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ドコモ・ヘルスケア(株) 代表取締役社長 竹林一氏(3)


ビッグデータで機器開発やリスク回避、「高齢化を追う他国へもノウハウ提供したい」

2014/8/26

竹林一氏の講演会場風景
竹林一氏の講演会場風景
 (株)産業タイムズ社の『半導体産業新聞』では、日本電子回路工業会主催の「JPCA Show 2014」(6月4~6日、東京ビッグサイト)で、講演と企業展示で構成するイベント「次世代アプリ開発支援技術展~夢をカタチに~」を併催した。今回は、その中でドコモ・ヘルスケア(株)代表取締役社長の竹林一氏が行った講演「『モバイルヘルスが創る未来』~からだと社会を繋ぐ」を紹介する連載3回目。竹林氏は、バイタルセンサーから集めたビッグデータから見えてきたもの、また、事業展望について語った。

◇   ◇   ◇

◆「摂取カロリーが減り、肥満者が増えている」
 竹林氏は、「ここで、ちょっとクイズタイムに入ります」と笑いを誘いながら、「1980年、今から30年前と今の日本、2011年ですね。ちょっと前ですが。『肥満者の割合はどっちが多いでしょうか』。1980年のほうが5~6人で、『2011年のほうが肥満多いで』という人が多いですね。肥満者は増えています。こんだけ体重計が売れているのに。次に、『摂取カロリーは、1980年か2011年のどっちが多いか』。『摂取カロリーは2011年のほうが多いで』という人が多いですが、実は、1980年と比べ日本全体で、2011年の摂取カロリーって減っているんです。減っていて、肥満がどんどん増えているんです。体重計もいっぱい買ってもらって、スマホにデータ上げてもらって、でも、増えているんですね。次の質問『朝食を抜くと、筋肉減って太る』という人と、『体脂肪が減って痩せる』という人の数は、半々くらいですが、朝、食べないと、代謝量が落ちるんで、5倍太りやすいというデータがあります。今、小学校とか、反復横飛び(がきちんとできない)とか朝食べてない子が増えて、学力、体力が落ちている。この間、テレビで大学学食のワンコインモーニングのことを放送していたんですが、朝食べへんと学力落ちるんですね。最後のクイズ『23時に夕食食べました、いつ寝たらいいか』では、『2~3時間後やでえ』の人より、『あきらめて早めに寝る』人のほうが少ない。でも、実際は早めに寝るほうがいいですね。17~19時に食べて2~3時間後に寝る。夕方に胃液とか全部出る。23時になったら何も出てない。起きてても無駄。2~3時間起きてることで、消化させてから寝る。消化させないまま寝ると眠りが浅くなる。でも、23時にもなってたら同じ。朝早く起きて、体調を整えたほうがいいですね」。

◆サービスをセットし、新しい健康の世界観創出
 「そんなんを、整えてくれるアプリケーションというのが、去年12月に出た『からだの時計』です。今のようなカタチで体調を整えてくれる。そこに、こういう(リストバンド型の)ムーヴバンドが付いてて、どんな生活をすんのかというのが分かる。これ無料アプリが付いてて、ドコモだけじゃなくて、auもソフトバンクでもつながります。その上の有料サービスは今、ドコモだけですけども。24時間の電話相談が付いてたり、お医者さんですね。人間ドックの予約サービスが付いてて、最高で半額になるようなサービスが付いてるんですね。これ(ムーヴバンドなど)ももう、半導体としてのこれのQCDだけじゃなくて、それを含めたどんなこう世界観を創るかというようなサービスが出てくるんで、それとセットにして、新しい健康という世界観が出てくる。今まで、日本はハードウエアとして、これ(ムーヴバンド)だけ作ってたんですけども、これ(ムーヴバンド)プラス、これ(サービス)を作る世界観を創っていくべきと思っています」。

◆パートナーとの連携で健康プラットフォーム
 竹林氏は、ディスプレーに「パートナーとの連携でライフスタイル提案 お客様の『ウエルネス』をトータルサポート」の図を投影しながら、「あと、ドコモが食事レシピのABCクッキングスタジオを持ってます。らでぃっしゅぼーやという野菜の会社、ドコモの会社、オークローンマーケティングていう、ビリーズブートキャンプですね、運動の会社、ドコモの会社なんですね。実は、ドコモ(グループ)だけじゃないですが、こういうところ(パートナー企業)が連携して、実は健康というプラットフォームを作っていっています。で、ここは、ドコモグループである必要はないですけども、こんな生態系を作るってのが我々の夢なんですね」。

