商業施設新聞
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第310回

名古屋鉄道(株) 不動産事業本部 開発部 付部長兼開発課長 高見茂宏氏


商業開発から街づくりへ移行
東岡崎駅など4駅で開発計画

2021/12/14

名古屋鉄道(株) 不動産事業本部 開発部 付部長兼開発課長 高見茂宏氏
 名古屋鉄道(株)は名鉄名古屋駅を中心に愛知県や岐阜県で鉄道事業を展開しており、その沿線で駅直結の商業施設「μPLAT(ミュープラット)」を6施設運営する。新型コロナウイルスの影響を大きく受け、「沿線開発は街全体を活性化することが大切だ」と語る、不動産事業本部 開発部 付部長兼開発課長の高見茂宏氏に話を聞いた。

―― ミュープラットの変遷を。
 高見 金山駅の「金山プラザ」を改装し、2014年に「ミュープラット金山(名古屋市熱田区、以下、ミュープラット省略)」を開業したのが始まりである。コンセプトは「身近だけど、少しワクワク、心が華やぐ!毎日“ぷらっと”立ち寄れる私の場所」を掲げ、この『ぷらっと』を施設名称に採用した。その後、18年9月に「江南」(愛知県江南市)、同年10月に「常滑」(同県常滑市)、20年7月に「大曽根」(名古屋市東区)、21年3月に「一宮」(愛知県一宮市)、そして同年7月にシリーズ最大規模の「神宮前(東街区)」(名古屋市熱田区)を開業し、現在に至っている。

―― 施設の特徴は。
最大規模となる「μPLAT神宮前」
 高見 地域に愛される商業施設を目指しており、高級ブランド店はあえて誘致せず、スーパーマーケット、ドラッグストア、飲食店などの駅利用者が日常使いできるテナントを誘致している。また、リーシング活動も自社で行い、その地域で店舗展開している地元企業にお声がけする機会が多い。加えて、駅の一部としてご利用いただけるように、例えば、2階に改札口を設けている大曽根では、1階だけでなく、2階にも店舗を導入している。開発に際しては、駅の乗降人員など様々な状況を総合的に勘案しているが、現状は特急および急行の停車駅に展開している。

―― 既存施設の状況を。
 高見 飲食店の夜間営業は新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされたこともあり、大きなダメージを受けた。ただ、業態間で明暗が分かれており、DgSやコンビニエンスストアは比較的健闘している。飲食店も、ディナーに偏る業態は売り上げが低迷しているが、ランチの需要を取り込んでいる業態や、テイクアウトやデリバリーに注力している業態は堅調な売り上げを示す。

―― 運営面の変化は。
 高見 消毒液の設置や施設内の換気はもちろんのこと、独自の感染症拡大予防ガイドラインも新たに策定し、各テナントにも展開している。また、神宮前(東街区)では、エスカレーターに紫外線を照射して殺菌するハンドレール除菌装置を採用したほか、エレベーターにはプラズマクラスターイオン発生機を導入した。施設でのイベントも徐々に再開しているが、コンサートなどの密が生じるイベントは避け、スタンプラリーやビンゴカード、一定以上のお買い上げでお花やお菓子のプレゼントといった体験参加型のイベントを増やしている。

―― 今後の開発案件について。
 高見 中期経営計画などで示したとおり、開業時期は未定であるが、一宮駅(愛知県一宮市)、東岡崎駅(愛知県岡崎市)、名鉄岐阜駅(岐阜市)、神宮前駅(西街区)(名古屋市熱田区)の4駅で商業施設の開発を計画している。一宮は1期エリアでカフェやCVSなどが開業したが、2期エリアではさらに飲食店を導入する。東岡崎は、駅の北側と南側に開発エリアを設けており、特に北側は観光客が多く訪れるので、既存の「オトリバーサイドテラス」とペデストリアンデッキで接続し、新たな駅ビルの開発を計画している。
 名鉄岐阜は南側に複合商業施設「イクト」があり、「岐阜ロフト」のほか、駅周辺にまとまった土地もあるため、商業施設や住宅などの複合開発を行う。神宮前(西街区)は熱田神宮の利用者向けに、土産物店や飲食店が並ぶ施設を展開していきたい。なお、一宮はミュープラットの2期エリアとしての開発が確定しているが、東岡崎、名鉄岐阜、神宮前(西街区)の3施設の内容は検討中だ。

―― 高架下や複合ビルも展開している。
 高見 19年3月に高架下商業施設「SAKUMACHI商店街」、21年9月に複合ビル「μX MEIEKI(ミュークスメイエキ)」を開業した。SAKUMACHI商店街は地元にとって大切な施設であり、今後も街によって高架下の開発を検討していきたい。一方、μX MEIEKIは惣菜店や飲食店など、名駅地区で働くワーカーが利用する店舗を導入し、周辺のワーカーには好評だ。

―― 今後の開発方針は。
 高見 新型コロナウイルスの影響で駅利用者の行動が変化し、乗降客数も減っている。これまでは駅に来る目的が鉄道に乗車するだけであったが、これからは商業施設を目的に足を運んでいただく、そのような地域の拠点となる施設づくりが必要となる。
 そのためには、自治体などとも協力し、街全体を活性化することが大切だ。今後は鉄道に乗っていただく、ミュープラットに来館していただくだけでなく、名鉄沿線を訪れていただけるように、魅力的な街を創造していきたい。

(聞き手・副編集長 岡田光)
※商業施設新聞2424号(2021年12月7日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.361

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