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第554回

キヤノン(株) 専務執行役員 光学機器事業本部長 武石洋明氏


露光装置、24年もプラス成長
8年ぶりに「Canon EXPO」開催

2023/12/8

キヤノン(株) 専務執行役員 光学機器事業本部長 武石洋明氏
 キヤノン(株)(東京都大田区)の半導体露光装置事業は、高シェアを誇るi線ステッパーを主軸に展開する。近年はKrF分野でのシェア拡大も進展し、さらなる事業拡大に備えて生産体制の強化にも乗り出しており、宇都宮で新工場を目下建設中だ。インダストリアルグループを統括する武石洋明専務執行役員に足元の状況、2024年の市場見通しを伺った。

―― まずは直近の販売動向から教えて下さい。
 武石 第3四半期(1~9月)決算発表時点での、23年度(23年12月期)の半導体露光装置の販売台数見通しは、前年度の176台を上回る189台を計画する。光源別ではi線が132台(前年度実績125台)、KrFが57台(同51台)といずれも増加を見込む。これまで、当社の半導体露光装置事業はメモリー向けの事業ウエートが高かったが、昨今はロジック分野を含めて事業領域を広げることに成功しており、足元のメモリー投資の停滞も他分野でカバーできるバランスの取れた事業構造となっている。

―― 主力のi線は。
 武石 i線は、国内外で積極的な投資が行われているパワー半導体向けを中心に引き続き好調に推移している。また、レガシー投資が活況の中国向けも一部投資計画の見直しなども顧客側であるものの、総じて安定した需要が続いている。また、i線分野では先端パッケージ向けの引き合いも足元で急速に高まっている。我々は後工程向け装置を以前から市場投入しており、生成AIに関連した先端パッケージ投資拡大を追い風に、今後大きく出荷が増える見通しだ。

―― KrFは顧客カバレッジの拡大が進んでいる印象です。
 武石 KrFは従来のメモリー向けに加えて、大手ロジック顧客での採用が本格化するなど顧客と用途を拡大してきたことが、今期のプラス成長につながっている。

―― 足元と24年の半導体露光装置事業における方向性を教えて下さい。
 武石 23年は前年に部材不足や生産制約を理由に、出荷しきれなかった案件のスライド分もあったことは事実だ。24年についても、まだボトルネックとなっている部材はあるものの、おおむね正常化しつつあり、現在の受注・引き合いから考えても、引き続きプラス成長が見込める状況だ。24年は生成AIに関連した投資や年後半からはメモリー投資の再開も期待できる。

―― 生産体制の強化について。
 武石 すでに発表しているとおり、25年以降の需要増に向けて、宇都宮事業所に新工場を建設する。敷地面積は約7万m²で、投資額は約380億円を見込んでいる。25年上期の稼働開始を予定しており、生産能力は21年比で約2倍に引き上がる。新工場が立ち上がるまでの間も、グループ内のリソースをうまく活用しながら、需要増に対応していきたい。

―― 8年ぶりにプライベートイベントとなる「Canon EXPO 2023」を10月に開催しました。
 武石 例年5年おきに開催していたが、コロナ禍の影響で開催を見送っていた。今年は10月17~20日の4日間、みなとみらいのパシフィコ横浜で「Future Focused.Always.~未来の可能性を、ひろげ続けよう~」をスローガンに、製品やサービス、さらにはそれを実現する技術を紹介した。私が管掌を務めるインダストリアルグループでは、ナノインプリント半導体装置や半導体/FPD製造装置を展示して、数多くの来場者の方に当社の取り組みを知ってもらうことができた。

―― ナノインプリント装置の状況は。
 武石 10月に、ナノインプリント半導体装置「FPA-1200NZ2C」の販売開始を公表した。半導体のクリティカルレイヤー向けに加え、光学デバイス向けなどの展開も視野に入れている。先端半導体向けには、既存の最先端ロジック製造レベルの5nmノードにあたる最小線幅14nmのパターン形成が可能であり、さらにマスクを改良することで、2nmノードにあたる最小線幅10nmレベルの対応も可能だ。24年以降の業績寄与が期待できそうだ。


(聞き手・編集長 稲葉雅巳)
本紙2023年12月7日号9面 掲載

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