我が国唯一の半導体メモリーメーカーであるキオクシアの株価がとんでもないことになっている。2024年の12月に株式上場した時には、ひどい安値で始まり「キオクシアなんかダメ。株を買う気にもなれない」という人たちの何と多かったことか。ところがである。上場以来、1年あまりというのに、キオクシアの株式時価総額はついに10兆円となったのである。
上場した時から比べては11倍になっているわけであるからして、お小遣いをはたいて同社の株を100万円買った人は1100万円のリターンを受けたわけであり、全くもって大きな得をしたことになる。ここ1か月くらいの値動きを見ても、キオクシア株の上昇機運はずっと続いていくという見通しなのだ。
何ゆえにキオクシアの評価が高まっているのか。それは、いつにかかって一大ブームとなっているAIチップのおかげである。エヌビディアのGPUの周りには多数のDRAM、そしてフラッシュメモリーが使われるわけであり、まさに30年ぶりとも言うべきメモリーブームが起きている。そして、NANDフラッシュメモリーの分野は、サムスンが世界トップであり、キオクシアとWDの連合軍が2位にランクされている。しかして、キオクシアの勢いは凄まじく、サムスンを凌駕して世界トップに躍り出る日も近いのだ。
その理由は様々にある。1つには、サムスンがHBMで遅れを取ったために、首位をいくSKハイニックスを追撃しなければならず、NANDフラッシュに対する投資を絞るしかない事情となっている。キオクシアは四日市工場も増強し、岩手北上の第2棟にも大型投資を断行している。こうした有利な情勢が生まれてきたわけだ。さらに加えて、キオクシアが開発したAIサーバー向けのNANDフラッシュメモリーは推論用途に適したものであり、サムスンの機能を上回っている。技術的にも勝っているわけだ。そしてまた、NANDフラッシュの価格は急上昇するばかりであり、在庫はまったく足りないという状況だ。
キオクシアを巡るトピックスはこれだけではない。驚くべくことに全く新しいタイプのDRAM開発に成功したのである。これは、酸化物半導体の縦型トランジスタを用いたOCTRAMという高積層型のDRAMとなるものである。高密度であり、低消費電力である3D構造のDRAMであり、この量産に成功すれば、これまたビッグチャンスが来るのである。キオクシアはNANDフラッシュもDRAMも作れるメモリーメーカーとなるわけであり、エルピーダをマイクロンに売却した時からDRAMを持たない日本に大きな希望を与えることになる。
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泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。35年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 取締役 会長。著書には『自動車世界戦争』、『日・米・中IoT最終戦争』(以上、東洋経済新報社)、『伝説 ソニーの半導体』、『日本半導体産業 激動の21年史 2000年~2021年』、『君はニッポン100年企業の底力を見たか!!』(産業タイムズ社)など27冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。