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第232回

ソニーセミコンダクタソリューションズ(株) 車載事業部 事業部長 野口達夫氏


業界初の車載センサーを開発
車載用でもシェア5割狙う

2017/7/28

ソニーセミコンダクタソリューションズ(株) 車載事業部 事業部長 野口達夫氏
 ソニー(株)(東京都港区港南1-7-1、Tel.03-6748-2111)は4月12日、LEDフリッカーの抑制と高画質なHDR(High Dynamic Range)撮影を同時に実現する車載カメラ向け2.7分の1型有効245万画素のCMOSイメージセンサー「IMX390CQV」の商品化を発表し、5月からサンプル出荷を開始した。両機能を同時に実現したのは業界で初めてだ。その開発の背景や車載事業の今後の見通しをソニーセミコンダクタソリューションズ(株)車載事業部 事業部長の野口達夫氏に伺った。

―― 開発したセンサーの特徴を教えて下さい。
 野口 当社が得意とする高感度の裏面照射型CMOSイメージセンサーであり、独自の画素構造と露光方法によって、LEDフリッカー抑制機能とHDR機能を同時に利用できる。LEDは目に見えない速さで点滅を繰り返すため、一般的なCMOSイメージセンサーでLED光を撮影した場合、高い確率でちらつきが生じ、信号機や周囲の自動車のLEDランプを正しく認識できない場合がある。だが、本センサーは露光時間をLEDの点滅周期よりも長くして、LED光がはっきり映るようになっている。

―― 画素の構造に特徴があるようですね。
 野口 同じ裏面照射型でも、民生向けとは画素の構造が異なる。構造の詳細はお話しできないが、この構造を採用しているのはまだ世界で当社だけ。これがLEDフリッカー抑制機能とHDR機能両方の実現に有効に作用している。ちなみに、両機能を同時に利用するために、本センサーでは後段の処理を必要としない。あくまでセンサー単体で機能を実現している。

―― 2018年3月から量産出荷の予定ですね。
 野口 ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの熊本テクノロジーセンターで量産する予定だ。画素構造が異なるからといって、追加投資が必要になるわけではない。サンプル出荷を始めて間もないが、すでに顧客からはポジティブなフィードバックをいただいている。

―― 開発までの経緯について。
 野口 何よりも、15~16年度にかけて「車載事業部」をしっかり組織化できたことが大きい。当社はこれまでも、顧客からの要望に応じて車載用にイメージセンサーを供給してきたが、それらは車載用に機能的に似ている監視・セキュリティー用の製品がメーンだった。だが、車載に特化したセンサーを開発するとなると、セーフティー機能のビルトインなど、様々なレギュレーションをクリアする必要がある。これに対応できる体制に見直しができたことが、完成度の高いセンサーの開発成功に直結している。
 ノイズ削減や高感度化など、もともとソニーが保有しているセンサー技術は質が高い。料理に例えるなら、組織を整備したことで、こうした良質な素材を用いて車載に特化した料理の仕方を考えることができるようになった。

―― 今後の戦略は。
 野口 まずは開発したセンサーをしっかり拡販することに注力する。ビューイング用途でも新たなニーズがあるとみている。
 拡販に向けて顧客対応力も高めている。国内は厚木テクノロジーセンターで対応しているが、サンノゼに厚木の拡張機能として米国人を中心とした顧客サポート体制を構築した。欧州でもソニーヨーロッパの独シュツットガルトに同様のチームを発足している。

―― ToF(Time of Flight)など新技術を車載用に活用する計画は。
 野口 ToFは近距離の測距に向くため、まずは民生用がスタートになる。ToFに限らず、顧客からの要望や提案を踏まえて、必要な技術は社内からも含めてどんどん取り込む。必要なのは「ソリューションを提供すること」だ。

―― 今後の抱負を。
 野口 社内では後発の事業部だが、他社には真似できない車載用センサーを開発し続け、高解像度化や機能別のポートフォリオの充実を図っていく。モバイル市場での高いシェアを見習い、車載用でも世界シェア5割を獲得できる製品づくりを進めていきたい。

(聞き手・編集長 津村明宏)
(本紙2017年7月27日号2面 掲載)

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