電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第556回

ニッポン半導体がひたすら北上していく時代がやってきたのだ!


台湾PSMCが宮城に巨大工場、国家プロジェクト「ラピダス」セミナー開催

2023/11/17

 九州シリコンアイランドの活況ぶりがひたすら声高に叫ばれている。これまでの国内半導体生産の3分の1が九州エリアに集中しているのだから、そう叫ばれるのも無理もないだろう。熊本県下では、今や事実上半導体生産の世界ランキング1位の台湾TSMCが第1工場(1.2兆円投資)、第2工場(2兆円投資)を立ち上げるわけであり、くわえてロームが宮崎県下にSiCパワー半導体の巨大工場を建設し、その分野で世界トップシェアを取ると宣言しており、まったくもって九州の勢いは止まらない。

 しかして筆者は、こうした状況下においても「東北シリコンロード」という新たな運動論が出てきたことを指摘してきたのだ。つまりは、ニッポン半導体はひたすら北へ北へ向かっていく、という考え方なのである。それを象徴するように、台湾のシリコンファンドリー3番手のPSMCが宮城県の仙台エリアにどでかい半導体工場を建設することを決めたのである。投資額は8000億円というこれまた巨額のスケールである。

 同社が、このエリアを選んだことにはわけがある。近接には、トヨタ自動車東北という大型工場があり、また半導体製造装置最大手の東京エレクトロン宮城もあり、こちらも拡張を考えている。これでお分かりであろう。PSMCの狙いは自動車や産業機器向け半導体を量産することを前提に置いている。それゆえに、宮城に新工場進出を決めたのだ。

 ニッポン半導体がひたすら北上を続けているのは当然のことであろう。仙台には、半導体分野で国内ナンバー1といわれる東北大学という学のメッカがある。そして、宮城に近い岩手県にはNANDフラッシュメモリー世界最大手の一角、キオクシア岩手が存在しており、これまた2兆~3兆円の巨大投資を実行中だ。WBCの大活躍で世界のスーパーヒーローになった大谷サンの出身地は岩手県奥州市であるが、ここにも東京エレクトロンは成膜装置の主要生産拠点(東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ)を有している。そして、近接にはクルマのTier1国内トップのデンソーが半導体工場を構えており、これまた拡張を続けている。ジャパンセミコンダクターの量産工場も岩手県北上市にあるのである。

 そのほかにも東北エリアには重要な半導体工場がいくつもある。青森県では、パワー半導体大手の富士電機が津軽に工場を持ち、増強を続けている。秋田県では、同じくパワー半導体の秋田新電元があり、山形県にも東根新電元さらには山形サンケンがあり、いずれもパワー半導体の中堅どころである。忘れてならないのは、山形県鶴岡にはCMOSイメージセンサートップのソニーが量産工場を持っている。さらにソニーは宮城県白石市にも半導体工場を持っており、ロームグループのラピスセミコンダクタもまた、宮城工場を強化している。

 そして、北上の動きは東北からさらに先に向かっている。日本半導体の復活をかけた国家プロジェクトのラピダスが北海道千歳に100万m²の巨大な土地を取り、少なくとも5兆円を超える巨大新工場を2期に分けて建設することが決まっている。さらに加えて、ミネベアミツミは千歳に工場を持っているが、何と日立パワーデバイスをM&Aで手に入れることになった。このことでミネベアミツミは、売上2000億円以上を想定し、中堅半導体メーカーへの飛躍を考えている。

 それはさておき、国家プロジェクトのラピダスに関連する日本の次世代半導体プロジェクトの全貌が知りたい!と考えている人たちは多いのだ。筆者の所属する産業タイムズ社はこうした声に応えて2023年11月28日(火)13時から17時半までの時間帯で「2nm、さらにその次も睨む日本の次世代半導体プロジェクトの展望と半導体人材育成」と題するセミナーを開催する。主催は電子デバイス産業新聞、会場は富士ソフトアキバプラザ・アキバホール、参加費は¥38,500(税込)/1名。(オンライン参加コースもあり)

ラピダス会長の東哲郎氏
ラピダス会長の東哲郎氏
 ここでは、ラピダスのトップである会長の東哲郎氏が2nm以降さらには世界最高レベルの1nmまでの最先端技術の千歳新工場建設について詳細を語られるのだ。また、ラピダスに基本技術を提供しているIBMもまたキーパーソンの日本アイ・ビー・エムの山道新太郎氏が注目すべき講演を行う。そして、産業技術総合研究所にあって先端半導体研究センター長である昌原明植氏が、ニッポンの目指す先端半導体のオープンイノベーション推進についてスピーチされるのだ。ちなみに、半導体業界世界最古参記者の泉谷渉も「ニッポン半導体産業の新たな夜明け」について例によって机をたたいて、熱く語ることになるであろう。

 時あたかも九州シリコンアイランド、広島を中心とする瀬戸内バレー、東北シリコンロード、そして北海道半導体バレーという新しい時代の到来を示す出来事が起こり、「シリコン列島ニッポン」はすさまじい勢いで上昇気流に入ったのである。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 代表取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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