電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第1回

窒化ガリウム半導体の巨大市場が爆裂する!!


~ついに結成された日の丸連合軍は名古屋に集結~

2012/7/2

㈱産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉
  「パワー半導体が環境エネルギー関連で急上昇することは間違いない。これまでのシリコンに加え、SiC(シリコンカーバイド)を使った新たなパワー半導体が話題になっている。しかしながら、GaN(窒化ガリウム)を使ったパワー半導体こそ次世代版の本命かもしれない。ところで、LED発祥の地である名古屋からGaNパワーデバイスの官民共同プロジェクトがスタートを切った。これは注目に値することだ」(IHSアイサプライ・ジャパン株式会社 副社長 南川明氏)。
  パワー半導体のマーケットは、近い将来に国内で5000億円、海外で2兆円は達成するとも言われている。新機能素子研究開発協会によれば、次世代省エネデバイスの本命であるパワーデバイスを既存のシリコンから新材料に替えれば、CO2削減効果は70~90%減にも達すると見られているのだ。新材料で常に話題となるのがSiCパワー半導体であり、こちらは三菱電機、富士電機、ロームなどが一歩抜け出した形となり、これを東芝、ルネサス、デンソーなどが追っている。ところが、これまでSiCの影に隠れた存在であったGaNによるパワー半導体がいよいよ急離陸の時を迎えた。スイッチングパワー特性に限ればSiCが有利と言われているが、省エネ効率に関しては、GaNが圧倒的に有利であり、また、大口径化に関してはGaN/Si方式の登場により、コストを低く抑えられることが分かってきた。つまりは、今後の普及に欠かせない量産性や低コスト化を考えれば、シリコン基板の上にGaNを乗せるという形の化合物半導体が有力であるという意見は強くなってきたのだ。
 また、デバイス化したときのコストを考えれば、最も影響が大きいのが基板コストであり、SiC基板はシリコンの数十倍と言われているため、実のところお話にならない。しかしGaNデバイスは、シリコン下地の場合はSiCの20分の1、サファイヤを下地にした場合も4分の1と非常に安い。100kVA以上の電力基幹系統や、高速鉄道車両などにおいては、どうしても高耐圧、大電流のSiCパワー半導体が強い。しかしそれ以下の分野であればGaNで十分に対応できる。GaNの狙っている市場は、携帯電話、照明器具、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、スイッチング電源など様々であり、将来的にはEVやハイブリッドなどのエコカーについてもウィングを伸ばしていくと言われている。
 ところであまり知られていないことであるが、GaNにかかわる研究開発については、名古屋工業大学が一歩も二歩も抜け出している。日本におけるMOCVD装置の開発を手がけ、これは1988年に大陽日酸による事業化が成功した。また、LED用のGaN/Siエピタキシャル膜の開発については、サンケン電気や沖電気によるデバイスとして成果が出ている。
  この名古屋工業大学を中心に、GaNパワー半導体のどでかいプロジェクトがいよいよ動き出した。すなわち、同大学内に世界初のGaN半導体実用化のための一大研究開発施設が建設されるのだ。ここにおける研究開発設備は、8インチ対応のMOCVDの導入、さらには装置、成長、デバイスの試作評価まで一貫した要素技術の研究設備が多く導入される。総事業費は23億円程度が想定されている。
  さて、注目されるのは参加メンバーだ。デバイスにおいては反SiC陣営の筆頭格であるパナソニックを始め、ルネサス、シャープなどが参加している。さらに、デンソー、トヨタ自動車、三菱電機、富士通などもこの計画に対し投資することが確実とみられるのだ。そしてまた、古河電工や、富士電機を中心とする次世代パワーデバイス技術組合も参加を決めた。材料部門では住友化学が参加する。装置部門では大陽日酸、日立ハイテクノロジーズが参加を決めている。
  要するに、GaN半導体を日本のお家芸とすべく、ニッポン大連合が結成されるのだ。パワー半導体の代表格であるシリコンIGBTについては日本が世界シェアの60%を握り、トップを快走している。SiCの国家プロジェクトはすでに成果を生み出しつつある。これに加えGaNもそろってくることで、パワー半導体の世界で日本勢が世界に差をつけて抜け出すという戦略だ。パワー半導体においては、現状でインテルは参入しておらず、韓国勢や台湾勢も影は薄い。しかしながら、安心してはいけない。海外のIMECというプロジェクトにおいては、GaNシリコンの8インチ化が計画されている。何と、アプライドマテリアルズ、ダウコーニング、サムスンの最強連合軍が結成され、虎視眈々と日本の牙城を狙い始めているのだから。


パワー半導体の省エネ効果        (単位:万トンCO2)
製品分野 2015年 2020年 2025年 2030年
家電、携帯電話基地局
78
208
236
263
コンピューター関連
0
105
157
211
産業用インバーター
170
341
790
1,238
無停電電源
195
377
683
661
電気自動車(HEV/EV)
157
791
3,165
5,540
太陽光発電用インバーター
46
95
198
300
燃料電池用インバーター
22
43
100
157
合計
668
1,960
5,329
8,370

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