電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第556回

NXPジャパン(株) 代表取締役社長 和島正幸氏


「IoTにNXPあり」の未来
車載で存在感、非車載も強化へ

2023/12/22

NXPジャパン(株) 代表取締役社長 和島正幸氏
 豊富な半導体製品群で世界をリードするNXP Semiconductors(オランダ・アイントホーフェン)は、世界がコロナ禍にあった2021年に売上高111億ドル、22年に売上高132億ドルと右肩上がりの堅実な成長を継続している。日本法人であるNXPジャパン(株)(東京都渋谷区)の代表取締役社長である和島正幸氏に、現況、日本でのビジネス展望など幅広くお聞きした。

―― 業績が好調ですね。
 和島 当社は、自動車、産業&IoT、モバイル、通信インフラという4つのセグメントで事業展開しており、直近の23年7~9月期も前四半期比増収増益の売上高34億ドル、営業利益(GAAPベース)10億ドルを達成した。通信インフラ以外は前四半期比で増収を確保した。当社売上高の5割強を占める自動車需要はxEV(電動車)向けを筆頭に堅調である。ただし、全体的には市場は軟化している印象だ。半導体の供給不足に端を発し、流通が複雑になっていることも一因とみる。

―― 具体的には。
 和島 自動車の生産が堅調であっても、全体的に流通の過程でチャネル在庫が少し過多になっているため、このチャネル在庫が解消するまで真の意味での需給バランスが見えづらい。NXPは全社でチャネル在庫管理を徹底しており、直近は1.5~1.6カ月の範囲でチャネル在庫をコントロールできている。このため実需がダイレクトに把握でき、当社が長期目標とする在庫2.5カ月の指標に沿って、工場稼働率や生産量も最適な状態で運用できている。足元では自動車市場の需給バランスは整いつつあり、自動車向けでは24年は伸長の継続が期待できると見通している。

―― 車載向けでの強さの秘訣は。
 和島 車載マイクロコントローラー/プロセッサー「S32シリーズ」におけるローエンドからハイエンドまでカバーする豊富な製品群、ADAS関連のレーダー製品などからジャイロセンサーなどまで随所に必要とされるセンサー製品群、そして電源用アナログ製品、IVN(車載ネットワーク)用製品まで、全アプリケーションを網羅し、自動車の電動化、自動運転に応え得る高信頼な製品群が揃っていること。そして、OEMによって異なるECUの統合アーキテクチャーを的確にサポートできるポートフォリオの解を提供できること。さらに、セキュリティーでの長年の実績、および自社の生産工場と外部委託を組み合わせた長期安定供給も顧客の安心感につながっている。

―― 生産体制は。
 和島 NXPでは内製と外部への生産委託が半々である。前工程の内製分は、米テキサス州オースティンの2工場(銅配線ベースのATMC、アルミ配線ベースのオーク・ヒル工場)、米アリゾナ州チャンドラーの2工場(アルミ配線ベースのチャンドラー工場、GaNベースのECHO工場)、オランダのネイメーヘン工場(アルミ配線ベース)、シンガポールのSSMC工場(アルミニウム配線ベース)が担う。そのほかは大手ファンドリー企業へ生産を委託している。後工程の自社工場は、中国・天津、台湾、バンコク、クアラルンプールで担っている。当社では外部への委託も含め、BCPの観点からデュアルファブ化を推進している。

―― 日本での現況は。
 和島 NXPの売上高は金額ベースで自動車向けが半数、残りの半数を産業&IoT、モバイル、通信インフラが3分の1ずつ占める構成である。全社と比較すると日本では自動車向けの売上高が大きい。さらにFAなどの産業機器分野に強い企業も多く、車載グレードの当社製品群が活きるポテンシャルが高い。また、当社には車載向け以外にも近距離無線通信用NFC(Near Field Communication)、UWB(広帯域)無線通信技術、EdgeLock Assuranceプログラムに基づくセキュリティー製品など、長い歴史を持つユニークな製品群がある。こうした製品群も日本の産機、IoT関連を手がける方々に貢献できるとみる。

―― 日本における拡販戦略について。
 和島 従来どおり、代理店契約を結ぶ各商社経由の体制は今後も維持する方針だ。加えて、当社独自に主要なお客様へ直接出向いて展示会を開催し、各社のニーズに合わせた製品群を選りすぐって直接紹介する活動も行っている。当社製品に直接触れていただく好機にもなっている。

―― 今後に向けた展望を。
 和島 あらゆるものをネットワークにつなげてインテリジェント化し、よりスマートな世界を実現するセキュアコネクションを構築することは当社の使命だと自負している。今後はIoTでつながるデバイスも増え続ける。当社には約30年におよぶセキュリティーでの豊富な知見もあり、脆弱ポイントも熟知している。IoT化を促進していく存在でありたい。


(聞き手・高澤里美記者)
本紙2023年12月21日号3面 掲載

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