電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第524回

日清紡マイクロデバイス(株) 代表取締役社長 田路悟氏


車載など好調で成長持続
統合効果で製品開発を加速

2023/5/12

日清紡マイクロデバイス(株) 代表取締役社長 田路悟氏
 日清紡ホールディングス(株)の半導体事業子会社である新日本無線(株)とリコー電子デバイス(株)が合併し、2022年1月に発足した日清紡マイクロデバイス(株)。母体となった2社のシナジー創出が計画どおり進んでおり、新製品の投入など着実に統合効果を発揮している。代表取締役社長の田路悟氏に話を聞いた。

―― 足元の業績動向について。
 田路 22年12月期の売上高は前年度比11%増の853億2900万円、営業利益は同約2.1倍の91億8900万円と大幅な増収増益となった。全体の4割を占める民生向けが中国スマートフォン(スマホ)を中心とした不調で伸び悩んだものの、3割ずつを占める車載と産業機器向けが非常に好調だった。売上高は計画以上となり、円安効果で営業利益は大きく伸長した。また、全体の1割を占めるマイクロ波製品は、船舶レーダー用部品のマグネトロンなどが好調だった。
 23年12月期は売上高950億円、営業利益86億円を計画する。民生向けは上期の回復が想定より遅れており、下期の巻き返しに期待している。産業機器はスマホや半導体製造設備向けが減少しているものの、FA関連は好調だ。また、車載向けも好調を維持しており、トータルでは増収増益を目指している。マイクロ波製品は物流逼迫の解消で船舶向けマグネトロンの需要は減少するが、衛星通信装置やマイクロ波センサーは堅調を見込む。当社は25年度に売上高1000億円、営業利益100億円以上の目標を掲げているが、それに向けた成長は順調に果たせていると考えている。

―― 統合によるシナジー創出の状況を。
 田路 計画どおり順次進めている。製品開発では2社の技術を組み合わせ、CMOSコンパレーターやPMIC、センサーモジュールなどの新製品を生み出している。また、生産はやしろ事業所、川越事業所、福岡の前工程3拠点で連携し、生産性向上を図っている。営業は統合した2社同士でそれまで接点がなかった相手方の顧客を紹介することにより、新規採用を増やした。これから刈り取りを本格化させたい。今後は両社のシステム統合などを進め、さらなる効率向上を目指す。

―― 新製品開発について詳しく。
 田路 アナログフロントエンドなどの信号処理系、電源ICなどのエネルギーマネジメントの2分野を中核に位置づけている。0.18μmプロセスが立ち上がり、適用製品を順次増やしている。また、佐賀の後工程拠点ではモジュール実装ラインを導入し、60GHzレーダーを量産化した。
 電子デバイス製品では新製品として、車載フロントカメラのCMOSイメージセンサー用パワーマネジメントICを開発した。超低ノイズ性能が評価されている。また、タッチレスボタン用の光学式反射センサーも投入し、飲食や医療分野で用いられている。化合物系ではGNSSの1.2GHz帯向け高精度測位デバイスファミリーをラインアップした。ほかにも故障予知用の超音波音響センサーモジュールや、高温時の高精度を実現したオペアンプも開発した。
 マイクロ波製品は衛星通信向けに30GHz帯トランシーバーを量産化したほか、マイクロ波センサーがTOTO(株)の便座に採用された。既存の赤外線センサーと異なり、窓がなくてもセンシングできる。高精度を活かし今後はロボットや介護用にも展開したい。また、X線機器用電子銃も医療機器などに採用を伸ばしている。

―― 今後の開発の方向性を。
 田路 標準デバイスをさらに深化させ、モジュール製品など高付加価値製品を拡大していく。将来的にはAIやソフトウエアとの融合を進め、「アナログソリューションプロバイダ」となる目標を掲げている。コア技術としてセンサーや信号処理技術の強化を図る方針で、後者では22年に日清紡グループ入りしたディー・クルー・テクノロジーズ(株)と協業していく。日清紡グループ間での協業も進めており、故障予兆保全や騒音下でも聞こえる咽喉マイクなどの開発に取り組んでいる。

―― 設備投資計画は。
 田路 今後数年間は年70億~90億円規模の投資を計画する。22年はやしろ事業所の8インチ/0.18μmや、川越でのプロセスの増強を行った。福岡の5インチラインの6インチ化も検討している。今後は後工程への投資が中心となる予定で、24年にかけて国内外の自社拠点やOSATでテスターや実装関連装置を増強する。佐賀のモジュール実装ラインは現状小規模だが、製品拡大に伴いラインを増設する見通しで、並行してOSATへの展開も図っていく。

(聞き手・副編集長 中村剛)
本紙2023年5月11日号1面 掲載

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