電子デバイス産業新聞(旧半導体産業新聞)
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第600回

「NVIDIA GTC」に行ってきた


大盛況により感じたエヌビディアの熱気

2025/5/2

 エヌビディア(米カリフォルニア州)が3月17~21日に、カリフォルニア州サンノゼで開催した開発者向けAIカンファレンス「NVIDIA GTC」に現地参加させていただいた。エヌビディアの製品や、各社の出展ブースは電子デバイス産業新聞紙面にて紹介したため、今回はGTC会場の様子や、紙面では取り上げなかった製品を紹介する。

25年は過去最大規模となった

GTC会場
GTC会場
 メーン会場となるサンノゼ中心部のSAPセンターに近づくと、あちこちにGTCの広告が掲載され、また近隣の広場やホテルも、食事やPRグッズの提供、講演会場やプレスルームなどとして活用され、会場の一部となっていたため交通整理がなされていた。街中はどこを歩いてもみんなGTCの参加証を首から下げているなど、街全体がGTCに染まっていて、圧倒的な規模の大きさを体感した。会場に集まる人が非常に多いためタクシーを止めてもらう場所もなく、「GTCの期間中はこの一帯は大変混雑する」と乗車したUberの運転手も言っていたほどだ。世界的なエヌビディアへの注目の高まりを反映し、今回のGTCは過去最高の規模で開催され、現地参加者は2万5000人にものぼったそうだ。

 会場は、展示ブースのほか多数の講演会場が設けられていたが、どこも終日混雑していた。食事やドリンクのサービスも充実していて、17時ごろからは軽食やアルコール類も提供されていた。また、近隣の広場でもキッチンカーや軽食の配布が行われており、夜にはライブステージを使用してナイトイベントも行われたようだ。そのほか会場内には物販スペースもあり、アパレルや文具など様々なエヌビディアグッズが販売されていて、常に人だかりができていた。

お土産に購入した定規
お土産に購入した定規
 筆者はお土産にエヌビディア製の定規を購入した。この定規は、エヌビディアの技術者が製品を組み立てるために特に頻繁に使用する部品などがプリントされていて、各部品のサイズを確認できるだけでなく、BGAの配置なども記載されている。

 例えば、定規の中央には、下部から上部にかけてサイズが大きくなる一連の穴が空いていて、これはワイヤーの直径の測定に使用できるそうだ。また、裏面には長さの単位あたりの抵抗を計算する公式が記載されている。これにより、基板に必要なワイヤーの直径を決定し、電流を流した場合の電圧が確認できる。
 この定規は以前ノベルティーとして展開した際も大好評だったと伺った。

1年に一度新たなGPUのリリースが計画

 メーンイベントであるジェンスン・フアンCEOによる基調講演は、大盛況となった。開始時間の1時間半前にはすでに長蛇の列で、会場に向かう道中にまで列ができていた。

 基調講演では、今後2~3年にわたるGPUアーキテクチャーのロードマップが発表された。1年に一度新たな製品をリリースし、AIインフラの構築を行う計画が示された。

 現在はBlackwellのフル生産を行っているとし、25年後半にはBlackwell Ultraをリリースする。Blackwellと同じ2チップで構成されるが、メモリー容量は1.5倍、ネットワーク帯域幅は2倍となる。アーキテクチャーは同じため、スムーズな移行が可能だとした。

 また、26年後半にリリースするRubinは、Graceの2倍の性能を誇る新たなCPUのVeraが搭載される。さらに27年後半にはVera Rubin Ultraをリリースする。Rubin Ultraでは4つのGPUダイが1つのパッケージに収められ、さらなる高効率化を実現する。

 そして、28年にはRubinの次世代品として「Feynman」のリリースも計画していることが発表された。

BDXドロイドは会場で大注目されていた

 基調講演では、産業用およびロボット向けフィジカルAIにおける市場規模、その重要性についても語られた。そのなかで、ロボットシミュレーション用オープンソース物理エンジン「Newton」を発表。Newtonは、エヌビディアがロボットの学習と開発を促進するためにGoogle DeepMind、Disney Researchと共同開発しているオープンソースの物理エンジンで、NVIDIA Warp(Pythonでデータ生成と空間コンピューティングを構築および高速化するための開発者フレームワーク)をベースに構築されており、高精度で複雑なタスクを処理する方法をロボットに学習させることができる。25年後半の提供開始を目指している。

 NVIDIA Warpフレームワーク上に構築されたNewtonは、ロボット学習に最適化されており、様々なシミュレーションフレームワークと互換性を持つ。さらに、今後はDisneyの物理エンジンも活用できるようにする計画だ。

BDXドロイド「Blue」
BDXドロイド「Blue」
 基調講演ではBDXドロイドが登場した。二足歩行で登場し、フアン氏の呼びかけに音で反応したほか、指示に従って立ち位置を移動するなどの動きを披露した。BDXドロイドには、事前にNewtonを用いてトレーニング、シミュレーションされたデータが移植してある。搭載されているGPUに関しては非公表としたが、ロボット向けの組み込み用の消費電力が非常に少ないGPUを採用しているという。

 キャラクターデザインやロボットの動きはDisneyとのコラボレーションによるもので、デザインはスター・ウォーズからインスパイアを受けているという。説明員は、「優れた能力を持つだけでなく、強化学習を使用して、自立したロボットを作りたかった」とし、「他のロボットとの違いは、単に転倒しないようにするだけでなく、キャラクターのスタイルを制御できるようにしたい。そのため歩行スタイルを指定し、表現豊かなキャラクターとしている」と説明した。

 Disney ResearchはNewtonを使用してロボティクスのキャラクタープラットフォームを活用する最初の事例となるという。使用用途は今後検討されていくが、まずはエンターテインメント用途として活用される予定で、すでに米国のディズニーリゾートで導入試験が行われた。25年後半には、東京ディズニーリゾートおよび欧州のディズニーリゾートにおいて公開が予定されている。


電子デバイス産業新聞 編集部 記者 日下千穂

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