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第143回

ニッチの紙おむつでブレークし、病院売店、ホテル経営にも乗り出す


~横浜・光洋の高木克昌会長の切り開いた世界は実にユニーク~

2015/7/31

(株)光洋 高木克昌会長
(株)光洋 高木克昌会長
 横浜市金沢区一帯に広がる工業団地にはユニーク企業が数多い。かつて京浜工業地帯の中核を担った横浜ではあるが、最近では全く工業団地を作っておらず、この金沢工業団地は最後の団地と呼ばれているのだ。近接には八景島シーパラダイスや海の公園もあり、風光明媚なところにある工業団地であり、シーサイドラインが走っている。
 この団地にある大手企業は三菱重工業、日本発条など数社であり、多くは重工混在解消のための移転集約型企業が張りついている。味のある中小企業やベンチャー企業も数多い。

 この工業団地の一角に(株)光洋(横浜市金沢区福浦1-5-1、Tel.045-701-2210)という会社がある。創業は昭和48(1973)年であり、売り上げはピークで約400億円を達成したことがあるのだ。主力事業は大人用紙おむつ、メディカルディスポ製品、各種介護用品の製造販売であるが、最近では病院内売店やフードサービス、さらにはホテル事業にまで展開している。

 同社を率いる高木克昌会長は、富山県高岡出身、早稲田大学商学部を出て北辰電機(現在の横河電機)に入社し、10年間働いた。このころ経産省の技術振興課との交流が始まり、「今後は確実な高齢化社会が来るため、必要な新ビジネスが始まる」との直感を持つに至った。そして昭和48年に横浜市中区本町で創業し、次いで静岡工場を立ち上げ、昭和57年には本社工場を金沢区福浦に移転するのだ。その後、若さ工場も立ち上げていく。
 「紙おむつの国内市場は約1500億円と見られている。もちろん、ユニ・チャーム、花王など大手が席巻している。P&Gやキンバリー、SCAなども世界的には強い。こうしたなかで、当社は独自の路線をとることになる。つまりは、ベビー用のものを一切取り扱わず、病人や老人など大人用に特化していったのだ。これが当たった」(高木会長)


 17年前に発表した世界初の外羽根式大人用紙おむつ「ディスパース・ウィングケア」は国内外の業界を驚かせたばかりではなく、瞬く間に一般普及していった。3年前に発表された「オンリーワン前後フリーパンツ」は、体の前と後ろどちらからでもはけるというものであり、これまた世界初の製品であった。
 「大人用紙おむつの世界は、実のところかなりカスタムであり面倒なものなのだ。使い勝手の教育も必要になる。ただひたすら量産すればいいというものではない。男性と女性では放尿の位置が違っており、体型にも合わせこむ必要がある。漏れにくさ、はき心地のよさを徹底追求しなければならない。尿をする部分に工夫をし、とにかく漏れないようにすることで大手ブランドとは違う世界で勝負し、シェアを獲得していった」(高木会長)

 ちなみに、一番大切なターゲットは女性であり、30代以上では3人に1人は尿漏れの経験があるというのだ。男性の尿道は十数cmあるが、女性の場合はわずか3cmしかなく、これが頻尿や尿漏れに結びつく。研究に次ぐ研究を重ね、どんな状況でも漏れないという製品開発に成功するのだ。

 一方、同社はここに来て病院内売店(コンビニエンス)の事業にも乗り出している。すでに売店は420カ所を持ち、病院内食堂やカフェも200カ所を運営している。トピックスは先ごろセブン・イレブンとの業務提携が開始されたことだ。
 ユニークな事業活動を展開してきた光洋の高木会長はさらにホテル経営、外国人介護士の研修などに手を広げている。わが国は10年後には介護のための人材が100万人近く足りなくなるといわれている。高木会長はまたも直感力でこれを見抜き、フィリピンなど外国からの移民と介護士養成という大切な事業に乗り出している。こうした活動はもっと世の中に知られてよい、と筆者は心からそう思うのだ。

 ちなみに、筆者が所属する産業タイムズ社は40年以上にわたって発行しているユニーク媒体『医療産業情報』を持つが、光洋はその熱狂的な愛読者であり、これからも交流を深めていきたい。


泉谷 渉(いずみや わたる)略歴
神奈川県横浜市出身。中央大学法学部政治学科卒業。30年以上にわたって第一線を走ってきた国内最古参の半導体記者であり、現在は産業タイムズ社 社長。著書には『半導体業界ハンドブック』、『素材は国家なり』(長谷川慶太郎との共著)、『ニッポンの環境エネルギー力』(以上、東洋経済新報 社)、『これが半導体の全貌だ』(かんき出版)、『心から感動する会社』(亜紀書房)など19冊がある。一般社団法人日本電子デバイス産業協会 理事 副会長 企画委員長。全国各地を講演と取材で飛びまわる毎日が続く。
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