医療産業情報
新聞情報紙のご案内・ご購読 書籍のご案内・ご購入 セミナー/イベントのご案内 広告のご案内

(株)伊藤喜三郎建築研究所 執行役員プリンシパルアーキテクト 鈴木光一氏(2)


「超高齢社会と医療国際化の病院建築」を講演
「海の向こうに1960年の日本がある、今こそ全日本体制で海外市場の開拓を」

2014/12/22

鈴木光一氏
鈴木光一氏
 (株)伊藤喜三郎建築研究所の執行役員プリンシパルアーキテクトの鈴木光一氏による、JPI(日本計画研究所)の特別セミナー「超高齢社会と医療の国際化における病院建築の取組み」が10月29日に行われた。鈴木氏は、第1部「闘う病院~超高齢社会における急性期病院の戦略~」に続き、第2部「今なぜ海外か~医療輸出戦略に向けた手探りの国際化~」を講演した。

◇   ◇   ◇

◆2050年、「日本はアジアの小国」
 鈴木氏は、第2部を(1)「急成長するアジアにおける日本の立ち位置」、(2)「ベトナムにおける病院円借款の可能性と課題」、(3)「インドネシア「階級なき病院」の社会運動」、(4)「成長が生む格差。医療・病院の原点は何か?」の順で解説した。
 鈴木氏は、内閣府の資料をもとに、1956年から73年までの日本の平均経済成長率は9.1%、74年から90年は4.2%、91年から2011年は0.8%の3段逆スライド方式の下降線であることを示した。さらに、実質GDPの予測をもとに、今後日本は、10年の7兆ドルから50年の10兆ドルまで、緩やかな伸びにとどまる。一方で、50年には米国、中国が35兆ドル、EU、インドが20兆ドル、ASEANが10兆ドルへと高く伸び、この時点で「日本は経済大国の地位を失いアジアの小国」の地位に甘んじる可能性があると指摘した。
 すでに日本の人口構成は高齢者に比して生産年齢層、その後の若年層が少ないポリバケツ型であり、今度は人口減少に移行するのに対して、隣国の中国では圧倒的な生産人口を誇る。すでに現時点で国力の比較において日本は風前の灯である。さらに50年の人口構成は、中国が今の日本と同じ少子高齢型に陥り、これに対してインドが総人口において中国を凌駕、生産年齢層が分厚い見るからに安定した人口構成となる。今の若者が高齢者になるとき、日本を取り巻くアジアは想像を絶する状況になっているだろうと警鐘を鳴らす。
◆今から日本医療の国際化に着手する必要
 こうした予測を背景に、「いま、なぜ海外か?」と問いかけた。日本では社会保障財源の逼迫から、高齢者医療費の抑制やホスピタリティ・コストの削減といった医療インフラの縮小の方向に政策の舵を取っているが、近隣諸国を見れば、人口増加と経済成長に反して、医療体制の未整備・病床数の不足、病院のオーバーロードなどの問題を抱え膨大な医療ニーズが存在している。そこで、経済成長戦略第三の矢の一環となる「企画・設計・運営を総合した日本の医療関連技術の海外移転」プロジェクトに今から手をつけていく必要があると結論づけた。
◆医療未整備のベトナム、インドネシア
 次いで、医療の国際化について、インバウンド的アプローチでは、海外からの患者・受診者受け入れ(メディカル・ツーリズム)、在日外国人の診療受け入れ体制の整備、国際規格の認証取得(JCI、JMIP)、外国人スタッフの受け入れ(研修、雇用)を挙げ、アウトバウンド的アプローチでは、ODA(政府開発援助)先導による国際市場への参加機会の創出(建設・資機材)、人材派遣(技術指導、経営、施設管理)、業務委託(遠隔診断、遠隔メンテナンスサービス)、PPP・PFI・病院丸ごと輸出といった可能性を示した。

(続きは本紙で)

サイト内検索