◆通信機能付き血圧計でわかったこと
 「もう1つ、オムロンの血圧計『Medical LINK』の中にドコモの3Gモジュールが入ってて、これ、先生(医師)にすぐデータが飛ぶんです。で、これ有料のサービスなんですけども。これ、面白いことがわかってきたんですね。高血圧の方、おられます? 血圧手帳書いて、先生とこ持っていかなあかんのですけども。これで、勝手に先生とこデータ飛ぶんですけども。わかってきたのは、おじいちゃん、おばあちゃんですね、1日何回も測って一番ええ値だけ書いてきた、ちゅうことがわかってきた。朝一番に測ってですね、測るたびにこれデータ飛びますから。で、嘘はついてないんですよ。でも、『朝一番やから高いんや』とかね、自分で言い訳して、今度『散歩のあとやから高いんや』ゆうて、一番低いのを書いてきはるんですね。もう1つ面白かったんが、これ(血圧計)に温度センサーが付いてるんですね。で、わかってきたのが、寒くなってくると血圧上がるんですね。ところがですね、東北のほうの先生がこの仕組みを使ってですね、『おばあちゃんに寒くなってきたんで、今までだったら、血圧の薬をもう一錠たくさん渡そう』ていうところで、おばあちゃんに『エアコンのボタン持ってきい』ゆうて、朝起きる1時間前のエアコンの設定の仕方を教えはったんですね。それで、起きる前の1時間、部屋暖めとくだけで、血圧が、朝の血圧が安定するんですね。で、『薬が減った』という報告がありましたですね。こういう世界になってくるんですね。1つずつが、いろんなセンサーとかつながってくるんですけども、それがこういう世界になってくると、おじいちゃんおばあちゃん、ちゃんと見ててくれるなという世界になってきます」。
 竹林氏は、ウェルネスリンク対応機器から集まった血圧や体重、歩数のデータを集計した「にっぽん血圧マップ」「にっぽん体重マップ」「にっぽん歩数マップ」をディスプレー上に、毎日集まるデータから、1年を通した都道府県ごとの平均値の変化を映し出した。青色で表示される都道府県は、血圧であれば120未満の良好な状態だ。

◆ビッグデータで機器開発やリスク回避
 それぞれのマップから見えてくることを説明したうえで、「(ビッグデータによって)こんなんが見えてくるんですね。こんなんが見えてくると、そのデータを活用して、機器へもフィードバック(製品開発への応用)できまして。また、ひとりずつがどんな状態かわかるんで、例えば、住宅の温度と健康、いろんなものがこう結びついてくるんです。こうなってきた時に、個々に作っていただいてる半導体、機器が連動してくるんですね。こういう世界観を、やはりその、一番高齢化である日本で創っていきたいなと思っています。で、ビッグデータは、大量のデータが集まればいいというものでないんですが、ひとりずつのこのデータをフィードバックすることによってですね、どうすれば倒れる危険性をなくしていくのかというのが見えてきたんですね。都道府県別で。『うちの県のほうが言わへん間に、健康になっといたろう』とかね、歩く県があってもいいですし、嫌煙運動やる県があってもいいですし、そのみんながちょっと意識するだけで健康になっていけるかなあっと。こんなんもできるようになってきたのが、やっぱり半導体の進化で、より健康機器が身近になってきて、スマホでデータが身近になってきて、それを処理するクラウドが安くなってきて、ようやくその上の世界観が創れるようになってきました」。

◆ワントゥワンでアドバイス
 「こうして得られた、『新たな知見』、というのは例えば、室温と血圧の関係であったり、もう明確に、血圧と脳卒中の関係も、今、日本高血圧学会と一緒に分析してますけども、見えてまいりました。そうすると、ワントゥワンでですね、アドバイスできる。これ(ムーヴバンド)がぶるぶるとなって、『ちょっと暖かくしていきや』という世界が来るんですね。それと、半導体の進化と掛け算したとき、初めてモデルとして、世界に発信できるようなモデルというのが出てくるのかなと思います。最後に、デジタルとサービスの融合ですね。で、健康で楽しい社会を創るて書いてるんですけど。例えば、こういう機器で、自分の健康を測っていただく、歩いていただく、朝、ちゃんと食べていただく、ちょっとしたことでですね、血圧が安定して、糖尿にならなくて済むんですね。で、そうしていくとですね、皆さんが上げたデータでですね、日本が青くなっていくんです。2020年、僕の夢は、宇宙から見たときに、日本は青かったって言いたいなあ。オリンピックの時ですね」。

◆「高齢化追う他国へもノウハウを提供したい」
 竹林氏は、「この青くなるモデルを、これから追随してくるですね、高齢化社会を目指して、目指してはいないですけど、ほかの国ですね、こういうセットとサービスとして提供しているノウハウを提供できればなあと思います」と抱負を語り、講演を終えた。
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