度な顔認識技術は、すでに中国本土のスマートシティ・セーフシティプロジェクトに採用されているほか、日本企業とも手を組んでおり、自動運転向け顔認識技術でホンダと協業している。今回のショーでは、自動車向けの「SenseDrive」、商業施設などで活用できる「SenseU」、スマホ向けの「SenseAR」といった技術を紹介した。
 SenseDriveは走行中のドライバーをモニタリングする技術。ドライバーの顔をモニタリングすることで健康管理や安全確保に貢献できるほか、カーシェア時の顔によるID確認や、将来的には顔認識による自動運転車の車内システム制御などに応用できるという。また、運転中のレーン逸脱警報や、荒天時の前方確認や歩行者認識などに対応した画像認識技術もラインアップしている。
 SenseUは、商業施設のサイネージディスプレーを使ったインタラクティブゲームを通じて買い物客の顔などのインフォメーションを取得、それをターゲッティング広告や来場者数計算などに利用できる。
 SenseARは、高精度顔認識技術を駆使したスマートフォン(スマホ)向けのAR技術だ。従来のARよりもリアリティーが高いARが可能で、これを使うことによりソーシャルメディアをより楽しく利用できるという。

■多種多様な形状のスマートウオッチを製造
 広東省深セン市に本拠を置くSynergy Technologiesは、GPSウオッチやスマートウオッチを自社開発・生産している。スポーツウオッチ、ブレスレット型など、様々な形状のウオッチを顧客の要望に応じて作ることができる。子供向けのスマートウオッチも作っているという。本体だけでなくスマートウオッチ向けアプリも開発しており、すでにApple WatchやAndroid対応スマートウオッチ向けアプリを10種類以上開発したことがある。スマートウオッチ用のチップは、アームの「Cortex」を内蔵したノルディック・セミコンダクターのSoCなどが使われている。

■車の周囲360度をモニタリング
 広東省東莞市に本拠を置くDecai Electron Technologyは、監視カメラや車載カメラなどのカメラ専業メーカー。近年はドライブレコーダーや車載カメラに注力しており、フルHDの高画質映像を撮影できる様々な形状の車載カメラをラインアップしている。
 キャプチャーした映像はカメラに取り付けたモニターでレビューできるだけでなく、スマホとWi-Fiでつながり、スマホでもリアルタイムで見ることができる。また、リアビューカメラやドアミラーカメラもラインアップし、これらを組み合わせて車の周囲の360度をモニタリングするシステムも開発している。CMOSイメージセンサーは、ハイエンドモデルはソニー製やオムニビジョン製を採用しているもよう。

■薄型ヒーターを埋め込んだ衣料品
 深セン市のDuralogicは、薄型のヒーターを内蔵した衣料品を開発している。手袋や靴下、ジャケットなどの衣料品の中に薄型のヒーターを埋め込んでいる。これらの衣料品はそのまま洗濯することが可能なうえ、着たままスマホの充電もできるという。

(編集委員 甕秀樹)

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