電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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車載カメラが新成長分野


~デジタルカメラ新時代~

2014/10/14

■はじめに

 デジタルカメラやイメージセンサーはアプリケーションの幅とともに市場が拡大してきたが、数年前よりアプリケーションの構造変化の波をかぶり始めた。デジタルカメラやイメージセンサーにとってWireless(スマートフォン/携帯電話/Media Tablet)は、現在でも最も影響を受ける存在であるが、かつての筆頭アプリケーションの1つであったDigital Still Camera(DSC)市場は収縮する一方である。

 反面、自動車や産業などの新市場が誕生しており、さらに社会への浸透と影響力を強めている。下記のグラフはイメージセンサーの市場予測であるが、Wirelessがイメージセンサー市場に圧倒的に強い影響力を持ち続けるという結論となった。その比率は65%で、今後もWirelessの市場は拡大を続けるだろう。2位にはDSCが入るが、シェアは18%と影響力は小さくなる。3位にはData Processing/PCが登場しシェアは7%を確保、4位には軍需、Industrial & Aerospace(Security/Surveillance、医療、産業用カメラ含む)が登場する。その他のアプリケーション、ビデオカメラは非常に小さなシェアとなる。


■萎んでしまったDSC市場

 スマートフォンの高画素化が進むにつれ、コンパクトDSCが大きな影響を受けている。スマートフォンのカメラは、2012年には高画素化が8Mピクセルまで進んでいたが、13年には13Mピクセルへと、さらに5Mピクセルもの向上を実現した。14年のフラグシップモデルは20Mピクセルにまで達しており、iPhoneやGalaxy、Xperiaなどのハイエンド機が競って高画質BSI CMOSイメージセンサーを搭載している。

 スマートフォンのカメラ機能が向上すればするほど、既存のDSC市場との摩擦は避けられず、DSC市場は反比例して縮小し始めている。DSCトップメーカーのキヤノンはこうした市場の影響を受け、ポストDSCビジネスへの転換に迫られている。

■新成長分野、車載カメラ

 DSC市場が萎む一方で、新たにイメージセンサーが活用する分野も出ている。デジタルカメラアプリケーションには、主流の民生機器に医療、セキュリティー、自動車など、産業分野が加わろうとしている。

 とりわけ注目されているのが、搭載が活発化している車載カメラの分野である。車載カメラの普及は、車両の後方視界を確保するバックモニターカメラから始まった。近年ではリアビューカメラという名前で広く普及しており、ドライバーの視界補充機能として期待されている。北米では、車庫入れなど後退発進する際の事故による子供の犠牲を防ぐため、後方監視手段として法令化が進みつつある。今後はKT法など、欧米の法制化が後押しすることが見込まれている。リアビューカメラは「アラウンドビューカメラ:車両周囲安全方位監視」へと発展もしている。

 しかし、自動車へのカメラ応用は始まったばかりである。将来は積極的にドライビングをサポートするカメラシステムの登場が確実な様相である。現在、最も注目されるのがセンシングカメラで、前方監視を行い、ADAS(先進運転支援システム)の目としても活躍が期待される。センシングカメラは、(1)車線検知、(2)ヘッドライトコントロール、(3)標識認識、(4)障害物検知などを行えるカメラである。国産車では早期よりブレーキアシストを組み合わせて、実用化の道を切り開いてきた。

 一方で、デジタルカメラやスマートフォンで高度な進化を遂げたカメラ・デバイスが、車載カメラではどのように進化していくのかは興味深いテーマである。しかし、イメージセンサーの画素数は意外にも最低レベルである。現行車種に使用されているカメラ用センサーはVGA(640×480画素:Video Graphic Application)が主流である。

 国産車の一部では1.3Mピクセルの採用が見られるが、ほとんどのメーカーがVGAカメラを採用する。センシングカメラの場合になると検知・認識能力を高めるために1段階上の画素要求があり、メガクラスを採用している程度だ。

 このような結果となったのは、アプリケーションからの要求や課題が民生機器と異なるためである。車載カメラでは高画素のセンサーの必要がない。代わりに、CMOSイメージングセンサーとして求められる機能は低照度対応、低ノイズ化、光利用効率向上であり、センサーにはダイナミックレンジ拡大と低照度時の感度が求められ、たゆまない改善が継続して行われている。

 また、ECU一体型センサーを採用しているのも、車載カメラの特徴の1つだ。

 車載分野へのセンサー供給はAptinaとOmnivisionの2社が中心というのも、他の分野と比べて特徴的な点である。



IHS Technology 主席アナリスト 李根秀、
お問い合わせは(E-Mail : forum@ihs.com)まで。

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