電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第460回

日本航空電子工業(株) 代表取締役社長 小野原勉氏


需要強含みで供給逼迫続く
25年度に売上3000億円へ

2022/1/28

日本航空電子工業(株) 代表取締役社長 小野原勉氏に
 コネクターの需給逼迫が続いた2021年。年を越しても依然、受注先行の状況にあり、各社フル稼働の活況が続く。コネクター最大手の日本航空電子工業(株)の直近の業績は大幅な増収増益で推移している。21年度(22年3月期)通期業績も21年10月に上方修正し、全社売上高2270億円、営業利益185億円を見通している。代表取締役社長の小野原勉氏に21年の総括、需給逼迫への対応策、中長期に向けた方向性、22年の展望などを幅広く聞いた。

―― 21年の総括から。
 小野原 20年7月以降、コネクター需要は強含みで推移し続けており、受注残が依然として高水準の状況だ(21年12月後半時点)。20年度から生産体制の強化を進め、21年後半になり車載向けは受注残が解消できる方向にあるものの、産業機器向け受注は強含みが続いている。ただし、多方面から受注をいただいていることから、サプライチェーンに滞留在庫が生じていないかを注視している。22年も当面、需給逼迫が継続するが、どこかで調整が入る可能性があるだろう。

―― 増産は必須ですね。
 小野原 ご指摘のとおり、足元の受注残対応は最優先であり鋭意増強を進めている。フィリピン、メキシコを中心に海外生産拠点では自動機組立化を順次進め、ケーブルハーネス生産本数を21年度から23年度にかけて約30%拡大する予定だ。なかでも大きな挑戦となったのは、20年度にティファナ工場(メキシコ)で生産する車載エアバッグ用スクイブコネクターのケーブルハーネスについて全自動組立機を導入したことだった。コロナ禍で海外出張ができないなか、オンライン環境を活用し、リモートで現地とつないで、初めてケーブルハーネスの全自動機設置に成功した案件となった。

―― 他拠点への波及は。
 小野原 もちろん他の拠点にも広げていく。ただし、マニュアルがあればできるほど簡単なものではなく、各拠点のエンジニア力を要する。こうした観点から、次は車載センシングカメラ用コネクターの組立を担うフィリピン工場において、ハーネス生産の省人化に加え、自動画像検査装置など新たな自動化も組み合わせた新ラインの導入に取り組んでいる。品質不良ゼロの量産体制を確立していく。なお、可能な限り現地生産を志向しており、欧州拠点など、サプライチェーン最適化の検討を続けている。

―― コネクターの生産については。
 小野原 国内の弘前工場で携帯機器向けの小型・高密度・高精度な最先端製品、車載用各種コネクターなどの生産を行ってきた。受注残がある状況下、弘前工場がフル稼働となったことから、山形工場にも最先端の工程を設備移管して両拠点でバランスを取りながら量産対応できる体制を整えた。さらにサプライチェーンの分断対策も兼ねて生産の多拠点化を図るべく、台湾拠点でも小型高密度コネクターの生産を担えるようにした。ただ、こうした直近の増産対応に加え、中長期を見据えてものづくり手法の転換も進めていく方針だ。

―― ものづくり手法の転換とは。
 小野原 設備の設置面積を省スペース化し、小型で高効率な機械を動かす。つまり、省設備で自動化していくというプロジェクトを開始している。実現できれば、同じ敷地面積内でフレキシブルに能力増強が図れたり、既存能力維持であれば現状より少ないスペースで事足りることになる。どれだけ効率的なものづくりにチャレンジできるかを検証しながら変革を進めていきたい。

―― 市場別の状況について、まずは車載向けから。
 小野原 車載向けではADAS、EV(電気自動車)向けを強化している。ADAS向けでは、欧州を中心に最近は日本でも車載カメラシステムのフロント、リアへの標準搭載化が進み、かつビューイングカメラから検知・認識・判断を担う高解像度センシングカメラへ需要はシフトしている。そのため、カメラとECU間の高速伝送は必須であり、LVDS信号の1.5Gbps対応コネクター(MX55シリーズ)やLVDS/GVIFの4.8Gbps対応コネクター(MX68シリーズ)などハイエンド品が好調に推移している。

―― EV関連では。
 小野原 大電流・高電圧対応コネクターやEV充電用コネクター需要が欧州、中国、北米など世界的に高まっている。大電流・高電圧対応コネクターでは、当社が長年新幹線などの鉄道車両向けで培ってきた技術的蓄積が活かせており、拡販も順調に進んでいる。また、EV充電用では、すでに急速充電方式CHAdeMO(チャデモ)対応コネクターや、欧州向けでは欧州規格CCS Type2対応の充電用プラグ「KW04シリーズ」などを展開中である。中国でも普及が進んでいることから、既存の昭島事業所に加え、中国での現地生産も開始している。

―― 新ブランドも立ち上げられました。
 小野原 以前からUIS事業の「FLEXCONVERT」や小型アンテナの「WaveConnect」という技術ブランドを展開していたが、その一環としてEV充電用コネクターで21年10月に新ブランド「Powerlance」を立ち上げた。製品・技術のブランド化はお客様への認知度向上、および当社社員のモチベーション向上を目的としている。業界内で認知され、広く浸透していくことを期待する。

―― もう1つの主軸である携帯機器向けは。
 小野原 数字的には減収気味だが、これは従来のビジネスで一部需要が減少するものがあるためで、内容的には新規案件を含め伸びているものもある。現在の携帯端末向けでは0.35mmピッチ品が主流だが、徐々に0.3mmピッチ品に切り替わっている。足元はクリスマス商戦需要もあり伸長しているが、22年1月以降の状況は見極め中だ。5G基地局向けは国内メーカー向けを中心に堅調に推移している。

―― 5G以降に向けた取り組みについては。
 小野原 5G以降では機器の仕様、通信規格変更など高速伝送方式への対応、製品力強化が試されるステージになる。当社にとってもチャレンジになるだろう。また、当社技術だけでは立ち行かないケースも増えてくる。そのため、協力できるパートナーと連携しながら技術レベルを高めていきたい。すでに東京大学生産技術研究所と19年春から産学連携研究協力協定を締結し、包括的な連携推進を始めている。

―― 22年を含め今後の展望を。
 小野原 一時的な調整局面は予想されるものの、22年のコネクター需要は引き続き堅調に推移することが予想される。当社としては、前述のとおり必要に応じた生産能力の増強を行いながら、先々を見据えた効率化も同時に進めていく。中長期的には、25年度売上高3000億円、経常利益300億円の達成に向けて、主力3事業(コネクター、UIS、航機)での成長、および新領域の確立を目指す。技術開発力、ものづくりという当社の強みを最大限に発揮し、「つなぐ技術で価値創造」を実現していく。

(聞き手・高澤里美記者)
本紙2022年1月27日号1面 掲載

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