商業施設新聞
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第420回

イオンリテール(株) 執行役員 SC本部長 簑原邦明氏


そよら事業、年5施設前後の開発を推進
3大都市圏や福井など地方でも

2024/2/27

イオンリテール(株) 執行役員 SC本部長 簑原邦明氏
 イオンリテール(株)(千葉市美浜区)は、都市型ショッピングセンター(SC)「そよら」の開発を進めている。地域に密着したSCとして利便性を追求し、利用者の支持も厚い。施設数は8施設を展開し、今後も年5施設前後の開発を目指す。一方で、ブランディングを課題として挙げ、今後注力していく。同社執行役員 SC本部長の簑原邦明氏に聞いた。

―― そよらについて。
 簑原 そよらは賃貸面積3000~5000坪程度を有し、当社の直営売り場+専門店で構成する都市型SCである。施設は24年2月期に5施設をオープンし、現在は関東2施設、東海2施設、近畿4施設の計8施設を展開している。純粋な新規開発に加え、既存店をスクラップ&ビルド(S&B)・再生(リボーン)してそよら化するなど、幅広い手法で開発を進めている状況だ。小商圏の中の高占拠型モデルと位置づけており、スーパーマーケット(SM)との親和性も高いため、足元商圏がしっかり獲得できているモデルだと思う。

―― 足元の状況は。
 簑原 施設によって多少の差はあるものの、おおむね売上高、客数ともに想定どおりで順調に推移し、ターゲット層のお客様もしっかり獲得できている。

―― 24年2月期、一気に5施設を開業しました。狙いは。
 簑原 偶然この5施設(湘南茅ヶ崎、武蔵狭山、東岸和田、浜松西伊場、古川橋駅前)が重なったということもあるが、長くビジネスを続けてきた中で「ダイエー」「マイカル」などが仲間になり、それに伴って店舗年齢が高い店舗が増えてきた。常に若返りを図るのは必要なことなので、S&Bやリボーンなどを推進して店舗年齢の若返りに取り組んだ結果、今回の5施設になった。

―― 開発は計画どおりですか。
 簑原 ほぼ計画どおりに進んでいる。展開エリアは3大都市圏(首都圏、中京圏、近畿圏)を中心に行っているが、地方エリアは県庁所在地に近い都市を、展開場所として考えている。

―― 今後の開発は。
 簑原 24年2月期に続き、今後もそよらは新店、S&B・リボーンを含め、年5施設前後の開発を進めていきたい。

―― 25年2月期は。
 簑原 順調に進めば、5施設前後のオープンとなるだろう。今のところ、24年3月に「そよら鈴鹿白子」(三重県鈴鹿市)、春に「横浜高田」(横浜市港北区)、夏ごろに「金剛」(大阪府大阪狭山市)、「成田ニュータウン」(千葉県成田市)、「福井開発(ふくいかいほつ)」(福井市)の開業を予定。成田ニュータウンは、既存SCの「ボンベルタ成田」をリニューアルするもので、そよらとして最大規模になる。

―― S&B・リボーンなど、既存店再生の判断はどこですか。
 簑原 新店ではない、S&Bやリボーンを通じた既存店のそよら化については、その店舗が“お客さまのニーズに合っているか”を重視しており、お客さまのニーズとずれている場合は、そよら化して作り変える必要がある。また、前述の店舗年齢も一つの目安とし、30年を超える店舗年齢の店はS&B・リボーンの対象になってくる。
 現在我々が運営している従来の箱型のGMSは、比較的好立地に位置していて、自転車や徒歩での来店も多い。そういう意味で、我々が有する既存アセット・既存店の価値、立地は大きな財産である。これを最大限活かし、再生して成長していくことは我々の大事な戦略だ。

―― テナントについて、展開初期から変化は。
 簑原 今のところ大きな変化はない。そよらは“日常生活で一番便利な都市生活拠点”をコンセプトに、高頻度でお客さまに利用してもらえる店舗を一つの主体として導入している。例えば飲食店ならファストフードやファミリーレストラン、カフェなどが挙げられるが、これらはそよらのコンセプトと親和性があり、お客さまからの支持も高いことから必須の機能だと思う。衣料・住居余暇は、当社の直営売り場で新しい衣料品売り場モデルを導入するなどし、コンパクトながらもニーズに合った売り場づくりを行うことで、お客さまから支持を得ている。直営売り場と専門店が一緒になって考え、作っていく商業施設がそよらであり、これは小売業者である我々が行う開発だからこそできるモデルだと思う。

―― 今後の方針は。
 簑原 次のフェーズとして、専門店とともにお客さまのニーズに対応する業態開発に取り組んでいきたい。一緒に作っていくということ。直営売り場が目指すものと、お客さまのニーズが一番合うものを専門店と作るという、一歩踏み込んだ取り組みを行うことが次の成長につながる。

―― そよらのブランディングについて。
 簑原 ブランディングはそよらにおける一番の課題だと認識しており、今後積極的に取り組まなくてはいけないことの一つ。そよらをブランドとしてお客さまに信用してもらえるようになることが何よりも重要。イオンの看板が付いていてSMなどもあるので、どんな商業施設かはある程度分かってもらえるが、そよらと聞いてパッとイメージできるかというと、そこまでのブランディングはまだできていない。これは施設数とも比例していくと思うが、今後も施設は増えていくので、ブランディングにも一層力を入れ、そよらをしっかりと育てていきたい。

(聞き手・副編集長 若山智令)
商業施設新聞2534号(2024年2月20日)(1面)
 デベロッパーに聞く 次世代の商業・街づくり No.428

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