商業施設新聞
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第367回

一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメント 企画開発グループ長 角揚一郎氏


渋谷駅前の持続的街づくりを推進
地下空間活用しMV撮影も

2023/2/7

一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメント 企画開発グループ長 角揚一郎氏
 一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメント(東京都渋谷区)は、渋谷駅前の持続的街づくりを推進する団体で、直近ではアートを活用した取り組みなどを行い、エリアの発展に貢献する。これまでの活動や今後の方針などについて、渋谷駅前エリアマネジメント企画開発グループ長の角揚一郎氏に聞いた。

―― 組織の設立とこれまでの活動内容から。
 角 渋谷駅前エリアマネジメントは、協議会が2013年に発足し、現在の一般社団法人に組織化したのは15年だ。渋谷駅前の持続的な街づくりを推進し、賑わいや防災、国際競争力の強化などを目的にスタートした。また、渋谷の街をより良くしようという想いと、渋谷駅前で開発が数多く計画される中、街の治安や安全・安心を維持することなども目的にしている。
 活動内容は、歩行者が歩きやすいようサインを設置したり、落書きの対応、直近では渋谷駅東口地下広場の整備などを行ってきた。収入を得る事業としては広告事業と、東口地下広場での店舗貸しが現在のメーンである。

―― 広告事業の取り組みについて。
 角 ハチ公前にある「憲章ボード」と呼ばれる広告枠が最も大きく、そのほかにも東口地下広場や工事の仮囲いなどにも広告を設置している。仮囲いの広告ではアディダスがサッカー日本代表のユニフォーム発表だったり、AbemaTVのサッカーW杯中継などで利用いただいた。

―― 東口地下広場の整備は珍しい取り組みです。
 角 渋谷区道の地下道ががらんとした何もない空間になっていた。来街者が困らないよう関係行政機関と連携し、道路法の特例をいただいて都営バス定期券発売所や観光案内所などを備えたカフェ、パウダールーム・多機能トイレなどを整備した。当法人のようなエリアマネジメント団体がバス定期券販売所を整備し、行政に貸すというのは全国的にも珍しい取り組みだと思う。ここで得た事業収益は街の清掃に充てるなど、渋谷に還元される仕組みだ。

―― 地下広場を舞台にした映像も公開されました。
 角 もっと深く踏み込んだ有効活用策として、アタック・トーキョー(株)、エイベックス・エンタテインメント(株)とともに、渋谷駅東口地下広場を舞台に繰り広げる渋谷慶一郎氏による映像作品(ミュージックビデオ)「BORDERLINE(ボーダーライン)」を撮影した。渋谷の公共地下空間を使用した新たな文化プロジェクトの一環で、渋谷慶一郎氏が地元である「渋谷」のボーダーライン=地下から、世界のクリエイターが憧れる新しい音楽とカルチャーを発信すべく楽曲を制作した。アンドロイドとAIによる世界初のポップミュージックであり、さらにバレエダンサーの飯島望未氏などともコラボし、これまでにない新しいアート・カルチャーが渋谷駅から発信された。

―― 映像の反響については。
 角 イベンターやクリエイターなど、感度の高い人から色々なお話をいただいており、「東口地下広場を使いたい」「どんなことができるのか」といった相談は増えている。渋谷駅はしばらく工事が続くので、この取り組みを発展させていきたい。それには、“みんながやりたいという環境をつくる”ことが重要で、一緒にやっていこうという雰囲気を高めることが大事だと思う。こうした雰囲気を醸成するのも我々の重要な仕事だ。

―― このほか直近の取り組みは。
 角 渋谷マークシティの柱の落書き対応として、アートを施したものを始めた。今年はブラジル建国200周年ということで、ブラジル大使館と連携し、ブラジル人アーティストに落書き防止のアートを作ってもらった。

―― 渋谷の持つポテンシャルについて。
 角 渋谷から新しいものを生み出そうとする人、街を良くしようとする人がたくさんいることが一番の強み。常に変化をさせようという人や、変化を受け入れる度量がほかの街に比べると大きいので、ポテンシャルも大きなものがある。

―― エリアマネジメントとしてつくる街について。
 角 渋谷は駅前だけでなく、エリア全体を回遊する街だ。今以上に人が回遊する仕組みづくりをやっていきたい。実際、渋谷区とも我々がやっている取り組みが駅前だけでなく、広範囲でできるように、事業エリアの拡大も含めて考えていこうということで相談している。活動範囲を広げ、より渋谷の街が発展できるように貢献していきたい。

(聞き手・副編集長 若山智令)
商業施設新聞2480号(2023年1月24日)(6面)

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