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第168回

川崎重工業(株) 常務執行役員 ロボットビジネスセンター センター長 橋本康彦氏


ウエハー搬送用が過去最高を記録
双腕ロボのレンタル事業開始

2016/4/28

川崎重工業(株) 常務執行役員 ロボットビジネスセンター センター長 橋本康彦氏
 川崎重工業(株)(神戸市中央区東川崎町1-1-3、Tel.078-371-9530)は、1969年に国産初の産業用ロボットを生産したパイオニア企業。自動車や半導体製造向けを中心に国内外のあらゆる分野で製品が採用されており、双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」など新たな取り組みも進めている。常務執行役員でロボットビジネスセンターのセンター長である橋本康彦氏に話を伺った。

―― 貴社のロボット製品について。
 橋本 溶接、組立・ハンドリング、塗装、パレタイジング、ピッキング、半導体ウエハー搬送用クリーンロボットなど、ほぼすべての種類の産業用ロボットをラインアップしている。うち半導体ウエハー搬送用ではグローバルで約5割のシェアを持ち、スポット溶接や塗装用ロボットでも高いシェアを有している。

―― 貴社の強みは。
 橋本 耐久性や精度などロボット自体の性能が優れていることはもちろんだが、当社のロボット部門はシステム関連の人員の割合が高く、工場の診断から最適なロボットソリューションを導き出し、システムアップ、トレーニング、メンテナンスなど、導入診断からアフターサービスまで一貫して提供することができる。

―― 生産体制は。
 橋本 明石工場(兵庫県明石市、年産能力2万台)に加えて、中国・蘇州市にあるグループ会社「川崎精密機械(蘇州)有限公司」の敷地内にロボット生産用の新棟(延べ床面積1.1万m²)を建設し、2015年6月から稼働を開始した。中国拠点では現在、パレタイジング、アーク溶接、汎用ロボットを生産しており、17年内には年産5000台の生産体制を構築する予定だ。

―― 中国拠点の特徴は。
 橋本 工場内に当社の産業用ロボットを多数導入しており、ロボットがロボットを生産している点にある。製品自体もロボットで生産しやすいように設計を見直したもので、ロボット生産ならではの精度の優れた高品質な製品となっている。そのため当社では中国・蘇州工場での生産品を「メードinチャイナ」ではなく、「メードbyロボット」の製品と位置づけている。

―― ロボット製品の需要動向は。
 橋本 直近の15年度(16年3月期)は成長の年であった。景気減速の傾向が見られる中国でも販売が伸長し、米国、欧州、日本、韓国などでも堅調だった。ロボットの種類・用途別で見ても全般的に堅調に推移し、半導体ウエハー搬送用に関しては過去最高の出荷台数を記録した。結果、ロボット事業全体で15年度は2桁増を達成し、16年度も2桁増を目指していきたい。

―― 電機・電子分野向けの製品について。
双腕スカラロボット「デュアロ」
双腕スカラロボット「デュアロ」
 橋本 15年6月から販売を開始した双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」の提案を強化しており、現在、引き合いを多数いただいている。デュアロは人間の手や腕の独立した動きを再現できる双腕構成のロボットで、作業者1人分のスペースにそのまま収まり、人と安全に共同作業ができる。作業者がロボットのハンドまたは工具を直接手に持って動かし、その動作をロボットに記憶させる「ダイレクトティーチ」にも対応しており、短期間での導入が可能であることに加え、ロボットはキャスター付きの台(コントローラー内蔵)の上に設置されており、導入後の移動も簡易に行える。
 現在、基板のねじ締め、部品挿入、ボンディング、検査装置へのローディングといった電機・電子分野をはじめ、自動車、機械加工、食品、医薬関連などでもお話をいただいており、国内市場ではデュアロを16年度の戦略商品に据えていきたい。

―― 新たな取り組みを始めましたね。
 橋本 デュアロの派遣(レンタル)事業を4月から開始した。レンタルで活用していただくことで、設備投資に伴う多額の初期投資や、固定資産の計上も必要がないことに加え、生産変動に対する柔軟性も高めることができる。また、これまでロボットを活用したことがない方に対して、その効果をレンタルで試していただく意味合いもある。こうしたことは、短期間で導入が可能で、設置、移動、ティーチングが簡易なデュアロだからこそできる取り組みだ。

―― 今後の抱負をお聞かせ下さい。
 橋本 ロボット事業を今後展開していくうえで「高齢化社会に向けてのロボット」という視点を持っている。これには大きく分けて3つの意味合いがあり、日本をはじめ高齢化社会が進む国では生産年齢人口が年々減少しており、その減少分をロボットでカバーするという点がまず1つ。
 2つ目は、高齢者の労働参加をサポートするために、高齢者が持てない重量物をロボットに運ばせる、目の機能を補うといった、ロボットによる高齢者支援という意味合いだ。
 3つ目が病気の高齢者を支援するための医療用ロボット。当社は医療用検査機器メーカーのシスメックス(株)と合弁で、医療用ロボットの開発を行う(株)メディカロイドを展開しており、産業用だけでなく医療用ロボットの取り組みも加速させていく。
 こういった視点から見てもロボットの持つ可能性や重要性は非常に高く、当社としても今後、ロボットで適応できる分野を拡大していきながら、これまでロボットを使ったことがない方にも活用していただけるような製品を提供していければと思う。

(聞き手・浮島哲志記者)
(本紙2016年4月28日号1面 掲載)

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