電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内
第497回

住友電工デバイス・イノベーション(株) 代表取締役社長 長谷川裕一氏


5G用GaN-HEMTで高シェア
米6インチライン年内稼働へ

2022/10/21

住友電工デバイス・イノベーション(株) 代表取締役社長 長谷川裕一氏
 住友電工デバイス・イノベーション(株)(横浜市栄区)は、無線通信や光通信を支える通信インフラ用デバイスのトップメーカーだ。5Gを実現するGaN-HEMTでは世界トップクラスのシェアを確保しており、さらなる普及に備えて増産体制を整えつつある。代表取締役社長の長谷川裕一氏に現在の取り組みや今後の展望を聞いた。

―― 通信市場の状況は。
 長谷川 まだら模様だ。5G無線基地局は踊り場にきており、世界的に需要が弱い。5GはAR/VRや自動運転、IoTといった新たな価値の提供を念頭に導入されたが、まだキラーアプリが育っておらず、何にどう役立つのか不透明であることが普及を遅らせている。一方で、光通信市場はデータセンター(DC)への投資が牽引役となり、好調が続いている。プラットフォーマーの投資は相変わらず堅調だ。しかし、民生用通信ICなど部材の不足が続いており、中国・上海エリアのロックダウンもボディーブローのように影響を及ぼしている。
 こうした状況から、当社の2022年度売上高は前年度比で横ばい~微増になると想定している。構成比は電子デバイスが6割、光デバイスが4割だが、今年度は後者の比率が少し上昇しそうだ。

―― 電子デバイスでは、5Gインフラに不可欠なGaN-HEMTで高いシェアをお持ちです。
 長谷川 GaN-HEMTを提供できる企業は3年ほど前まで当社と北米の1~2社に限られていたが、かつてシリコンLDMOSを手がけていた企業がGaN-HEMTに順次参入してきたことで、競争相手は確かに増えた。また、顧客側がデュアルソース化を要望していることも、その一因となっている。
 そうしたなか、当社は安定した量産実績、低消費電力技術、幅広い周波数帯域への対応、歪み補償と回路の親和性といった点で競合をリードしており、開発でも一歩先を行っている。

―― 具体的には。
 長谷川 現在量産しているGaN-HEMTは第7世代にあたる製品で、消費電力を従来品比5~10%削減し、グローバルサポートを可能にしている。また、開発中の第8世代品では省エネ性能をさらに高める予定で、24年後半のローンチを目指していく。

―― 5Gの今後をどう見ていますか。
 長谷川 現在利用されているサブ6(5~6GHz帯)が当面続くが、伝送容量を稼ぐため、今後、7GHzまでの利用が進んでくるとみている。当社はこれに第9世代品で対応する予定だ。一方、ミリ波対応のGaN-HEMTも開発中だが、当初の期待どおりに社会実装が進んでいくのか、現時点では判断が難しい。

―― 光通信デバイスの取り組みについて。
 長谷川 DFBレーザー(LD)や光変調器、これらを集積したEML(電界吸収型変調器集積レーザー)、フォトディテクターなどを手がけており、DFB-LDでは世界シェアの2割弱を有している。①DC内の光通信、②DC間の長距離通信が主要ターゲットであり、①にはEML、②にはコヒーレント通信用デバイスを提供している。①向けの方が売上規模が大きいが、成長率は②のほうが高い。

―― ①②の市場トレンドはどうなっていますか。
 長谷川 北米を中心として世界的にエッジDCへの投資が旺盛で、今後は中国やインドでの投資拡大に期待が持てる。デバイスに関して、①では100Gbpsから400Gbpsへの移行が進んでおり、現在当社は400G用に53GのEMLチップを提供している。次に来る800Gbpsに対応するため、100G EMLチップを開発中だ。②では省エネ+高出力化+モジュールの小型化が差別化要素になる。
 5Gに関してはインドで先ごろ政府が5Gの周波数オークションを行い、かつてない規模のインフラ投資を始めようとしており、来年以降のGaN-HEMT市場の拡大につながると期待している。

―― 生産体制や増産対応については。
 長谷川 SiCウエハーサプライヤーの1つである米ツーシックスと18年10月に戦略的協業を結び、ツーシックスのニュージャージー工場に6インチのGaN専用量産ラインを整備してきたが、22年末ごろから本格的に立ち上がる。すでにサンプルを評価中だ。このラインでは、ボリュームが必要な現世代のGaN-HEMTを生産する。
 国内の山梨事業所4インチラインでは、最先端のハイエンド品や基地局用以外の製品、開発品などを生産している。きたるべきBeyond 5Gや6Gに備えるため、新たなウエハープロセスをどう確保していくか考えていく必要がある。

―― 日本政府が半導体分野にかつてない支援策を展開しています。
 長谷川 一連の支援策は大変ありがたい。だが、GaNやSiCはRFデバイスや通信分野よりパワーデバイスへの関心の方が相対的に強いと感じる。北米や中国などではGaN-HEMTに対するファンディングが手厚く、企業単独の取り組みだけで競争力を維持するのは難しくなっていくだろう。次世代通信技術をリードしていくためにGaN RFデバイスにもこれまで以上の支援をお願いしたい。

(聞き手・特別編集委員 津村明宏)
本紙2022年10月20日号1面 掲載

サイト内検索