電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第36回

これからの電子機器生産は機能半分で価格5分の1になる!!


~10年後に30億人に増える中間所得層を取り込む戦略が重要~

2013/6/28

(株)産業タイムズ社 代表取締役社長 泉谷渉

 「2020年には新興国の中間所得層は30億人に拡大する。この人たちを取り込むためには、今後の電子機器の開発において機能半分、価格5分の1を追求しなければならない」

 こう語るのは著名アナリストの南川明氏である。南川氏は大手の調査会社の幹部であるからして、電子機器の生産はひたすら右肩で伸び続けるとの予想が必要な立場なのだ。しかして筆者はたかが業界紙記者であるからして、言いたいことが言える。基本的にはこの間主張してきたように、IT機器はある種の成熟化を迎えたとの判断に変わりはない。

 IHSのデータによれば世界の電子機器生産額は約150兆円ということであり、2020年にはこれが270兆円に増大するとしているのだ。しかし同社のデータを見ても2000年に120兆円程度であった電子機器生産は、この10年間でたったの30兆円しか伸びていない。それほどの右肩上がりの成長が今後起きてくるとは少しく考えにくい。

 ただ、南川氏の主張で確かに正しいと思えることがあるのだ。それは何といっても爆発的な人口増大だ。先進国の富裕層プラス中間層は、せいぜい5億人程度であり、これは2020年にいたってもほとんど増えない。要するに買い替え需要中心だ。しかし、BRICsを中心とする新興国は現状で16億人、10年後には30億人になり、14億人の新規需要が生まれてくる。基礎的な消費製品としてのテレビ、冷蔵庫、掃除機、エアコン、電池、電球などはどうあっても間違いなく増えるだろう。また、選択的消費製品としてのパソコン、一般携帯電話、DVD、カメラなどもそこそこは伸びるだろう。

 しかしながら、新興国の中間所得層は、高額電子機器をバンバン買えるわけではない。中国都市部の平均年収が60万~70万円であることを考えれば、やはり南川氏の言うように「機能半分、価格5分の1の電子機器」が必要になってくるのだろう。

 「一方で、電子機器の大量生産・大量消費時代が始まった。2000年の大量生産電子機器を見れば、12品種が1億台以上となっていた。2012年においては、実に28品種が1億台以上となっている。スマホに代表されるオバケ製品の出現でEMS活用が一気に増大したのだ」(南川氏)

 EMSやODM経由の半導体消費は確かにこの十数年で急拡大し、今や全体の40%を占めるに至っている。システムのプラットフォーム化が急速に進んだからだ。しかし、物事はあるところまで来れば、必ず揺り戻しが起きてくる。最近では何でもEMSという動きが減速し始めており、今後はブランドメーカーの内製化が強化されるという傾向も出てきた。アップルも自社工場をアメリカ国内に建設しようとしている。ファブレスのクアルコムも自社工場をアメリカに建設しようという動きがある。つまりは、製品の差別化、秘密保持はやはり内製化、という拭いがたい考えはいまだに残っているのだ。

 ところで、電子機器の1台あたりの半導体搭載金額は、ここにきて減り始めている。2000年当時は1台当たり45ドルも半導体を使っていたのに、今や25ドルとなり、実に20ドルも減っているのだ。つまりは、量が増えて半導体の単価が急下落していることを表す。汎用マーケットの拡大がこうした現象を生み出してきた。

 筆者の考えでは、スマホの爆発的増大が15億台程度(12年は6億5000万台)まで行けば、新興国の中間所得層の人口急増があっても、やはり電子機器全体としては厳しい状況を迎えることになるだろう。要するに、次の大型エレクトロニクス製品が見つからないのだ。それゆえに、脱ITとしての医療産業、次世代自動車、航空産業、ロボット、環境エネルギー機器などへの半導体搭載を何としても増やさなければならない。

 しかし、誰しも目の前の市場に振られていく。5年後10年後には成長するとわかっていても、量産移行の道筋をつけることは難しい。かつての植木等ではないが、「わかっちゃいるけど止められない」の状況をどうやって突き抜けるか、企業の意思が問われている。


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