大阪医科薬科大学病院(大阪府高槻市大学町2-7、Tel.072-683-1221)は、大阪医科薬科大学が2027年に迎える創立100周年の記念事業として病院新本館建築プロジェクトを進めており、新本館B棟が完成し、7月22日にグランドオープンした。ICT活用やDX推進による安全・効果・効率化、患者が温かみを感じられる医療の2つの観点から設計された新病院となった。国内初の試みとなる対話型鑑賞デジタルアートミュージアムも設置している。
病院新本館建築プロジェクトでは、新本館A棟と新本館B棟の計2棟を建設。新本館A棟の規模は地下1階地上12階建て延べ約2万8300m²で、22年7月1日に開院した。今回は旧中央診療棟を解体し、その跡地に新本館B棟を建設、既存の新本館A棟と接続させ、新本館としてグランドオープンを迎えた。
新本館B棟の規模はS一部RC造り(免震構造)地下1階地上12階建て延べ約2万6100m²。施工は清水建設(株)が担当した。フロア構成として、地下1階に種々の治療を行う放射線治療センターを配置。地上1階はエントランスホールとなり、総合案内をはじめ、「患者サポートセンター」やカフェを設け、病院の顔になる。2階は整形外科や中央採血室・採尿室、3階は歯科口腔外科、4階は腎泌尿器外科、耳鼻咽喉科、頭頸部外科、小児科、新生児科の外来を設置。この2~4階には臓器や疾患に関連する診療科をまとめ、同じエリアで受診できる「臓器・疾患別ユニット外来」を設けたのも特徴で、2階に消化器ユニット、3階に神経・疼痛ユニットと循環器ユニット、4階に皮膚・形成ユニットを整備している。5~12階は主に病棟となり、6階の小児科病棟には屋外テラスやプレイルームを設けた。
新本館は、政府が掲げる科学技術基本計画「Society 5.0」に基づき、「Super Smart Hospital―すべての利用者にとって温かい病院―」をコンセプトに掲げ、建築コンセプトは「バイオフィリア」としている。ICT活用とDX推進によるスマート医療およびバイオフィリアの考えのもとで癒しの空間を提供することで、患者、家族、医療従事者、学生をはじめとするすべての利用者にとって温かい病院を目指している。
この新本館はICT活用やDX推進による安全・効果・効率化、患者が温かみを感じられる医療の2つの観点から設計した。
ワンストップの患者サポートセンターのカウンター(写真奥)
ICT活用やDX推進による安全・効果・効率化では、外来患者に向けて診療受付や待ち時間のストレスを軽減するシステム「ホスピジョン」を、入院患者には安全・快適を叶える「非接触RFID3点認証」や「ICチップで管理するスマート採血」などを導入している。
ホスピジョンでは、セルフ到着確認システムや外来患者誘導システムを構築。セルフ到着確認システムは診察券を専用機で読み取らせると受付票が発行され、各診療科に置かれている受付機で受付票を読み取れば、診察受付が完了する。一方、外来患者誘導システムは診察受付の完了後に誘導表示が随時更新され、待ち時間のストレスが軽減される仕組みとなっている。
非接触RFID3点認証とは患者・薬剤(注射や点滴)・看護師の3点間で、医師の治療指示が正しく行われるよう、薬剤投与前にそれぞれを確認する作業。この3点認証を患者の身体に触れることなく行える「RFIDリストバンド」を用いたシステムを、新本館のすべての病棟に導入している。これにより、夜間の薬剤投与時も患者を起こすことなく認証が可能で、患者だけでなく、看護師の負担も軽減され、ベッドサイドケアにかける時間を増やすことができる。
ICチップで管理するスマート採血では、採血の際に患者と検体のアンマッチが起こらないように、RFIDを用いて患者の情報と検体情報を管理するシステム「RFID検体情報統括管理システム」を8月に導入する予定。採血時にはRFIDリストバンドで患者の情報を確認し、採血で得た検体は、1本1本ラベルにICチップの付いた採血管で管理するため、安全で確実な採血業務が行える。これらに加え、1~4階の外来フロアを巡回する自立移動警備ロボットも設置。360度カメラで異常を検知し、職員に通知することができるロボットで、安全な医療環境づくりをサポートする。
患者が温かみを感じられる医療では、1階の外来部門において、これまで個別に行われていた入院手続きや相談、予約などをワンストップで行える患者サポートセンターを設置した。また、2~4階の外来フロアでは臓器・疾患別ユニット制を導入。具体的には2階の消化器ユニットが一般・消化器・小児外科、消化器内科、放射線診断・IVR科を、3階の神経・疼痛ユニットは脳神経外科・脳血管内治療科、脳神経内科、麻酔科・ペインクリニック、緩和ケア、もの忘れ外来を、同じく3階の循環器ユニットは循環器内科、心臓血管外科、小児心臓血管外科を、4階の皮膚・形成ユニットは皮膚科と形成外科をユニット化している。例えば消化器系の病気であれば、従来は別々であった消化器内科と消化器外科を同じフロアで連続的に受診でき、患者が窓口で一度受診を申し込めば、診断、治療からその後の外来診療、アフターケアに至るまで、同じエリアで対応する。
新本館の建築やインテリアには、自然と触れ合うことで健康や幸せが得られる空間を目指すバイオフィリアの考え方と、癒しや温もりを感じる親しみあるアートの力で心地よい環境の提供を目指すホスピタルアートの考え方を取り入れることで、快適で過ごしやすい環境づくりを行っている。バイオフィリアは館内の至るところで、高槻の豊かな自然や名所をテーマにしたアートを目にすることができる。1階のエントランスがある総合案内には、シンボルツリーと高槻の地層をイメージしたオブジェを設置。2階へと続くエスカレーターの吹き抜け部分には、高槻市の花であるウノハナやロウバイ、サクラが描かれている。
同じ1階には国内病院初の試みとなる対話型鑑賞デジタルアートミュージアムも設置。55インチを9枚重ねた大型デジタルサイネージでは、岡山県倉敷市の大原美術館が所蔵する美術作品を、ギリシア彫刻を模したアバターが案内する。1作品の所要時間は10分程度で、平日は7時30分~18時、土曜日は7時30分~14時30分まで上映する。名画と対話しながら鑑賞できるアート体験は、国内の病院では初めての試みとなる。このほか、4階の小児科外来では、森の中を遊ぶように、鳥たちが小児科の待合室へと誘い込み、カラフルな色彩のシンボルツリーが訪れる子どもたちを見守る。6階の小児科病棟においても、森に暮らす生き物たちに出会い、家族やスタッフとの会話のきっかけを生む温かい空間を構築。同フロアに設けた屋外テラスを利用したレクリエーションは、小児患者の気分転換と治療にも効果が期待できる。
同病院は27年の大阪医科薬科大学創立100周年に向けて、大学病院の全面建て替え構想を進めてきた。16年に中央手術棟、18年に関西BNCT共同医療センター、22年に病院新本館A棟が完成。今回、新本館B棟の完成により、診療系の建築工事は完了となった。今後はこれに続くプロジェクトとして、6号館の建て替えを計画している。既存の建物を解体し、その跡地に新施設を建設する計画で、規模は明らかにしていないが、既存の管理棟や外来棟にある機能を移設する考え。この6号館は28年内の整備完了を目指している。その後は既存の管理棟や外来棟を解体し、跡地にロータリーを整備するほか、敷地内には講堂の整備も計画しており、31年には全面建て替えが完了する予定。
(岡田光記者)