商業施設新聞
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第380回

(株)ホテルオークラ 上席執行役員 開発営業本部 部長 石丸秀敏氏


30年に国内外で150ホテル体制に
国内でプレステージ業態を拡大へ

2023/5/16

(株)ホテルオークラ 上席執行役員 開発営業本部 部長 石丸秀敏氏
 2022年の秋以降、国内の宿泊需要が回復してきた。ホテルオークラグループは国内外で積極開発に動き、特にラグジュアリーホテルカテゴリーの拡大に力を入れる。(株)ホテルオークラ上席執行役員開発営業本部部長の石丸秀敏氏に聞いた。

―― ブランド展開から。
 石丸 オークラホテルズ&リゾーツが「オークラヘリテージ」「オークラプレステージ」「ホテルオークラ」、ニッコー・ホテルズ・インターナショナルが「グランドニッコー」「ホテルニッコー」「ニッコースタイル」、ホテルJALシティの「ホテルJALシティ」となる。

―― 足元の状況は。
 石丸 急速にお客様が戻っており、宿泊は19年比で9割となった。22年度上期は地方の回復が早く、東京、大阪の大都市圏は遅れたが、下期に入り、インバウンドの復活に伴い、大都市圏も急速に回復した。オークラ東京のADRは直近でオークラプレステージが6万~7万円、最高級ブランドのオークラヘリテージ」は10万円と上昇基調にある。また宴会需要は19年比で7割に、婚礼も8~9割まで回復している。レストランはコロナ禍でも底堅く、今では19年を上回るほどだ。

―― インバウンド客は。
 石丸 オークラ東京は欧米のお客様が多いが、一方、地方の主要都市のホテルでは中国のお客様が中心だった。現状は中国からの訪日客が少ないため国内や東南アジアからが占める。エージェントからの報告ではゴールデンウィーク後ごろから中国からの訪日客が増加するとのことで、これが本格化すると中国の訪日客数も19年と同等になるだろう。

―― 懸念は人手不足です。何か対策は。
 石丸 大学と産学連携を行い、当社スタッフを講師として派遣するとともに、ホテルマネジメントを学んだ学生を当社グループで採用する活動を3年前から行っている。海外からも日本に招いて育てる取り組みも始める。

―― 中期計画は。
 石丸 現在、国内外で約80店展開するが、30年までに150店まで拡大し、うち5割を海外とする。当社はマネジメント契約を基本としており、マネジメント契約として拡大する。

―― 海外戦略について。
 石丸 インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイ、台湾の5カ国・地域でそれぞれ最低5店の運営を目指す。各地域で集中的に認知度を高め、面展開する考えだ。ブランドではオークラプレステージを展開したい。またライフスタイルホテルブランドであるニッコースタイルの出店も加速したい。

―― エリア別では。
 石丸 タイは集中的に出店する。すでに開業予定も含め5店を超えているがバンコクとその近郊の展開となっているため、リゾートのプーケットやパタヤ、サムイ、チェンマイなどにも広げたい。
 注目しているのはベトナム。サイゴンにホテルニッコーがあるが、街の中心部でオークラプレステージサイゴンの出店を計画している。都市部という意味ではいずれハノイにも展開したい。またベトナムのリゾート地、フーコックではオークラリゾート&スパフーコックを計画している。

―― 台湾では。
 石丸 台北にオークラプレステージとホテルニッコーがある。高雄と台中に計画を持つ。これら主要都市に店舗が揃った時点で観光地やリゾート地、温泉地にも出店を広げる考えだ。

―― 中国は。
 石丸 現在中国で10店を運営する。今後は上海・北京等の第1都市に加え、第2都市で好条件があれば検討する。

―― 国内戦略について。
 石丸 東名阪、札幌、福岡の5大都市でオークラプレステージを展開したい。例えば、以前の札幌ならばラグジュアリーホテルは考えにくかったが、富裕層インバウンドが増加し、エリアポテンシャルが高まった。その他の中核都市ではグランドニッコーやニッコースタイルなどを展開したい。

―― 三大都市圏での展開は。
 石丸 都内にはオークラ東京があるため競合を避けながらシナジーを発揮できる立地ならばオークラプレステージもありえるだろう。
 京都はオークラプレステージがないため展開したいし、名古屋は名駅にニッコースタイル、錦にホテルJALシティがあるため、栄ではオークラブランドが有力だ。栄は国内大手デベロッパーによる再開発が活発化しているため、注目している。
 この他、沖縄も注視している。本島なら恩納村、離島では宮古島、石垣島などで、ラグジュアリーホテルの展開を視野に入れている。

―― ニッコースタイルは。
 石丸 20年に1号店を名古屋に開業した。2号店を24年初頭に北海道・ニセコに開業予定だ。フジタがオーナーとしてホテルを建設する。同ブランドは「コミューナルロビー」という地域の方も利用できるオープンスペースを設け、客室は間口を5mと広くとり、奥行も6mを確保する広いリビングスペースなど快適性が特徴だ。
 今後は東京にニッコースタイルのフラッグシップを開業したい。ラグジュアリーホテルは客室数が100室前後とコンパクト化の傾向にある。宿泊特化に近いコンセプトが増えているなか、ニッコースタイルは時代の潮流に乗れるだろう。

―― 新業態の開発は。
 石丸 サービスアパートメントを開発し、ホテルと組み合わせる。すでに大連、サイゴンでレジデンスと一体となった施設は運営している。また、ジャカルタでもプロジェクトが進行中でり、オークラやニッコーブランドと組み合わせて「オークラレジデンス」「ニッコーレジデンス」としての展開を目指しており、国内でも投入していきたい。

(聞き手・特別編集委員 松本顕介/安田遥香記者)
商業施設新聞2493号(2023年4月25日)(7面)
 再浮上!!ホテル業界 No.8

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