電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第230回

イビデン(株) 代表取締役社長 青木武志氏


6月から新経営体制に移行
電子事業は巻き返しに自信

2017/7/14

イビデン(株) 代表取締役社長 青木武志氏
 イビデン(株)(岐阜県大垣市神田町2-1、Tel.0584-81-3111)は、2017年6月16日付で青木武志氏が代表取締役社長に就任、新体制に移行した。青木新社長が統括するセラミック事業では、(株)デンソーと資本業務提携を発表したほか、電子事業については、MSAP(Modified Semi Additive Process)基板とFOWLP(Fan Out Wafer Level Package)対抗製品を業績回復の切り札と位置づけ、巻き返しに自信を見せる。今後の事業方針について青木新社長に聞いた。

―― 会社全体の事業方針について。
 青木 当社は今年で105年目に入るが、次の100年に向けて技術先行型の会社という特徴を生かしながら、どう運営していくかが大事だと思っている。これを実現するには、やはり人財育成に主眼を置いた会社づくりを行っていくことが非常に重要だ。

―― 竹中前社長との経営方針に違いはありますか。
 青木 もともと100年のなかで培ってきた経営理念は踏襲していくが、やはり新しい中期計画のなかでは、従来の延長線上では生きていけない部分もある。そのために、4つの開発センターの設立や研究開発費・設備投資額の増額など資本投下を強化しており、布石は打っている。

―― わかりました。電子事業の現況についてお聞かせ下さい。
 青木 ご存知のように、当社の電子事業はスマートフォン(スマホ)用マザーボードでの受注減、スマホ用パッケージ基板でのFOWLPの登場により大きな打撃を受けた。ただし、スマホ用パッケージに関しては、FOWLPに対抗できるような製品を顧客側で評価を進めてもらっている。

―― FOWLP採用による影響をどこまで予見できていましたか。
 青木 もちろん、ポテンシャルのある技術として以前から注視はしていたが、正式に採用が決まったのは直前だったと認識している。

―― 対抗製品の中身は。
 青木 詳細を申し上げるのはなかなか難しいが、基板ベースでファンアウトと同等の厚みを実現することは可能で、さらにファイン度に関しても、10/10μm以細も十分に対応可能だ。さらに、FOWLPはチップファーストで、ワークはウエハータイプであるのに対し、我々が開発しているのは、当然のことながらチップラストであり、パネルサイズである。チップラストであるために、回路形成(再配線)部分の不良によるロスがなく、かつ大判パネルによってコスト的にも優位に立つことができると考えている。

―― ファンアウトは今後も広まっていきますか。
 青木 現在、量産に適用されているような大きなプロジェクトに採用されればメリットは出てくるが、それ以外のデバイスが一斉に切り替わったかというと、そうではない。やはりデメリットもある。具体的にはOSATなどを活用してデュアルソース化したい場合は大きな弊害となる。

―― MSAPマザーボードの事業についてはどうですか。
 青木 私たちにとって、MSAPの技術というのはCSPで何年も前から使っていた技術であり、決して新しいものではない。MSAPを取り入れることで基板層数の低減やファインピッチ化による基板サイズの小型化が図れ、徐々に浸透してくると見ている。
 こうした状況下、当社では16年中にマザーボードを生産する海外拠点のマレーシアと北京で、MSAP工法に対応した投資を行っている。開発および量産に入っているところだ。

―― セラミック事業では、デンソーとの資本業務提携を行いました。改めて狙いを。
 青木 デンソーとは3年前からセラミック部品の共同開発をするなどの関係にあり、技術交流を進めていた。その後、約1年前から今回の資本提携に向けた具体的な話し合いを進めてきた。EVをはじめとする環境対応車への移行に伴い、我々の高機能セラミック材料とデンソーのシステム開発力を組み合わせて、次世代の排気システムの開発を進めていく。また同時に、両社の技術を組み合わせてパワートレイン分野での協業も進めていく。

(聞き手・副編集長 稲葉雅巳)
(本紙2017年7月13日号5面 掲載)

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