電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第647回

東芝はSiCウエハーを供給する中国企業との技術協力を破棄してしまった!


GaNパワーデバイスも日本勢は元気なく後退、シェア1位は中国

2025/11/14

 世界各国を駆け巡っている高市早苗首相のニュースが何かと話題になっている。何しろ、働いて、働いて、働いて、国家に身を捧げるという女性であるからして、健康を懸念する向きも多いのだが、ご本人はいたって元気なのである。

 その高市首相が米国大統領のトランプ氏と握手した時には15秒間も強く握り続けた。しかも、両手でがっちりと握り合っていたのだ。その後の所作もかなりすごいものがある。トランプ氏と腕を組んでルンルン気分で歩いておられたのである。

 一方、中国のトップである習近平氏との会談は、お互いに顔がこわばり、ほとんど笑顔がなかった。そして、早苗氏は習氏の手は握ったものの、片手だけであった。なおかつ、握っている時間は10秒もなかったのだ。何せ、高市早苗首相の誕生に対し、中国政府は祝電すら送らなかったのである。

 それはさておき、基本的には米中の貿易摩擦という心配事はここにきては後退した。これを反映して、米国と日本の株価はひたすらにうなぎ登りとなっており、史上最高を記録している。日経平均株価は、早苗ちゃんブームで一時的に5万2000円を突破したのであり、証券会社のアナリストに聞いたところ、「こんなに上がって大丈夫かよ」とかなりの憂い顔であった。

東芝デバイス&ストレージとSICCの連携は撤回に
東芝デバイス&ストレージとSICCの連携は撤回に
 こうした状況下で、SiCパワー半導体の分野において少し驚きの出来事があった。東芝子会社の東芝デバイス&ストレージは8月22日に次世代のSiCウエハー大手の中国SICCと技術協力を決めたのだが、わずか1カ月あまりで白紙撤回となってしまったのだ。技術流出など経済安全保障上のリスクがあることを否定できないとのことであったが、少し大人げない行為ではあった。

 ただ、日本勢は東芝デバイスだけでなく、中国のSiCデバイス企業の一気台頭に恐れを抱いているのだ。相変わらずのバラまき補助金によって中国のSiCは、凄まじい勢いで伸びている。すでに20社以上がSiCデバイスに参画しており、ファンドリーまで入れれば、その数は30社とも言われている。パワーデバイス企業の数だけで言えば、日本は10社程度であるわけだから、瞬く間に中国に抜かれてしまった。

 2024年のGaNパワーデバイス市場を見ても、1位は中国のInnoscienceであり、30%のシェアを持ち、圧勝状態だ。この分野で強いと言われるドイツのインフィニオンも5位にとどまっている。そして、最も重要なことはトップ5に日本勢の名前がないことだ。

 SiCにしても、GaNにしても日本企業はパワーデバイスが立ち上がっていく時には先頭グループを走っていた。しかし、市場が急拡大してくると後退していく。こうしたことの繰り返しは、他の半導体分野でも見られることであり、日本の半導体企業の脆弱さを克服する新たな手立てが必要になるだろう。

 こうなったら、超元気印の高市早苗首相による半導体の一大強化策が望まれるところなのである。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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