商業施設新聞
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第391回

ヴィソン多気(株) 代表取締役 立花哲也氏


VISON、『ここにしかない食』で広域集客
目指すは“地方創生”“残すこと”

2023/8/1

ヴィソン多気(株) 代表取締役 立花哲也氏
 三重・多気町の商業リゾート施設「VISON」が第9回日本SC大賞で特別賞を受賞した。約119haの広大な敷地に飲食、物販、ホテル、温浴施設、農園など約70店を集積。『ここにしかない食』など独自の魅力を作ることで広域の集客に成功した。目指すのは地方創生、そして日本の食など良いものを残すこと。同施設を運営するヴィソン多気(株)代表取締役の立花哲也氏に話を聞いた。

―― 足元の人口は多くはありません。どう人を呼ぶことを意識しましたか。
 立花 多気町の人口は約1万5000人。周辺の町の人口は1万人前後で、足元の商圏としては相当厳しいエリア。ただ、少し車で走れば伊勢神宮や伊勢志摩という観光地がある。こうしたことを活かしつつ、ここにしかないような魅力的なもの、専門性の高いものなどを作れば名古屋など中部、大阪など関西からも人を呼ぶことができると考えた。
 一般的な商業施設は様々なところに出店しているナショナルチェーンがあって、かつアパレル系が多い。そこで食をテーマにした施設をつくることにした。例えばVISONには酢やみりん、日本酒の蔵があるが、専門性を高めれば広く商圏を確保できる。また、ナショナルチェーンを入れないことで、周辺の商業施設にはない店舗構成とすることも意識した。

―― 食が大きなキーワードですね。
 立花 ここまで食を集積したところは日本にないのではないか。スペインのバルなどが並ぶサンセバスチャン通り、和に関する食が集まった和ヴィソンなど色々なエリアがある。根底はここにしかないもの。和ヴィソンには味噌、醤油などのメーカーに出店していただき、製造工程を学べる蔵もある。
 食を軸にしつつ様々な機能があり、ライフスタイルショップ、アウトドアショップ、3つのホテル、温浴施設、収穫体験ができる農園、木工体験ができる木育施設などがある。
 ただ、こうした専門性や多機能の集積だけでは不十分。VISONは地域の食材をマルシェ ヴィソンで販売しており、周辺の観光地を巡る拠点とすることで、地域と共存できる場所にしている。これまではSCができることで周りの店がなくなることがあったが、それと真逆のことをしたい。

―― 地域とともに生きるということですね。
 立花  この辺りは食材がものすごく豊か。海の物も山の物もある。マルシェヴィソンはすべて合わせると800坪もあり、地域の食のPRの場になっている。ここは交通の要衝で、すぐ近くにジャンクションがあり、新しくできたスマートICからVISONに直接アクセスできるようになった。発信するのに良い場所。伊勢神宮も高速で15~20分程度で着くので、周遊の拠点にもなる。実際、開業後は大阪や名古屋など広域から来ていただいている。以前は名古屋からバスでは伊勢神宮は行きにくかったが、VISONをターミナルとし、VISONのバス停を経由して行けるようになった。そういう地域貢献もできている。

―― そもそもここに広大な商業リゾートを作ろうとした経緯はどういったものだったのですか。
 立花 私はアクアイグニスの社長として温泉リゾート施設などを展開しているが、もともと食をテーマにした施設を作れないかという思いがあった。そうした中、多気町の町長と話すうちに多気町に縁のある薬草や三重の食をテーマにした施設をつくれないかという話も出た。ゴルフ場の整備計画があったこの場所を取得でき、事業がスタートした。イオンタウン、ファーストブラザーズ、ロート製薬にも参画していただき、「合同会社三重故郷創生プロジェクト」をつくり、色々なアイディアを出し合いつつ形にしていった。

―― VISONが提供する価値や、目指すことについて教えてください。
 立花 残すということを意識している。この20、30年で周辺の町にSCができて、地元の店がなくなっていって、若い人も町からいなくなった。便利なものが増えた分、日本の食文化はどんどんなくなっていく。そうした中で、伝統的な発酵文化などを守り伝えていく場にしたい。ここにすごく真新しい百貨店やSCを作っても意味がない。そうではなくて、こういう広々とした気持ちの良い場所で、醤油がどうやってできるか発信したり、味噌をつくる体験をしてもらいたい。いいものにこだわって、日本の食文化を残すきっかけにできればうれしい。

(聞き手・編集長 高橋直也)
商業施設新聞2505号(2023年7月25日)(1面)

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