電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第555回

テクダイヤ(株) 代表取締役 小山真吾氏


50周年に向け新規開拓に挑戦
セブ工場で新ビジネス始動

2023/12/15

テクダイヤ(株) 代表取締役 小山真吾氏
 企業理念は「こうしましょう。」、行動指針は「TEAM非常識」というユニークな社風で知られるテクダイヤ(株)(東京都港区)は、単層セラミックコンデンサーを主力としつつ、2026年の会社設立50周年に向けて、未知との遭遇に挑み続けている。その先頭で走り続ける代表取締役の小山真吾氏に、現況、注目の新製品、新規領域への挑戦など幅広くお聞きした。

―― 通信分野に最適な単層セラミックコンデンサーですが、足元の市況感は。
 小山 23年はマーケットが停滞し、需要は弱含んでいる。納入先で在庫がだぶついており、かつ5Gだからこそ活用できる事案がまだ少ないことも普及の足かせになっている。ただしChatGPTの伸長や自動運転などに向けて、データ伝送速度の高速化などの利点から、24年度からは伸長に転じるとみている。そこで当社では、まず5G/beyond5Gで先行する欧米などの海外市場ニーズに対応すべく、新製品を開発し、上市している。

―― 新製品とはどのようなものですか。
 小山 5Gスモールセルやマクロセルに最適な「可変容量コンデンサー」、高周波向け用途に適する「クリスタルキャパシタ」、そしてGaNなどハイパワーデバイスに対応する「高耐圧コンデンサー」だ。可変容量コンデンサーは、移相器に実装して、アレイアンテナ上の個々のアンテナエレメントから発せられる電波の位相を制御することができる。また、半導体バラクタに比べて信号に与える非線形効果が小さく、相互変調歪みを約100分の1に抑えることで、通信品質向上を実現する。
 クリスタルキャパシタはサファイアベースの表面実装型コンデンサーだ。0.6×0.3mmサイズの場合、従来は0.25pFが最小容量値だったのに対し、クリスタルキャパシタは、0.04pFまで小さくすることができる画期的な製品だ。
 比誘電率4200、温度特性X7Rの材料で作られた「高耐圧コンデンサー」は、通信基地局の中に入る増幅器でのデカップリング効果に最適だ。比誘電率1600のコンデンサーと比較すると、容量値100pF・定格電圧50V時で、実装面積を40%削減し、0.6mm角サイズを実現。同一サイズで容量値100pFの場合、定格電圧200Vも可能だ。省スペース化、高耐圧化ニーズに応えることができる。

―― 積極展開ですね。
 小山 主力の単層セラミックコンデンサーでは、世界に先がけたニーズをキャッチするマーケティング力、それを製品化するエンジニア力を活かし、世界初の新製品を上市しながら、新たなビジネスチャンスを獲得している。一方で、こうした既存業務は社員に任せ、私自身は2年後の50周年に向けて、次の新たな何かを切り拓きたい、と新規ビジネス開拓に挑み続けている。

―― 具体的には。
 小山 例えば、23年8月から海外生産を志向する中小企業様へ、当社セブ工場の遊休スペースの貸出を開始した。セブ工場は自社工場として30年強にわたり半導体部品の製造を行っているため、クリーンルーム環境や各種インフラも完備され、フィリピン経済特区PEZA登録工場でもある。専門知識・技術を持つエンジニアが多数在籍している点も利点である。11月には、医療機器に関する品質マネジメントシステム規格ISO13485認証を取得する。分娩監視装置のOEMサービスを展開している。
 一方、別の事案では、当社の半導体製造用ディスペンサーノズルで培った技術を応用した、3Dプリンター用精密ノズル「kaika」において「耐摩耗ノズル」も上市した。高硬度フィラメント造形時のノズル摩耗による造形精度悪化を解決できる点が最大の特徴である。10月に数量限定の先行販売を実施し、X(旧Twitter)を中心に反響を呼んでいる。

―― kaikaで異業種にも裾野が広がっています。
 小山 未知との遭遇ともいえる出会いの連続だ。例えば、次世代ハイブリッドドローンの共同開発事案や、車載部品・バッテリーをはじめとした、自動車・モビリティー分野への参入など、産業用3Dプリンティングでのkaika活用も進んでいる。また、ドイツのBellaseno社とは乳がん患者向けの3Dプリンティングで編み込んだインプラントでパートナーシップを組む展開となり、当社が日本での販売代理店権も委託されることになった。日本法人立ち上げも当社が担う予定であり、宇宙旅行ができるほどの新ビジネスに拡大させたいと将来像を描いている。その他にもあらゆる可能性に遭遇する毎日だ。

―― 今後の展望について。
 小山 従来のpFレベルの単層セラミックコンデンサーに加えて、nFレベルと桁違いの超高容量値で、ワイヤーボンディング可能なコンデンサー販売に向けて、米国企業と合意するなど、さらなる新規ビジネス開発に挑んでいく。また、前述のとおり長期を見据えた次なるビジネス確立に向けて、貪欲に挑み続けていく。業績面では23年度は売上高22億円程度にとどまると予想しているが、24年度には在庫問題も解消するとみており、25億円を目指す。そして、「TEAM非常識」で、50周年を迎える26年には売上高50億円達成を見据えていく。


(聞き手・高澤里美記者)
本紙2023年12月14日号12面 掲載

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