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日本政策投資銀行、22年度の設備投資は26.8%増の16兆6951億円の計画


2022/9/6

 日本政策投資銀行は、2022年度設備投資計画調査をまとめた。これによると資本金10億円以上の大企業の2021年度の設備投資は、新型コロナの影響長期化もあり大型投資が先送りされ、前年比3.8%減の16兆6951億円と2年連続のマイナスとなった。製造業がやや持ち直す一方で、不動産など非製造業が減少した。22年度は、前年比26.8%増の19兆6188億円の計画。21年度に見送った投資の実施に加え、EVやデジタル化需要拡大に向けた投資の増加もあり、製造業、非製造業ともに回復に向かう見込みである。


 製造業の21年度実績は、石油や化学で投資先送りなどがある一方、脱炭素やデジタル関連などにより電気機械や輸送用機械が増加し、前年比3.5%増の5兆7381億円とわずかながらプラスに転じた。22年度は、先送りした投資が再開され、幅広い業種で大幅増。化学はデジタル化を背景とした電子材料、電気機械は脱炭素も踏まえたEV向けやパワー半導体、輸送用機械は電動化対応などが牽引し、前年比30.7%増の7兆276億円とコロナ前の水準を大きく上回る。

 非製造業の21年度実績は大きく下方修正され、7.2%減の10兆9570億円と2年連続で減少。特に、大型投資一服がみられた不動産が大幅に減少した。22年度は、先送りしたレジリエンス強化に向けた投資の再開もあり、24.8%増の12兆5912億円と幅広い産業で大幅増となる。特に、首都圏開発が続く不動産のほか、安全対策を拡大する運輸などで大幅増となる。


 新型コロナによるマイナスの影響については、需要減や資金繰り悪化を挙げる企業は減少したが、感染縮小の中での国内外の移動制限のほか、仕入れの遅延・困難、納入先の減産など、サプライチェーン上の課題を挙げる企業が増加。さらに地政学リスクにより、コスト上昇を含めた主に調達面での課題が増している。さらに、カーボンニュートラル目標の見直しとの回答も一部みられた。

 サプライチェーン見直しの契機については、新型コロナの割合は減少したが、原材料高、半導体の供給不足、ウクライナ危機、円安などが挙げられた。見直しの内容としては、グローバルなリスクが増大する中で、「海外調達先の分散、多様化」や「製品・部品の標準化・規格化」のほか、3割近くの企業が戦略在庫の確保を図る。一方、国内回帰の割合は過去2年と同様5%前後にとどまったほか、調達先の国内シフトの割合も低下した。

 海外設備投資の21年度実績は、製造業では化学、電気機械、非鉄金属、非製造業は不動産などを中心に増加し、全体では11.6%の増加に転じた。国別では、中国は5年連続で増加し、欧米向けも増加に転じた。22年度計画は、ゼロコロナ政策の影響が懸念される中国では、大型投資の減少もあり減速するものの、中国を除くアジアでは内需拡大やサプライチェーン構築への期待から、多くの産業で投資が加速するほか、その他の地域において石油、ガスなどエネルギー確保への投資が高い伸びとなり、全体では29.3%増加する。

 海外設備投資はリーマン危機後の円高もあり、13年にかけて大きく増加した。その後は円安や中国の成長鈍化などで停滞した。19年以降は米中対立やコロナ禍により国内外で投資は減少したが、海外投資は21年度にいち早く持ち直し、22年度も大きく増加する計画。内外投資合計に対する海外設備投資比率は、非製造業が18年以降緩やかに上昇するが、製造業はおおむね横ばいとなっている。22年度計画では、製造業を中心に国内投資の増加率が海外投資を上回るため、海外設備投資比率は21年度の32.7%から31.0%へ低下する。

 カーボンニュートラルの影響について、約半数が設備入れ替えの契機となると回答し、投資喚起が期待される。長期戦略策定・開示が必要との回答も同程度みられた。また、コストは国により異なるが、海外移転の加速との回答はわずかだった。カーボンニュートラル達成時期は50年とする企業が多いが、6割が不明となっている。

 22年度の設備投資に占める脱炭素関連投資の割合は、1割未満とする企業が多い。投資規模の大きい企業ほど脱炭素割合が高い傾向があり、金額ベースに引き直すと13%、未回答会社をゼロとした場合は8%となる。設備投資の内容は省エネ、再エネが多いが、2割の企業がEV関連を計画している。

 22年度の研究開発に占める脱炭素関連は1割未満とする企業が多数を占めるが、脱炭素インフラを担う一般機械やEV関連開発を進める自動車などで脱炭素ウエートが高く、金額ベースでは最大24%と設備投資の脱炭素割合を上回る。研究開発の内容は省エネ、再エネのほかEVや資源循環が多いが、水素関連も一般機械など2割の企業が計画している。

 カーボンニュートラル達成に必要な資金総額に関する回答をマクロベースの大企業の金額に換算すると、30年までの間に、研究開発費は1年あたり約4兆円が必要となる。技術実装に向けたカーボンニュートラル関連設備投資は、50年にかけて1年あたり約6兆円に増やす必要があるとの結果となった。なお、累計では、50年まで研究開発費は約100兆円、設備投資は約160兆円が必要となる。

 研究開発費は、21年度は化学、電気機械などウエートで9割近くを占める4産業で揃って増加し、全体では4.8%の増加に転じた。22年度は、7.9%増加の計画。輸送用機械が市場回復を見据えた新モデル開発やCASE、脱炭素関連を中心に増加するほか、化学は新薬開発や電子材料などで増加する。電気機械は、電子部品の高度化・省エネ化や自動車向けなどで2桁増を見込む。

 情報化投資は、21年度に10.1%増加した。非製造業で投資見送りなどから3.8%減少したものの、製造業では電気機械で基幹システムの大規模更新があり、26.8%増加した。22年度は、27.9%増加する。製造業では、一般機械のIoTプラットフォーム構築、輸送用機械のコネクテッド関連などデータ活用向けのほか、非製造業では小売の自動発注システムなど省人化で増加した。
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