電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第103回

目指せ!究極の生体センサー


~アフォードセンスのチャレンジ~

2015/7/3

 誰しもヘルスケアには興味があるだろう。特に日頃から不養生な生活をしている人ほど、自分の健康状態をしっかりと把握したいと思うのが人情だ。かといって毎回、病院に行って検査したり、あるいは入院して大掛かりな装置を身にまとい、一晩病院で明かすというようなことは気が引ける。

 しかし、普段の生活をしながら、簡単に便利にリアルタイムで健康状態をチェックできる、こうしたニーズに応えられるかもしれない画期的商品が近い将来登場しそうだ。開発を加速しているのは、2013年11月に発足した大学発ベンチャーのアフォードセンス(株)(研究センター:兵庫県姫路市書写2167 兵庫県立大学内、Tel.079-267-6019)だ。
 国の科学技術政策を担う科学技術振興機構(JST)の、戦略的創造研究推進事業として08年4月~13年3月までの期間、「前中センシング融合プロジェクト」で得られた知見や成果をもとに13年11月に設立された。「いつでもどこでも健康で安全・安心な社会の実現」を使命に掲げる。

「絆創膏」タイプにこだわる

 依然、試作開発の段階だが「いつでもどこでも」脳波や脈派などの生体情報をモニタリングするため、同社は「絆創膏」タイプの生体センサーにこだわる。今、流行の言葉で言えば、いわゆるウエアラブルである。

 同社では「Vitalgram」と呼んでいるが、基本的な生体情報である心電をはじめ脳波、筋電などの生体情報を高精度にモニタリングすることを目指す。

 Vitalgramはマイコン、センサー、RFデバイス、バッテリーなどから構成される。14年12月にサンプル出荷した製品には、3軸加速度、圧力、温度、湿度、光などの各種センサーも搭載して、ブルートゥース(BT)モジュール、LiB電池を主力基板に実装している。サブ基板には心電計測用アナログフロントエンド、アンプなどを搭載した。

 現状では心電などをリアルタイムで測定できるものの、多くのICを搭載しているため、現在のバッテリー容量では30時間ほどしか持たない。実用化のためには駆動時間のさらなる延長が必須となる。このため、同社は極力低消費電力の半導体の開発などにこだわる。また、より小型化できるよう熱電素子など自己発電(エナジーハーベスティング)技術の開発も進めているが、基本的に発電容量が小さすぎて実用化にはほど遠いのが現状だ。

 メーンとサブの2枚のモジュール基板(4層構造)は伸縮性のあるジャバラ構造のポリイミド基板で接続されている。大きさは70×24mmのコンパクトサイズだ。最大60%まで伸縮が可能で、ねじれなどの負荷に対して信頼性を確保した。製造は日本メクトロンに委託した。
 このジャバラ構造は、横方向には伸びるが、縦には伸びない。このため本来の「ストレッチャブル」ではない。材料面の開発や、導電配線材料の見直しも避けられない。将来的には電解質のような液状材料を使い、これを伸縮性のあるチューブなどに入れて配線するという手法も検討中だ。

Vitalgram (R) BLE Rev.B 各部の説明(右は裏面)(出典:アフォードセンス)
Vitalgram (R) BLE Rev.B 各部の説明(右は裏面)(出典:アフォードセンス)

高密度実装技術が小型化に一役

 また、メーンとサブ基板をFPCで接続する場合、その部分の接続工法も問題になるとしている。既存のはんだ接続や接着材料では信頼性がとれないのだ。身につける体の動きに合わせてモジュール部に負荷がかかると、現在の接合材料では持たない。このため、同社では1枚のポリイミド基板上にそれぞれのチップやセンサーをSMT実装し、その間を片面FPCのジャバラ構造にすることで、身につける側の動きを上手に吸収する手法を採用した。

 同社は早ければ年内にも「Vitalgram」の第2弾を試作する。本格普及を前提にデザインや薄型・小型化を追求する計画だ。
 同社CEOの樋口氏によれば、「これが最終形態ではない。あくまでも採用する側の意向を反映して、それぞれの特徴を活かすかたちで個別にカスタマイズしていく」とその都度、臨機応変に対応することを信条とする。
 ICやRFデバイスなどの異種チップを混載できる特殊なファンアウトタイプのパッケージ技術を使い、各種チップやローパワーだが高性能なCPU(32ビット)を搭載して、電力消費を大幅に引き下げ、電池寿命を確保する。再配線技術を利用したユニークな高密度実装技術が確立されたことで、より小型・高機能化できるセンサーに一歩近づけることができると樋口氏は強調する。

ソフト開発の重要度が増す

 さらには、同氏によれば、低消費電力のデバイスや高密度実装といったハードウエアの技術開発だけではなく、今後は使い方や組み込みソフトなどのソフトウエア技術のブラッシュアップを加速させる必要があるという。いかに有効に、正確に、効率よくデータを集積し、解析するかというようなアルゴリズムの開発にも今後は注力していく必要があるという。使い勝手の良い製品開発はソフト領域に競争軸が移りつつあることを示唆した。

 また、こうした従来にない製品や医療分野の技術については、普及のためには明確な使用目的や提供サービスの確立はもちろんだが、医療行政などとの協力や連携も必要になってくる。国内では医療行為などに当たる場合、薬事法との兼ね合いが出てくるからだ。こうした法律の観点からもひとつひとつ解決していくことが求められている。
 将来的には、睡眠の質の評価をはじめ、各種ストレスの評価・分析の精度を向上させながら、てんかん発作や心不全の予知も可能にするような、夢の「疾病予防センサー」とも言えるデバイスにつなげていくのが樋口氏の熱い思いだ。

電子デバイス産業新聞 副編集長 野村和広

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