FPGA専業メーカーとして、同市場で堂々のトップを走るアルテラ。同社は2024年1月にインテルから独立し、さらに今年に入って同社出資分をプライベートエクイティ企業のシルバーレイクに売却したことで事業運営上の独立性を完全に確保した。来日した新生アルテラを率いるCEOのラギーブ・フセイン氏に話を聞いた。
―― ご略歴を。
フセイン パキスタンのNED工科大学でコンピューターシステム工学の学士号を取得後、米サンノゼ州立大学でコンピューター工学の修士号を取得した。同スタンフォード大学のエグゼクティブプログラムを修了している。その後、キャビウム(Cavium)を共同創業し、最高執行責任者(COO)として同社を10億ドル規模の企業へ成長させた。マーベル・テクノロジーに買収されて以降は製品・技術担当プレジデントを務め、同社のAIインフラ向け半導体のリーダーとして再構築を主導した。今年5月、サンドラ・リベラ氏の後任としてアルテラのCEOに就任した。
―― ミッションを。
フセイン 最良のソリューションを提供することにある。具体的には顧客との綿密なコミュニケーションを通じて、顧客が必要とする高品質なFPGAを迅速に供給する。あわせて、社内の意思決定を早め、顧客の課題解決と当社の付加価値創出を両立させる。
―― 日本市場について。
フセイン 日本はイノベーションを通じてグローバルに技術を発信する重要な地域であり、かつ重要なパートナーだ。アルテラは35年以上にわたり国内実績を有している。国内顧客社数は約500社で、これら企業は通信機器、軍事・防衛、ロボット、自動運転、医療機器向けなどに設計している。今後、国内FPGA市場はフィジカルAI需要増やASICの開発費増が追い風となり、30年に30億ドルに拡大する予測だ。
―― FPGAの利点を。
フセイン FPGAは開発ツールにより外部から回路構成を設計できる半導体だ。設計データはフラッシュメモリーに組み込まれており、FPGAを起動する際に読み込まれる仕組みだ。一般的なICは回路構成を変更できないが、FPGAは基板ごとに変更できる。これにより、様々な分野で採用される汎用性を有している。1個のFPGAで複数のロジックを使い分けることも可能だ。
FPGAとよく比較されるASICに対しては、開発費を抑えられる点が大きい。昨今のマスクコストは30億円近くかかるため開発コストがネックだ。開発期間もASICが数年かかるのに対し、FPGAは数カ月以内だ。ASICはTime to Marketで遅いだけでなく、製品化の段階で最新規格などに対応していないこともある。
―― フィジカルAIの事例を。
フセイン FPGA・GPU連携、FPGA単体の2つが考えられる。前者は特にロボット、ヒューマノイド、監視システムといった用途で使われている。これらは動画、音声、圧力、温度などを感知するセンサー機器を有するが、それぞれインターフェースや周波数などが異なりフォーマットを整える必要がある。FPGAはこうした用途に最適だ。製品としては多様なI/O規格、TensorFlowライブラリー、最新セキュリティーアルゴリズム、最大周波数に対応した「Agilex」が有力だ。TensorFlowに対応した業界唯一のFPGAで、柔軟かつ低遅延で推論処理が可能だ。引き合いは極めて強く、稼働率は90%を超えている。
一方、FPGA単体はGPUにデータを送ることなく、独自に推論処理を行うものだ。例えば、ロボットが緊急時にGPUを介した学習モデルではなく、小型LLMモデルを活用して反応することが挙げられる。軍事・防衛におけるドローン対策も同様で、低消費電力FPGAが有効となる。
―― 生産体制や業績について。
フセイン TSMCやインテルのファンドリー部門、それに複数のOSATに委託している。最先端の3/2nmはTSMCを活用している。非公開企業のため業績は開示していないが、インテルが24年売上高として15億4000万ドルを公表している。当社は唯一の独立系FPGAプロバイダーとして今後もシェアを拡大し、市場平均を上回る成長を目指していく。
(聞き手・東哲也記者)
本紙2025年12月18日号1面 掲載