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第532回

太陽誘電(株) 代表取締役社長執行役員 佐瀬克也氏


MLCCは車載向け大型品強化
インダクターなど次の柱も育成

2023/7/7

太陽誘電(株) 代表取締役社長執行役員 佐瀬克也氏
 太陽誘電(株)(東京都中央区)は、6月29日に代表取締役社長執行役員に就任した佐瀬克也氏が報道各社のインタビューに応じた。2022年度の市場環境の急激な悪化のなかで就任打診を受け、25年度に売上高4800億円、営業利益率15%以上、ROE15%以上、ROIC10%以上を目指す「中期経営計画2025」の達成に向けて、残された期間で力を発揮していきたいと、今後の方向性や投資、経営の抱負など様々な見通しを語った。

―― 今後の太陽誘電の方向性をどう描いているか。
 佐瀬 当社の主力事業は積層セラミックコンデンサー(MLCC)で、まずはここを引き続き強化していく。需要拡大が見込まれる車載向けなどに注力し、事業の安定性と収益の向上を両立させたい。インダクター、通信デバイス、アルミ電解コンデンサーなどMLCC以外の製品群も車載向けにラインアップを強化し、次の柱に育てる。その先に、必要があると判断した場合はM&Aなども含めて柔軟に検討していく。

―― スマートフォン(スマホ)向けの小型・大容量MLCCが強い貴社ですが、車載向けで優位性を出すには。
 佐瀬 当社のMLCCの強みは材料から一貫して製造することで最先端品を創出できる点にある。スマホ向けは材料を細かく均一にし、薄いシートを正確に積層していく技術を駆使した小型・大容量品で世界最先端の商品をラインアップしている。一方、車載向けは高信頼性を要し、大型品が主である点などが異なる。シートは比較的厚いが、材料の均一性や積層精度が製品のレベルを高める点は車載向けも共通で、スマホ向けの最先端品と要素技術は共通だ。125℃・150℃級の高温対応など車載グレードの品質要求に応える技術力でも当社の知見が活きる。材料から製品まで自社内一貫で立ち上げるスピード感が武器になる。

―― MLCC以外の製品群について。
 佐瀬 インダクターは現状ではスマホやワイヤレスイヤホン、スマートウオッチ向けに積層や巻線のメタル系が強い。加えて車載向けに巻線の大型品ラインアップを拡充する。また、数年前にM&Aで獲得したアルミ電解コンデンサーは車載向けが大半で、特に導電性高分子ハイブリッドアルミニウム電解コンデンサーへの引き合いが強いため、ニーズに応えて増強を急ぐ。スマホ向けで培った通信デバイス技術をV2X化で需要が伸びる車載向けに展開し、提案を進めている。

―― 5年間累計の設備投資額3000億円に変更は。
 佐瀬 投資規模に変更はない。23年度は、中国とマレーシアでMLCC新工場の建屋建設に計約400億円を投じ、その他の設備投資も加えて総額900億円の投資を計画している。24~25年度は残りの約1200億円程度を実施することになる。また、3000億円のうち10%は環境投資やDX化に使う。DX化ではデータサイエンティストによるAI活用型の工程管理などの取り組みも推進中だ。

―― 投資の中身は。
 佐瀬 MLCC全体の需要金額は当初の想定からそれほど変わらないが、車載向けが今後も伸びる一方、スマホ向けの伸びが緩慢で、大型品の割合が増えるとみている。前工程の製造設備はおおむね共通だが、後工程は日本、韓国、中国、マレーシアなど各拠点で大型品にも対応できる製造設備を入れる必要がある。これらを実行しながら、毎年10~15%の増強を進めていく。
 また、EVモーター向けなどで需要が旺盛なハイブリッドアルミ電解コンデンサーは、子会社のエルナー(株)青森工場で増強中のほか、当社国内工場内のスペース調整で増強を検討している。需要の伸びは20年度比で25年度までに2.5倍、30年度までに5倍が見込まれており、当社はそれを上回る規模で増強していく。

―― 製品在庫は。
 佐瀬 23年1~3月期にMLCCの工場稼働率を50%前後まで落としたことで、在庫適正化に一定のめどがついた。23年度の在庫水準は期末比較でフラットの設計で考えている。ただしここ数年、サプライチェーン寸断など従来では顕在化してこなかったリスクが突如発生した。そのため、ある程度のBCP在庫は各拠点で万遍なく持っておくべきだと考えている。

―― 社会課題の解決に向け、ご出身の群馬にも貢献されています。
 佐瀬 当社が開発した回生電動アシストシステムが搭載されたブリヂストンサイクル様の電動アシスト自転車150台を前橋市に寄贈し、「まえばしシェアサイクル『cogbe(コグべ)』」などを通じて環境に優しい移動サービスを提供している。さらに、GPSなどIoT機能を追加したシステムを使った実証実験を行い、地域の観光振興にも貢献している。また、水害など自然災害対策として、ミリ波センサーを搭載した河川モニタリングシステムのソリューション提案も行っている。

―― リフレッシュ法および座右の銘を。
 佐瀬 群馬県は上毛三山など自然豊かなロケーションで、休日はドライブやサイクリングなどで気分転換を図っている。また、「為せば成る」という姿勢で仕事に臨んでいる。失敗しても諦めず、常に最善策を意識して考えていれば道は開けると信じている。経営においても何事にも諦めないで挑んでいきたい。

(聞き手・高澤里美記者)
本紙2023年7月6日号14面 掲載

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