電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第466回

(株)メイコー 代表取締役社長 名屋佑一郎氏


FCBGA基板に参入
山形に第2本社構想も

2022/3/11

(株)メイコー 代表取締役社長 名屋佑一郎氏
 国内リジッド基板メーカートップの(株)メイコーは、DX/GX化の波に乗り主力の基板事業が好調だ。2021年度(22年3月期)通期業績は過去最高を更新し、国内では大型の新工場建設に踏み切る。車載基板、スマートフォン(スマホ)基板に次ぐ、第3の柱として半導体パッケージ基板市場にも本格参入する。足元の市況や22年度以降のビジネス展開について名屋佑一郎社長に聞いた。

―― 足元の市況感は。
 名屋 21年11月以降、それまで好調であった車載基板用途の受注に一服感が出始め、現在もその動きが継続している。もともと部品不足を背景に顧客の先行発注懸念もあったので、現状にそれほど悲観しているわけではない。従来の経験からいくと、5月以降は回復傾向に入るとみている。また、スマホ用途では中華圏の需要が低迷している。しかし、韓国系端末メーカーの需要は旺盛で、通期見通しに大きな乖離はない。一方で、AI家電などの需要は堅調に推移している。国内外の拠点もフル稼働ではないが、高水準の操業度を維持している。

―― 通期業績を引き上げました。
 名屋 車載基板は足元で調整がみられるものの、依然高水準の受注残を抱えていることから大幅な下ぶれ懸念はないとみており、上方修正後の売上高1450億円、営業利益120億円を堅持する。過去最高の業績更新を目指す。

―― 国内で大型工場建設に踏み切ります。
 名屋 進出地は山形県天童市になる。現在の山形工場(山形県河北町)から車で10分程度の場所で、まずは車載向けの工場棟を近々にも着工する。稼働は23年5月ごろからを見込む。

―― 山形新工場の投資計画を公表しました。
 名屋 総額で200億円以上になるだろう。最先端の車載基板の量産工場だけではなく、基板製造技術の開発センターを設立し、さらに自動化設備の開発・製造も手がけていく。

―― FCBGA基板にも参入を決めました。
 名屋 今後の半導体市場の拡大をみれば参入するタイミングとみている。車載用途にも高性能な半導体が採用されていくとみており、最先端のサーバー用CPU向けではないものの、先端のロジック向けを中心に、PBGAやFCBGA向けのパッケージ基板を製造していく。そのため、現在は石巻工場(宮城県石巻市)内に60億円を投じてSAP(セミアディティブプロセス)対応の製造ラインを導入中だ。まずはここで試作・量産を手がける。8月ごろの試運転開始を目指す。

―― 今後の投資水準について。
 名屋 21年度通期投資額は、期初計画で100億円を見込んでいたが120億円に引き上げている。山形新工場の投資を見直したことやFCBGA基板の量産ライン構築などを考えると、中長期的には年間200億円水準とする可能性もある。

―― 22年度の事業展望を教えて下さい。
 名屋 新型コロナの再拡大懸念や中国での消費低迷など、まだまだ不透明要因があるため確実なことは言えないが、少なくとも21年度業績以上の成長を目指す。半導体など電子部品の不足が解消されれば、車生産の回復も見込まれ、ビルドアップ基板などの先端基板やモジュール基板などの売上増も期待できる。

―― 今後の見通しは。
 名屋 今春に中期経営計画を公表する予定だ。今後は、営業利益率10%以上を目指す方針で、ROIC重視の考え方を徹底していく。車載基板やスマホ基板に加えて、AI家電向けなどの様々な基板も手がけているが、今後さらにモジュール・パッケージ基板分野を強化し、新しい柱を立てていきたい。EMS事業も中長期的には倍増を目指す。1つのアプリケーションに特化する戦略ではなく、うまくバランスをとっていきたい。
 また、効率性を考えると品質保証や研究開発機能などは最新の工場の近くにある方がよい。このため、経理・営業などの首都圏に必要な部門は現本社に残すが、それ以外の本社機能を第2本社として山形新工場に移すことも検討していく。

(聞き手・特別編集委員 野村和広)
本紙2022年3月10日号5面 掲載

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