電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第559回

(株)SCREENセミコンダクターソリューションズ 代表取締役 社長執行役員 後藤正人氏


投資減速のなかでも成長持続
滋賀新棟などで需要回復に備え

2024/1/19

(株)SCREENセミコンダクターソリューションズ <br />代表取締役 社長執行役員 後藤正人氏
 SCREENホールディングスグループで半導体製造装置事業を担当する(株)SCREENセミコンダクターソリューションズ(京都市上京区)は、半導体設備投資需要の低調に見舞われたなかにあってもプラス成長を続けている。次の市場成長フェーズに向けて、彦根事業所(滋賀県彦根市)における新棟建設など生産体制増強にも余念がない。代表取締役 社長執行役員の後藤正人氏に、市場見通しや同社の取り組みなどについて聞いた。

―― 2023年度は増収増益を達成できる見通しだ。
 後藤 売上高を前年度比12%増の4160億円、営業利益を同21%増の930億円と予想している。上期は投資が大きく冷え込んだメモリー向けの比率が低かった一方、主力の大手ファンドリー向けは投資縮小があったもののファンドリー全体としては底堅く推移した。また、パワーデバイス向けも堅調だったほか、中国の成熟ノード向けが活発で、業績を支えている。

―― 滋賀事業所を中心に能力の増強を進めている。
23年末に竣工したS3-5
23年末に竣工したS3-5
 後藤 滋賀事業所では23年1月に操業した「S3-4(エス・キューブフォー)」に続き、同年末に「S3-5(エス・キューブファイブ)」を竣工させた。1月から操業を開始する。また、国内グループ会社でも装置部品の生産増強を行い、事業全体の生産能力を(S3-4稼働後から比較して)約20%向上する。半導体設備投資が高どまりした前期に供給が追いつかず、顧客ニーズに対応しきれなかった。その反省を踏まえ、次の投資拡大期の際に対応可能な生産体制を整備する。

―― さらなる増強に向けた方針は。
 後藤 足元の能力増強により、24~26年度の次期中期経営計画期間中に想定される需要には対応可能な見通しだ。半導体市場は30年に向けてさらに拡大が見込まれており、必要があればさらなる増強を検討する。また、当面は滋賀事業所をコアの製造拠点とする方針に変更はないが、こちらも市場環境に変化があれば対応を考えていく。

―― 中国向けの販売比率が拡大している。
 後藤 中国での半導体国産化の機運が拡大していることを背景に、23年7~9月期の中国向け売上比率は50%を超えた。23年度通期も約40%になる見通しで、前年度比では2倍以上の成長となる。今後も、中国市場のポテンシャルは高水準で推移していくとみている。一方で地政学リスクへの対応のため、欧米における半導体工場新設の動きも活発化している。これにより、欧米向けの販売も拡大していくと予想している。

―― 国内での半導体投資に対しては。
 後藤 北海道や熊本の動きは国策プロジェクトという側面もあり、積極的に支援していく方針だ。工場の稼働に向けて装置導入の準備を進めていくほか、必要があればサービス体制の拡充にも取り組んでいく。

―― 製品での取り組みを。まず洗浄装置から。
 後藤 洗浄装置は最先端プロセスの微細化に対応し続けることに加え、DRAMの3D化など、進化を続けるメモリー分野の開拓にも継続して取り組んでいく。また、市場が拡大しているSiCやGaNなどのパワーデバイス向けにも事業拡大を図っている。当社は8インチウエハー以下にフォーカスした「FRONTIER」製品群を10年以上展開している。その実績を活かして、8インチ化など投資が見込めるSiCやGaNなどのパワー系のユーザー、GaAsなどの化合物半導体系のユーザーの採用拡大を目指している。

―― 洗浄装置における優位性の確保に向けた施策を。
 後藤 当社はベルギーのimecや米IBM、アプライド マテリアルズらと密接な関係を構築しており、国策プロジェクトも活用しながら最先端の開発を推進していく。洗浄プロセスはデバイス製造で欠かせない存在となっており、優位性を訴求していく。レガシー領域においては競争が激化しているが、ノウハウのブラックボックス化などで競争優位を確保したい。

―― コーターデベロッパーでも新機種を投入した。
 後藤 23年11月に、高生産性と省フットプリントを両立した新モデルを発売した。コーターデベロッパーは収益性や工法の改善により、従来の課題をクリアした。事業黒字化にめどが立ったため、競合のキャッチアップを目指す。

―― 後工程向けの装置展開も進んでいる。
 後藤 社内グループ内で先端パッケージ向け直接描画装置やスリット式塗布装置、ウエット処理装置が展開されている。グループで連携し、後工程領域に向けても取り組んでいく。

―― ポストセールスビジネスの展開について。
 後藤 ポストセールスの拡大は注力テーマの1つであり、サービス拠点の拡充を通じて体制強化を図っている。23年6月、熊本空港近くにグローバルトレーニングセンターを設置した。自社エンジニアの教育を通じたサービス体制強化に加え、顧客の研修にも対応する。海外サービス拠点との連携も強化して、グローバルでサービス力を引き上げていく。

―― 人材採用についての取り組みを。
 後藤 事業拡大に向けて、人材の獲得は非常に重要だ。SEMICON Japanでのアピールや、SEAJが実施する合同説明会に参画するといった活動を行っている。新卒採用において、まず半導体業界を知ってもらい、イメージアップを図ることが大切だと考えている。京都府や滋賀県の大学との連携や高等専門学校での出前講義などにも取り組んでいる。

―― 次期中計に向けた方向性を。
 後藤 現中計期間では想定よりも高い成長が続いており、最終年度である23年度の見通しは4年前の当初計画から上ぶれている。24年度にスタートする次期中計においても、成長フェーズが続くものと予想している。
 当社では生産能力の拡充をはじめとし、次なる成長に向けた準備を進めてきた。次期中計の詳細はグループで策定中だが、当社においては半導体の最先端プロセスの進化に遅れないよう研究開発を推進していく。加えて、次の成長に向けた準備として将来を担う人材の採用と育成を着実に進めていきたい。


(聞き手・副編集長 中村剛)
本紙2024年1月18日号1面 掲載

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