電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第454回

東京エレクトロン(株) 執行役員 ESBU ジェネラルマネージャー 和久井勇氏/ESBU エッチングシステム事業企画部部長 樋口公博氏


変化に対応した技術革新を継続
新プラットフォームを市場投入

2021/12/10

(和久井勇氏
和久井勇氏
樋口公博氏
樋口公博氏
 東京エレクトロン(株)の2021年7~9月期におけるSPE部門の売上高は、前年同期比41.1%増の4678億円となった。地域別の売上高を見ると、中国市場が6四半期連続で最大セグメントとなり、売上高は同37.5%増の1088億円(構成比率は23.3%)としている。
 データセンター投資の加速など、デジタルシフトの進展に伴い、先端からレガシーノードの幅広い世代のロジックやメモリーの需要が急増しており、21年のWFE市場は5割に迫る成長が予想されている。
 同社ではこれら事業環境を反映するとともに、さらなる事業機会の取り込みを見据え、通期のSPE部門の売上高を8月時点の予想から470億円増額となる、1兆8400億円へ上方修正している。
 執行役員 ESBU ジェネラルマネージャーの和久井勇氏、ESBU エッチングシステム事業企画部部長 樋口公博氏にエッチング装置事業の概況、成長戦略などについて話を伺った。

―― エッチング装置事業の概況について。
 和久井 WFEの旺盛な設備投資を受け、エッチング装置の売り上げも大きく拡大している。市場が拡大している中国市場においては、以前から段階的に人員の増強を進めてきており、今後も引き続き販売・サポート体制の強化に努めていく。アプリケーション別では、3D-NANDのワードライン分離(スリット工程)などをはじめ、POR(Process of Record:顧客ラインにおける装置採用認定)の獲得も順調に進んでいる。

―― 主要アプリケーション別の成長戦略は。
 和久井 例えば、3D-NANDでは、複数段に加工を分けることでさらなる高積層化が進み、アスペクト比が70:1程度への対応が求められるようになってきている。加えて、生産性の両立も求められることから、さらなる技術革新が不可欠となる。なお、マルチレベルコンタクトではすでに圧倒的なシェアを有しており、今後もトップシェアを堅持していく。チャネル工程向けには新たな装置の開発を進めているところだ。
 DRAMでは、従来の2D構造から3次元構造へと進化していく場合、3D-NANDと同様に高アスペクト比化に対応したエッチング性能が必要とされる。3次元化の継続により、エッチング市場は引き続き拡大していくと見込んでいる。

―― 高アスペクト比エッチングに対応する貴社の技術の特徴は。
 樋口 当社では、独自の「イオン垂直化技術」により、高アスペクト比エッチングにおける正確な加工制御を実現している。同技術では、プラズマエッチングのイオンの入射角を垂直にするため、イオンを引き込むRF(高周波電力)を(1)低周波化、(2)高電力化、(3)パルス化することで最適なエッチングを実現する。今後のさらなる高アスペクト比化に対応していく。

―― ロジックにおける戦略について。
 和久井 ロジックでは、複雑な構造はメモリーと同じだが、細かな加工性能、異種膜に対する選択性が求められている。GAA(Gate All Around)におけるナノワイヤー/ナノシートの形成ではガスケミカルエッチング装置の採用拡大が見込まれるが、当社ではすでに装置の増産体制を整えている。

―― 貴社では、1月に次世代エッチング装置向けの新プラットフォーム「Episode UL」の販売開始を発表されました。
 和久井 「Episode UL」は、ニーズに合わせて4/6/10/12チャンバーをフレキシブルに選択することが可能で、適用工程に応じて柔軟にレイアウトすることができる。
 既存のプラットフォーム「Tactras」で定評のある水平対向設計を採用しており、クリーンルームエリア、用力エリアの両方でフットプリントを大幅に削減した。例えば、120チャンバー構成で比較すると、Episode ULではフットプリントを半分以下にまで削減することが可能だ。
 また、搬送系やプロセスモジュールに複数のセンサーや高速制御システムを搭載している。独自のスマートツール機能を使用した解析により、自律プロセス制御を可能としている。さらに、ツールヘルスモニターや自動でのパーツ交換機能を搭載することで、メンテナンス性の向上も実現している。すでに一部のお客様から受注をいただいており、「Episode UL」を採用した装置の生産がスタートしている。22年にはお客様の量産ラインでの稼働が始まっていくと期待している。

―― 9月に「宮城技術革新センター」が竣工しました。
 樋口 同センターはパートナー企業とのラボエリア、オープンイノベーションエリア、顧客のトレーニングセンターの3つの機能を備えている。パートナー企業との共創により、高効率化や低環境負荷技術など、革新的な装置技術を創出するとともに、さらなる生産性の向上に向けた取り組みを推進する。さらに、世界最高水準のトレーニングを提供することで、お客様の現場力向上に貢献していく。


(聞き手・清水聡記者)
本紙2021年12月9日号13面 掲載

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